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2016年08月

08月29日 青森地裁
昨年12月、近くに住む知人男性=当時(67)=の店舗兼住宅に火を付けたとして、現住建造物等放火、同未遂の罪に問われた42歳の被告に対し、鎌倉正和裁判長は、事件当時の責任能力を認めた上で、「再犯の可能性が否定できない」とし、懲役4年6月(求刑6年)を言い渡した。
量刑理由で、鎌倉裁判長は、被告の精神状態が放火に及ぼした影響はごく軽度で「責任能力は低下していなかった」と指摘。動機の基となった被告と被害者を取り巻く環境は事件後も大きな変化がみられず、再犯の可能性は否定できない-と論じた。一方、灯油のまき方や使用量の少なさから「全焼させる意図は認められない」などと求刑よりも刑期を短くした理由を述べた。

8月10日 東京高裁
2013年2月、会社員男性=当時(31)=が奪われた自分の車にはねられ死亡した強盗殺人事件で、強盗殺人や窃盗などの罪に問われ、窃盗罪にとどまるとして懲役6年が言い渡された31歳の男性に対し、藤井敏明裁判長は「明らかな事実の誤認がある」として強盗殺人を無罪とした1審千葉地裁の裁判員裁判判決を破棄、審理を差し戻した。弁護側は上告を「検討したい」とした。
1審判決は、共謀の別の男性=窃盗罪などで有罪確定=から虚偽の証言をするよう手紙で働き掛けがあった可能性などを指摘。「被告が男性をはねた車を運転していたとするには疑いが残る」として強盗殺人罪を否定したが、藤井裁判長は「被告が車を運転していた」と認定した。
被告は、男から手紙で自白を強要されたと主張していたが、藤井裁判長は手紙の作成時期などから「身代わりを求めるものではなく、無期懲役を避けるため殺意を否認するよう勧める内容だった」と判示。その上で「殺意の有無を判断した上で審理を経ることが相当」と結論付けた。
被告は13年2月22日早朝、会社員所有の乗用車を盗んだ上、阻止しようとした被害者をはねて殺害したとして起訴。検察側は無期懲役を求刑していた。

8月8日 福岡地裁
リサイクル店元従業員ら3人に対する殺人や傷害致死などの罪に問われた経営者夫婦のうち、夫(49)に対し、懲役28年(求刑・無期)を言い渡した。平塚浩司裁判長は、妻(47)=1審懲役30年、控訴中=の判決と同様に元従業員男性(当時22歳)への殺人罪は認めず、計3件の傷害致死罪が成立すると判断。「幼児を含む3人が死に追いやられた過程は陰惨で結果は重大」と述べた。
平塚裁判長は、元従業員男性への殺人罪の成立について「死に至る経緯が不明で殺意の認定は困難」と否定した。弁護側は「妻の意のままに動く『代行者』だった」と主張したが、平塚裁判長は「自らの選択の結果として暴行を繰り返した」と退けた。一方、事件を主導したのは妻で、被告の供述が事件解明につながったことは認め「妻と同等の責任とは言えない」とした。
判決によると、妻と共謀して2004年6月ごろに元従業員男性を、06年9〜10月ごろに義弟(当時34歳)とその長男(同4歳)をそれぞれ暴行して死亡させるなどした。

8月5日 山形地裁
山形市八森の山林で、29歳男性を殺害し財布などを奪ったとして、強盗殺人罪などに問われた26歳の男性に対し、懲役25年(求刑30年)を言い渡した。弁護側は即日控訴した。
寺沢真由美裁判長は判決理由で「計画的に実施された犯行で、執拗で残忍と言わざるを得ない」と指摘。「被告人が被害者の不適切な言動により、精神的に追い詰められ、犯行の決意につながったことは否定できない。同情の余地もあり、有期懲役刑の上限を一定程度下回る刑とすることが相当だ」と結論付けた。
公判で弁護側は死体遺棄、詐欺罪は認めたが、強盗殺人罪については否認し、無罪を主張していた。
判決によると、被告は27歳男性=強盗殺人罪などで起訴=、26歳男性=同=と共謀して2014年10月29日ごろ、山林で被害者の首をナイフのような物で刺すなどして殺害。遺体を遺棄し、奪った財布に入っていたパチンコ会員カードを使い、パチンコ店から約53万円相当の景品をだまし取った。

8月3日 新潟地裁
認知症の介護を苦に母親を殺害したとして、殺人の罪に問われた57歳の女性に対し、竹下雄裁判長は懲役9年(求刑12年)を言い渡した。
判決によると、施設入所を母親(当時86歳)に拒否された被告は、自宅浴室内で母親の頭部を手で押さえつけるなどして水を張った浴槽内に数分間沈め、溺れさせた。
竹下裁判長は「被害者は重度の認知症ではなく、施設入所以外の選択肢もあったが、被告が他の方法を検討せず殺害を決意した。自分の生活状況などを優先させた短絡的で自分本位な犯行」と指摘した。

