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これぞ天の声 制度定着論が吹っ飛んだ!

1-e1397901276348   パンパカパーン・パンパンパン・パーン。さぁさぁお立ち会い、やっと出ました、出ましたぞ、天の諭しか地の叫びか。

001178まね0 相変わらず騒がしいわねぇ。

006311009 インコは騒がしい鳥なんです。

001178まね0 いえ、インコさんは特に…。

1-e1397901276348 これが騒がずにいられよか。「裁判員『定着せず』」の見出しが新聞紙面に躍りました。

焦る  またエイプリールフールなの?

1-e1397901276348  いやいや、これこそ誓ってホンモノ中のホンモノ。4月1日じゃありません。3月29日でーす。県紙・広域紙中で紹介されました。社説で取り上げた新聞社もありましたね。

001177 えっと、なになに「日本世論調査会」が今年3月21~22日に実施した全国面接世論調査の結果ですって。

1-e1397901276348 はい、「日本世論調査会」は共同通信社とその加盟社中の38社が作っている世論調査の全国組織。

006311009 38社っすか?

1-e1397901276348 ちゃんと紹介すれば次のとおり。
北海道新聞社、東奥日報社、岩手日報社、河北新報社、秋田魁新報社、山形新聞社、福島民報社、茨城新聞社、下野新聞社、上毛新聞社、神奈川新聞社、新潟日報社、北日本新聞社、北國新聞社、福井新聞社、山梨日日新聞社、信濃毎日新聞社、岐阜新聞社、静岡新聞社、中日新聞社、京都新聞社、神戸新聞社、山陰中央新報社、山陽新聞社、中国新聞社、徳島新聞社、四国新聞社、愛媛新聞社、高知新聞社、西日本新聞社、佐賀新聞社、長崎新聞社、熊本日日新聞社、大分合同新聞社、宮崎日日新聞社、南日本新聞社、沖縄タイムス社、琉球新報社。全国の読者のみなさんのお近くの新聞社もあるかと思います。

001177 折々の重要な社会的テーマについて調査を行い、結果はこの加盟社に配信する。掲載は各社の自由。今回は、全国250地点から20歳以上の男女3000人を調査対象者に選んで、調査員が直接対象者に面接し、1653人から回答をもらったそうです。

1-e1397901276348 今回の調査結果の中からいくつかのデータを紹介しましょう。

【3.0パーセント】
今回の調査は次の質問から始まります。
「一般の市民が裁判官と一緒に重大な刑事事件を審理し、判決を言い渡す裁判員制度が2009年にスタートし、まもなく6年になります。あなたは裁判員制度が一般社会に定着していると思いますか」。

001177 いいわねぇ。あなた裁判員をやりたいか、やってもいいかという例の質問形式じゃなくって、あなたはこの制度が「定着していると思うか」って聞いてるのね。始まって6年も経ってからこんな質問をしてるってとこがミソね。

006311009 ぶっちゃけ言ってそれほど制度が定着していないように思えるってことっすね。

1-e1397901276348 さてこの質問に対する答えはどうだったか。皆さんはどのように想像されますか。

001178まね0 焦らさずさっさと言ってくれない?

1-e1397901276348 はいはい、冒頭に書きましたよ、冒頭に。もう一度見て下さい。

001176 30%もいた?

お茶 違う違う、落ち着いて読んで下さい。それともマネージャーは乱視か。

001176 えっ、サンテンゼロ? 誤植じゃないわよね?

1-e1397901276348 誤植ではありません。「定着している」って答えたのは、たった3.0%だった。

006311009 ひょえー。100人のうちに3人しかいなかったんすか。

1-e1397901276348 そう、「市民感覚」信頼しまくりの一部の皆々さまに謹んでご報告すれば、これが本当の「市民感覚」というものです。制度が定着したなんて確信している市民はこの世にほとんどいやしない。ヒヨコ君。この数字にぶったまげてるようでは、君の脳みそは最高裁と法務省にかなり冒されています。早く脳洗浄しなさい。

006311009 先輩もさっき大騒ぎしてませんでしたっけ?

1-e1397901276348 いえいえ、私が驚いたのはこの数字じゃなくて、マスコミがとうとう取り上げたってことよ。

006311000 なーるほど。

【6.3パーセント】
次の質問はこういうものです。「裁判員制度は国民主権に基づく裁判制度で刑事裁判が迅速になり、健全な社会常識がより反映されると反映されると評価される一方、参加する市民の負担が大きいなどと批判的な意見もあります。あなたは裁判員制度を評価しますか」。

001177 これも実にいい質問ね。制度を評価するかしないかという端的な問いです。良い制度か、良い制度とは言えないか、ここではっきりさせてくれという興味津々の質問ね。

1-e1397901276348 で、どのくらいの人たちが「評価」しているかというと。

001177 評価するという答えは僅か6.3%。今度はインコさんになんやかや言われないように警戒して見たから、誤読しなかったわ。

1-e1397901276348 そう、制度を正面から評価してくれた奇特な人はたった6.3%しかいなかったとです。

006311000 (先輩は嬉しくなるとあちこちの方言が出るのでわかりやすいなぁ)

1-e1397901276348 この数字は、裁判員制度に対する国民の支持なんてもはやないも同然ということを意味しています。これでええ制度やなんて言ってたら、誰にも相手にされまへんで。

【15.2パーセント】
1-e1397901276348 これは何の数字かって? よく聞いてくれはりました。

001178まね0 そりゃ誰だって聞くでしょうよ、これだけ見せられてもわかんないもん。

1-e1397901276348 ここで裁判員をやるかやらないかという質問が初めて登場するのです。でもそれは、あなたはやりたいかやりたくないかというあの質問とはスタイルが違う。質問を正確に紹介しましょう。「裁判員は選挙人名簿から候補者がくじで選ばれ、裁判所で裁判長の面接などを経て決まります。仮に、あなたが裁判員に選ばれた場合どう思いますか」です。

