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『さらば、裁判員制度』(中篇)

001178まね0インコさん、いつまでもコーヒーブレイクしてないで、西野喜一さんの『さらば、裁判員制度』の話の続きをしてね。150501

1-e1397901276348いやいや、ものごとには心の準備という大事なものがあるんよ。さて、この本の第2部は、裁判員裁判を始めて見たらどんなに変なことになってしまったか、というパート。変なものがもっと変になったという七変化物語、題して「制度運用の悲劇」。このパートは裁判員制度の惨憺たる現状を説明する部分だから、インコとしてもいちばん得意の部分。

焦る(そういう場面がいちばん心配)。

1-e1397901276348西野さんは、お化け話の先導役を務めたマスコミの悪どさに冒頭で触れている。例えばという形でやり玉に挙がっているのは、木村晋介監修『激論!「裁判員」問題』(朝日新書)。

001177その本は、私も読みましたわ。どこにもホントの「激論」なんてありませんでした。

1-e1397901276348インコも完全に西野意見に同感。

001178まね0まっ、同感とは偉そうに。

1-e1397901276348そう言わんと。進行役にはいかにも中立風を装わせながら結局賛成論に寄せて行く手法をとらせる。この監修者って元左翼・元消費者弁護士で日弁連執行部派だった人でしょ。

006311000消費者弁護士だったのにサラ金業者の代理人をやるようになってひんしゅくを買った人では。

15005011えっ(よく知っていたこと)

1-e1397901276348出版社が『朝日』系とくれば、結論は見えている。「中立」「中立」って自分から言い立てる言説っていうのはえてして怪しいもの。そうさ、葉っぱに表と裏しかないように、裁判員制度には賛成と反対しかないんよ。

001177今、マスコミ裁判員論を論じるとすれば、腐りきったマスコミもとうとう本当のことをちらちらとは報道し始めたというところでしょうね。マスコミも現場にはまともな記者さんが残っていたと言っておきましょうか。

006311000そういえば、原発の住民勝訴で「司法は死なず」なんてプラカードもありました。

1-e1397901276348裁判員制度の最大の破綻は、裁判自体がまともに行われず、そして何よりも裁判員を担わせる国民が逃げ出してしまったところにある。西野さんは、まずその「裁判員の逃走」に目を向け、詳細に論じる。「逃走」という言葉、インコは使ったことはないけど、これは言い得て妙です。そう言えば、『暁の脱走』って東宝の戦争映画があったね。田村泰次郎の『春婦伝』の映画化作品。そう、従軍慰安婦は今になってたいへんじゃない。

001178まね0話が飛んでます

1-e1397901276348はいはいすいません。真面目に言いますが、昔「逃散」というのがありましたよ。

006311000長さん?

1-e1397901276348違う、逃れ散るで「ちょうさん」。広辞苑を引いたら、「中世および近世、農民が領主の誅求に対する反抗手段として他領に逃亡すること」とあります。あまりにもあくどい年貢の取り立てにお百姓さんたちが故郷を捨てて逃げ出すことをいうのですね。インコは西野さんの「逃走」でこれを思い出しました。

001177実際にはほとんど辞退できないことになっている「本来の辞退」、思想表現の自由を侵害する「政令の辞退」、世の中に現に起きている「居直り辞退」…。

むふふしかし、現代の逃散は処罰もされない。いや、したくてもできない。

001177この国の権威・権力は中世、近世の権力者よりはるかに低いレベルに落ちていることの証かと。

1-e1397901276348さて、なんと申したらよいのかわかりませんが、ちょっとおもしろい話。西野さんはこうおっしゃってる。
「裁判員制度はいらない! 大運動」という団体の刊行物『裁判員制度はいらない! 全国情報』の2013年前半43号までの記事は情報として有用だが、この団体は同年初夏に運動方針をめぐって分裂したようで、『全国情報』の形態も内容もそれ以前とはそれ以降とでは顕著な差異があります、
とね。実際、西野さんは、43号までの『全国情報』からはたくさん引用もしている。かつては使えるものだったって。

006311000ふーん。そんなことがあったんだ。

1-e1397901276348そうなんだね。でも、この団体のホームページを見ると、「トピックス」とか「最新情報」とかいろいろタイトルは並んでいるけれど、更新されているのは要するに『全国情報』の発行紹介だけ。それなのに、いやそれですら、去年12月から更新されていない。ほとんど開店休業って感じ。

001177それじゃあ、読みたくなる人はいなくなるでしょうね。それともホームページなんか誰も訪問してくれなくて結構ってことかしら?

