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法務省検討会―検討してこれですか?

法務省の「裁判員制度に関する検討会」は、6月21日、最終報告書をまとめました。

抜本的見直しはせず、審理期間が年単位に及ぶような事件は裁判官のみにするとか、東日本大震災のような大規模災害の被災者は裁判員候補者から外すとか、性犯罪の被害者は匿名にする程度の「見直し」で、 日弁連の提案は全否定されています(日弁連の提案と全否定の問題については川村理弁護士の「法務省「検討会」取りまとめ報告書を読んで ―全否定された日弁連の「提案」―」をお読みください)。

審理期間が年単位に及ぶ事件の排除
審理期間が年単位に及ぶような事件て何ですか?
裁判員裁判となった首都圏連続不審死事件(さいたま地裁100日)も鳥取連続不審死事件(鳥取地裁75日)もこれまでの刑事裁判なら年単位となり、もっと丁重な審理と弁護活動が行われていたでしょう。結局、どのような事件でもサクッと終わらせるので、「審理が年単位に及ぶ事件などない」ということになります。
マスコミは「長期審理は除外」などと報道しましたが、「そうか、大変な事件は排除されるのだな。それなら裁判員になっても良いか」などと思う人はいないでしょう。

大規模災害の被災者の免除
最高裁は、東日本大震災からたった2週間しか経っていない3月25日に、地震と津波と原発事故で壊滅的な被害を受けた盛岡、仙台、福島の各地裁本庁と福島地裁郡山支部で、「3月28日以降、裁判員らの来庁に支障のない事件の公判を開く」と発表しました。
家族を失い家財のすべてを喪失した20数万とも30万人ともいわれるの被災者たちが明日の生活を、いや、今日の生活を案じて各地の避難所で生活している最中にです。
これに対し、仙台高裁は4月1日、ホームページに次の告知文を掲載しました。19-h

仙台地方裁判所 裁判員裁判の予定はありません。
福島地方裁判所  裁判員裁判の予定はありません。
盛岡地方裁判所 裁判員裁判の予定はありません。

仙台、福島、盛岡には「来庁に支障のない裁判員などいない」ということの告知にほかなりません。
最高裁の面子が丸つぶれになった「事件」でした。
今回の除外というのは、この轍を踏まないようにするためのものでしょうが、そもそも刑事裁判は、裁判所近くの官舎に住む裁判官・検察官と、多くは裁判所近くに事務所を構える弁護士によって担われてきたのですから、県内から幅広く素人を集めるというシステム自体に無理があるのです。

性犯罪の匿名
性犯罪事件では被害者を匿名にするなど被害者への配慮を裁判所に義務づけるということですが、ある性犯罪被害者は次のように述べています。
「裁判員は一般市民です。そんな人に、プロにだって見られたくない証拠を見られ、あれこれ質問されるなんて、考えただけで吐きそう。裁判員になりたい人がどういう人か考えたとき、法廷はセカンドレイプの場になりかねない。裁判員制度から性犯罪は除外してほしい」
しかし、制度推進側にとって性犯罪を除外することはできないのです。

「見直し」とはこの程度のこと
こんなことで国民が裁判員になりたいと思うでしょうか? そんなことは「検討会」の委員も思っていないでしょう。
しかし、抜本的見直しをすると言った途端、「それなら制度廃止を」となることがよく分かっているからです。
ですから、小手先の「見直し」でお茶を濁し、8割以上の国民が裁判員になりたくないと思っていてもそれをどうすることもできないのです。えーわたし1

 

投稿:2013年7月9日