8月2日 秋田地裁
長男=当時(4)=の首を絞めて死なせたとして殺人の罪に問われた31歳の母親に対し、三浦隆昭裁判長は懲役7年(求刑10年)を言い渡した。
判決理由で三浦裁判長は「数分間にわたってひもで首を絞めており、明確な殺意に基づく悪質な犯行」と指摘。離婚調停で長男の親権を奪われると考え不安になり、無理心中を図ろうとしたことについては「客観的に親権を奪われるような状況にはなく、身勝手」と述べた。

8月2日 大阪地裁
昨年8月、運転技術を有していないのに兵庫県尼崎市内でワゴン車を運転し、死亡ひき逃げ事件を起こしたとして危険運転致死の罪に問われていた17歳の少年に対し、大阪地裁は家裁に移送する決定を行った。
問題の事故は2015年8月13日の午前9時20分ごろ発生している。尼崎市の市道(車線区別のない幅員約5mの直線区間)を蛇行しながら走行していたワゴン車が前走していた自転車に追突。クルマは自転車に乗っていた80歳の男性をひきずりながら約50mに渡って走行し、道路左側のフェンスに突っ込む状態で停止。男性は全身強打でまもなく死亡した。
クルマを運転していたのは16歳(当時)の少年で、免許取得年齢以下のために無免許状態。直後の時点では「こんなに大きいクルマを運転するのは初めてだった」と供述していたが、後の調べで事故当日に初めてクルマを運転したことがわかった。進路を維持することもできず、パニック状態の中で事故を起こしていた。検察側は懲役4年以上8年以下の不定期刑を求刑していた。伊藤寿裁判長は動機などを踏まえ、「保護処分の専門的かつ、教育的な働きかけで改善する余地が大きい」と述べた。
判決は一連の行為を非難する一方、「運転してみたかった」という少年の動機を検討。「幼稚だが、反社会性が強く理不尽とまでは言えない」と指摘。「少年なりに謝罪の気持ちを述べるなど、保護処分による更生が期待できる」とした。
少年は当初、自動車運転処罰法の無免許過失運転致死容疑などで逮捕された。しかし、大阪地検は昨年10月、無免許で事件当日に初めてハンドルを握った点を重視し、より刑罰の重い未熟運転による危険運転致死罪の適用に踏み切った。
最高検によると、裁判員裁判で未成年者の家裁移送決定は6月末までに8件あったが、危険運転致死罪は初。

8月2日 福岡地裁小倉支部
裁判員への声かけ事件により、裁判員裁判の対象から除外された特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)系組幹部(41)の公判が福岡地裁小倉支部で再開された。知人男性への殺人未遂罪に問われていたが同支部は傷害罪を適用し、懲役2年8月(求刑8年)の判決を言い渡した。
中牟田博章裁判長は「刺し傷の深さは約2㌢で病院に行くよう指示しており殺意は認められない」と述べた。
5月10日の初公判後、被告の知人の男性2人が裁判員に「よろしくね」などと声をかける事件が発生し、同12日の論告求刑後に判決期日が延期された。裁判員と補充裁判員計5人が辞任し、地裁小倉支部は7月13日に裁判員裁判からの除外を決め、裁判官のみでの審理となった。
判決によると、被告は昨年1月、知人男性(当時40歳)を自宅に呼び出し、日本刀(刃渡り約75㌢)を背中に1回突き刺し、約2週間のけがをさせた。

8月1日 最高裁
米軍属女性暴行殺人事件で、殺人や強姦致死などの罪で起訴された米軍属の32歳男性が、裁判員裁判の管轄を那覇地裁から東京地裁に移転するよう求めていた件で、最高裁第二小法廷(小貫芳信裁判長)は、請求の棄却を決定した。1日付。公判は那覇地裁で開かれる。
被告側は報道や抗議活動の影響で県民に予断があり、厳罰を望んでいるなどとして、管轄移転を求めていた。
最高裁は決定で、裁判員裁判の裁判体は公平・中立性に配慮して選ばれた裁判員と、職業裁判官で構成されると指摘。「法と証拠に基づく適正な裁判が行われることが制度的に十分保障されている」として、請求に理由がないとした。補足意見で千葉勝美裁判官は「沖縄県の特殊事情、県民のさまざまな思いがあったとしても、適正な手続きで選任された裁判員として、法と証拠に基づく公正な裁判の実現を目指すことは十分に信頼できる」とした。
被告の弁護人を務める高江洲歳満弁護士は「不服を申してもしようがなく、決定について何か申し上げることはない」と述べた。一方で、10代のころに被告がうつ病を発症し通院していたと明らかにし、米国から当時の資料を取り寄せているとした。資料を精査した上で、今後2週間程度で精神鑑定を申請するかどうか判断したいとした。
管轄移転が退けられたことに対し、被害者遺族らの代理人を務める村上尚子弁護士は「社会的に注目を集め報道される事件は多くある。だが裁判員裁判には職業裁判官も入るため、恣意的に判断される制度ではない。当然の決定だ」と語る。その上で「東京地裁での審理となれば遺族が参加する場合、負担が大きかったので安心している」と話した。

投稿者 : いらないインコ|2016年8月22日