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ストレス障害国賠訴訟第2回口頭弁論 ーその2ー

烈風の中を記者は走る

福島地裁郡山支部で強盗殺人事件の裁判員を務めた後、「急性ストレス障害(ASD)」と診断されたAさんが慰謝料などを求めた国家賠償請求訴訟の第2回口頭弁論。ボードうさぎ

今回は、裁判終了後の記者レク報告です。

裁判終了後、記者は待ちかねたように織田弁護士と佐久間弁護士を囲む。当然です。だって、原告の主張は織田弁護士の要約の読み上げでわかったけど、被告側は何を主張したのかまったくわからなかったから。裁判長から「裁判員法を制定しなければいけない理由や事情はなかったという原告の主張にどう反論するのか」と聞かれた被告は「十分しているつもりだから裁判を終わりにして」と言った。裁判官に「違うでしょ」と言われて、次回までに主張を準備することになった。次回の裁判は3月4日。わかったのはそれだけ。

 けれど、裁判所は待合室やロビーはもちろん敷地内の駐車場でも、織田弁護士が説明をすることは許さないと。

 それにしても記者さんが、誰も国の代理人たちに「あんた、さっき何言うてたん」と聞かないのもヘンと言えばヘン。聞いたって木で鼻をくくったような返事しか返ってこないことがわかっているからでしょうね。記者さんたちはみんな原告の弁護士たちを囲んでしまいました。

 場所探しのすえ、裁判所横の道路をはさんだ駐車場で織田弁護士の記者レクが始まりました。

 朔太郎の詩のように烈風吹きすさぶ中、どの記者も熱心にメモ。インコのマネージャーも寒さに震えながら遠くからきれぎれの言葉をメモ。不十分なところはごめんなさいとのこと。織田弁護士が先ほどの裁判についてされた説明の要点は次のとおり。

□ 最高裁の平成23年秋の合憲判決は途方もなくひどい。そこには騙しというかごまかしがある。最高裁は、「国民に苦役を強いるから違憲」という主張について、弁護人がそのことは上告の理由にはしないと明言していたのに、あたかもその主張をしていたように装って「憲法の禁じる苦役ではない」と断定したもの。裁判所としてどんなことがあってもしてはいけないことを最高裁自身がやった。これは「最高裁判例」などと言えるしろものではない。

□ 今日の裁判で、裁判長は「立法事実は何か」と被告に尋ねた。立法事実とは変な日本語だが、立法に関わる人の間で使われる専門用語。その法律を制定する具体的な社会的必要性がどこにあるのかを説明する時に使う。

□ 裁判長は「原告は立法事実はなかったと言っている」と言い、どう答えるのかと被告に迫った。被告代理人は「立法事実については十分主張したつもり」と答えた。でも裁判長は「立法の趣旨や目的の説明があっただけで、立法事実の説明は特になかったのでは」と言った。実際を言うと、国会ではそんな議論は何一つ行われていない。

□ 裁判長は、「日本の刑事裁判に問題があるということで、この法律ができたんでしょう」というような言い方もした。でも、そんなことは裁判員法も最高裁も言っていない。逆に、日本の裁判は正統に行われてきたと言っている。

□ 国側は、次回、立法事実について何か言ってくるのだろう。当然反論する。司法制度改革審議会の委員だった井上正仁氏は、「今の裁判はよくできている。常識がないというがそんなことはない。あまりにもプロ過ぎるので、素人を入れたらいいんじゃないか」というようなことを言っていた。つまり立法事実などないと言っていたに等しい。

□ 外国にもあるのだから日本にも国民参加があってよいのではという程度の理由で登場し、陪審派との妥協の産物として井上さんや佐藤幸治さんが強調してできた。必要性があってできたものではない。

□ この裁判は、最高裁の騙しの手口に切り込むものになっている。今日の裁判ではそのことが明らかになった。また、国は第1回口頭弁論期日には、原告が裁判員を務めたために急性ストレス障害になったという原告の主張を争うと言っていたが、今回は因果関係は積極的には争わないと言ってきた。

□ 国側の今日の主張は、「国会では審議を尽くした」というそれだけだった。これ以上、下手なことを言ってボロを出す前に早く弁論を打ち切らせたい、となって被告代理人は早く結審をと求めたのだ。

□ 裁判長は、平成17年の最高裁判決に基づいて判決すると言った。被告代理人は、「国会議員が十分審議を尽くしたのだから、国会議員には過失がない」と主張することで、言い分が通るのではないかと考えている。

□ 国が結審を求めてきたのには驚いたが、もしかしたらという気持ちはあった。反対に第1回期日に、請求の認諾、つまり訴えを認めるというのもあるかもしれないと思っていた。今日、国は、原告本人の調べもしないうちに結審することを裁判所に求めた。到底認められない。何としても本人尋問を実現したい。

*次回口頭弁論は、来年3月4日午後2時から、福島地裁です。Aさんと弁護団支援の傍聴をよろしくお願いいたします。

投稿:2013年12月14日