006311000『全国情報』の発刊を止めちゃったんですかね。

1-e1397901276348でもインコの元にはまだそんなタイトルのリーフレット風のものが届いているんだ。薄っぺらいものだけどね、ほらっこれよ。

001177どれどれ、あらっ、これはビラじゃないの? それともリーフレット?

1-e1397901276348西野さんの文章はまだ続きます。「他方、裁判員制度に反対するウェブサイトはいくつもありますが、私が時々見ているのは、情報量が多くて本書でも時々引用している『裁判員制度はいらないインコのウェヴ大運動』です」と。

お茶インコ、西野さん、大好き ♡! そう、そうこなくっちゃ、こなくっちゃ。読者の皆さん、西野さんは本書の中でたくさんインコの「トピックス」や「インコつつく」の記事を引用してくれてはります。西野さん、時々と言わず、しょっちゅう見てくだしゃんせ。

001178まね0(そのためにはしっかり更新しなさいよね。最近少し怠けてないか・・・)

お茶それにしても、自慢する訳じゃないけど

001178まね0自慢するんでしょ。

むふふインコの「トピックス」や「裁判情報」の更新はハンパやないからね。「インコのウェヴ大運動」の訪問者の数を教えてあげたいくらい。人が読みたくなるものを書けっていうことさ。

001178まね0(もって他山の石とせよってことでしょうよ!)

1-e1397901276348と、まぁ、私事・私見はこのくらいにして、本論にもどりまひょ。
現状に関する第2の問題は、裁判制度自体の崩壊のこと。思い上がり裁判員による重罰化の加速。公判前整理の手続から排除される裁判員のあほらしさ。事件処理の滞留現象が時々刻々ひどくなっていること。結局、証拠によらない裁判に堕していること。西野さんらしい緻密さとしつこさで徹底的に論じます。

006311000学者の真骨頂。

1-e1397901276348「裁判員裁判の下ではこれまでよりも刑が軽くなるのではないか」と言っていた弁護士を西野さんは笑います。笑われているのは高野隆という人。このお方は「裁判員は重罰化に拍車をかけるのかといえば、そんなことはないと考えている、裁判員が被告人を間近に見れば、同情も生じてくるから、職業裁判官よりも普通の人の方が重罰化に躊躇するだろう」と言っていると紹介してね(前出『朝日新書』)。

001177高野さんとやら。どっかの大学の先生もしているとか聞いたけど、ホントに何もわかってない。「被告人を間近に見て同情する人」なんか裁判所に来ないの、行かないの。

1-e1397901276348そうさ。きょうび、裁判所にいそいそと出かけて行くのは、思い上がりの暇人だったり正義より日当が大事な人たちばっかり。

001178まね0そんなことも予測できないで、よく弁護士や法律学の先生をやっていられるね。

1-e1397901276348西野さんの追究は、制度に期待した勢力や人々の夢や思惑に進みます。が、最高裁の思惑については第3部で集中的に論じるとしてここでは割愛されました。検察庁・法務省がこの制度に賛成した理由の中には、国民を信用したというような理由はなかったろうと推測されますが、よくわからないというのが結論です。

001177なるほど。

1-e1397901276348弁護士は、司法への国民参加が誤判・えん罪を防ぐと無邪気に信じ込んでいたと断定します。司法制度改革審議会委員の中坊公平弁護士が盛んにそのことを強調したことを上げている。現に誤判・えん罪を防ぐ効果が認められない以上、無邪気な弁護士たちは潔く前言を撤回して制度反対に回れというのが、西野さんの主張になんだろうね。

006311000中坊弁護士といえばかつて日弁連会長までやった人。後に詐欺事件を起こして弁護士を辞職し、死亡した人ですよね。そうか、結局はそんな程度の制度なのですかね・・・。

1505012おぉ~(この子も言うわねぇ)

1-e1397901276348第2部は内容豊富で紹介しきれません。ただし、インコが「トピックス」や「つつく」で言いまくり、つつきまくっているリアルな話にかぶるところが多く、読んでいて決して飽きさせません。第2部はインコが大衆版なら、西野さんは何と言っても高級版の差がありますがね。

1505013(それだけの差かなぁ)

1-e1397901276348さぁ、第2部はここまで。第3部「最高裁判所と裁判員制度-変節の悲劇」のご紹介はこの次に。これこそ西野本の真骨頂。よう、大統領ってとこよ。お楽しみに!

読書うさぎさてさて今度はティーブレイクですかね・・。

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投稿:2015年5月1日