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寄稿「一審死刑判決高裁破棄事件」

東京高裁は、6月20日、強盗殺人罪などの罪名で一審東京地裁の裁判員裁判が死刑を言い渡した被告人について、原判決を破棄して無期懲役とする判決を言い渡した。被害者は一人。裁判員裁判の死刑判決が高裁で破棄されたのは初めて(裁判長村瀬均)。

被告人は1988年に妻子を殺害している(懲役20年服役済み)が、「夫婦げんかの末の無理心中と強盗殺人は類型が違う。更生の可能性がないとも言えない」。判決は、前科を今回の事件の量刑判定の事情に使うことに合理的な根拠がないと断定した。

被告人は捜査段階から一貫して黙秘し、一審審理中も黙秘を貫徹していた。そしてその主張は無罪ときたHP死刑判決。服役が済んだと言ってもとにかく人殺しの前科者だ。警察にも検察にも協力せず、裁判所でも黙りこくってひたすら無罪を求める気持ちの悪い男。そういう風にしか見なかったであろう薄っぺらな裁判員たちと一審東京地裁の無能裁判官たち。

「少しホッとした」(元裁判員。50歳代女性)。それで済まされる話(読売)では絶対にない。高裁判決前に「一審の結論に自信がある」と言っていたこれも女性の元裁判員は、「混乱している。複雑な気持ち」と(朝日)。もっともっと混乱しろ、そして少しは世の中のことを複雑に考える人間になってみろ。

元裁判員たちにわらわらと襲いかかる前に、「2人の生命を奪った前科がありながら、強盗目的で被害者の生命を奪ったことは刑を決める上で特に重視すべき」という判決文を書いた一審裁判長にマスコミはなぜ取材の申し入れをしないのか。申し入れたが断られたなんていう報道さえどこにもない。

今回の「一審死刑の高裁破棄」判決は、裁判員・裁判官・マスコミを通じて裁判員制度をめぐる根本的な間違いを一気に暴露した「事件」だ。裁判員裁判はもう腐りきっている。冷蔵庫で保存しても変な臭いが部屋中にこもり始めている。夏も近づく。早く捨てよう。

投稿:2013年6月21日