001177 これはまた考え抜いて作られた質問ですね。

1-e1397901276348 そうです、よく考えられた質問です。あなたは一般論としてやりたいと思うか思わないかと聞かれているのではない。今質問を受けているあなたはただのあなたではありません。「裁判員候補者名簿に名前が載ったという連絡を最高裁から受け」「地方裁判所から呼出状が届いて断らずに選任期日に出頭し」「裁判長の面接で裁判に関する説明を受け」「検察官・弁護人の不選任請求もクリアして最終的に裁判員に決まった」あなたです。その時あなたはどう思うかと聞かれているのです。

001177 つまり、その前に出頭を拒絶、いえ謹んで辞退を申し出ているたくさんの人たちがいる。そしてその人たちの大半は裁判員から早々に退散してしまっている。その機会をみすみす逃したり反対に進んで裁判所に出頭したがった数少ない人たちの中にあなたがいる。そのように想定してどう思うのか言って下さいって訳ね。

006311009 屠所に曳かれてきた諦めの牛とパドックではやる暴れ馬の群れの中にいるって感じかな。

1-e1397901276348 さて、このアンケート結果は、そのように裁判員に選ばれてしまった人たちの気持ちに立っても、「裁判員を務めたいと思う」人はたった15.2%しかいなかったということを示しています。もうやるっきゃないという究極の場面になっても「裁判員を務める」ことを決断できない人が85%近くもいる。そう言えば、観衆の大喚声に包まれてピッチャーマウンドになぜか突然立たされているど素人という缶コーヒーの広告が昔ありましたな。あれですね、あの感覚、その戸惑い。

001178まね0 本題に戻りましょうね。

1-e1397901276348 言い換えればこれは、辞任や解任の予備軍がいかに多いかということをリアルに示す数字です。最高裁にとっては抜き差しならない悲惨な実情を示す悪魔の数字。囲碁や将棋ならここで潔く決断の投了です。

【真実を正面から描写する識者】
1-e1397901276348 ここで、裁判員制度に徹底的に反対する研究者として知られる新潟大学名誉教授の西野喜一さんの明快な解説をご紹介しましょう。
「この制度は、マスコミの報道が偏っていることもあって、一見順調に運営され、重大刑事事件に関する新しい訴訟方式として国民の間に定着しつつあるように見え、そして最高裁は現にそういうPRを繰り返しています。しかし、実情は全くその正反対で、第一線の地方裁判所から最高裁判所に至るまで強引な無法がまかり通って事案の真相を追究するという刑事訴訟の本来の理念はどこかへ吹き飛んでしまい、国民には大変な迷惑がかかり、その上、制度を支える現場の裁判所の職員は疲労困憊状態、というのが現実です」(『さらば、裁判員制度』ミネルヴァ書房刊。同書の「序章 裁判員制度の悲劇とは」から引用。)。

【ウソを並べ批判精神を投げ捨てた日弁連】
1-e1397901276348 裁判員法施行3周年の2012年5月、山岸憲司日弁連会長は、次の談話を発表しました。「裁判員の方は積極的に審理及び評議に参加して職務を果たしているものと考えられ、裁判員制度は、市民の間に確実に定着しつつあり、無罪推定等の刑事裁判の原則に忠実なより良い刑事裁判を実現する機能を果たしていると評価することができる」。

001177 法施行5周年の14年5月には、村越進会長は、次の談話を発表しましたね。「裁判員制度は概ね安定した運用が定着し、市民に着実に根付いてきたといえる。特に裁判員として参加した市民が、その職務に熱心に取り組み、水準の高い裁判を実現していることは、市民の司法参加の成果として高く評価できる」。

むふふ アホか。

【ウソと騙しの手口を使いまくる最高裁】
001177 並べて見ましょうか。
「裁判員制度は当初考えられた以上に、国民の強い熱意に支えられている」寺田逸郎最高裁判事就任会見
10年12月……裁判員法案の作成・成立に深く関わった人物。
「裁判員制度は比較的順調」竹崎博允最高裁長官憲法記念日会見
11年5月……東日本大震災の直後に、被災地での裁判員裁判再開を推進しようとした人物。
「裁判員制度は比較的順調な運営だった」竹崎長官憲法記念日会見
12年5月……この人は前年秋の最高裁大法廷で裁判員制度合憲判決を言い渡した時に裁判長を務めた。
「裁判員制度は順調に運営されている」竹崎長官憲法記念日会見
13年5月……福島ストレス国賠提訴報道にうろたえながらこう言った。
「裁判員制度は国民の理解と協力で順調に運営されている」竹崎長官退任会見
14年4月……異例の定年前退官の本当の理由は制度崩壊前の逃亡ではとささやかれた。
「裁判員制度は中長期で改善」寺田逸郎最高裁長官憲法記念日会見
14年5月……「順調」の言葉が消えた。直後、長官は全国の地裁に裁判員裁判の「出前講義」を命じた。
「裁判員裁判は予想以上に円滑に動いていると感じる」小池裕最高裁判事就任会見
15年4月……これが予想以上に円滑ならどういう状況を円滑でないと言うのかとあきれられた。

1-e1397901276348 さて、今年も憲法記念日記者会見が迫ってきました。寺田長官は今年はいったいどういうお言葉を並べるのでしようか。皆さま、インコの昨年5月3日のトピックス「裁判員制度はもうダメです-新長官の憲法記念会見を斬る」を座右に置きながら、今年もせいぜいお楽しみ下さいね。

投稿:2015年4月12日