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裁判員裁判は有罪率を高めえん罪を増やす

 

1-e1397901276348ジャンジャカジャーン、なんと今回はインコ訂正版でーす。

誰も聞いてくれないから自分で言うけど、数字に弱いインコは数学には案外強い。飲み屋の会計では失敗続きだが、開店前の行列式は常連。行く店の傾向で言えば偏微分。「微積はわずかにわかったつもり」の高校時代なんてね。えっ、この洒落わかんない? 漢字にしてごらん、いい感じにね。

何だかうきうきしてる感じだって? うきうきしてますよ、してまんがな。
1年3か月も前のインコの記事の数字に間違いがあるんじゃないかって、
し・て・き135244
されちゃったんさ。
1年3か月前の記事について最近になってですよ。

恥ずかしいことじゃないかって。そりゃ恥ずかしい。だけど、そこまで追及する読者って半端じゃないね。執念燃やして反証掲げたい人か、数字を見ると検算しないと気が済まないオタクか、インコのディープなファンか。どちらもどっちもインコにとっては可愛い可愛いお友だち。いい人たちばかりです。

早く話に入れと? はい、そうします。問題は昨年6月17日の「裁判員裁判はえん罪を確実に増やす」で起こった。ここに誤りがあったのですね。記事は誤記、インコは号泣。いや、しゃれてる時じゃない。

裁判員裁判はえん罪を減らすなどという人がいるが、裁判員裁判は確実にえん罪を増やすと訴えたインコの主張。去年6月4日の『朝日新聞』で、今村核さんという弁護士がなにやらの数字を持ち出して、「裁判員裁判は無罪が増えているからえん罪を防ぐ一定の効果がある」みたいなことを言ったので、インコはそれは違う、根拠になんか全然ならないと言った。

高裁がまとめた「裁判員裁判開始前3年間にプロの裁判官が出した判決」と「裁判員裁判開始後3年間に裁判員が参加して出した判決」の比較データを調べると、有罪になる事件の比率が明らかに高くなっている。インコは最高裁のデータを自分なりに整理し直してみた。今回もまずそれを示させていただきましょう。これは歴史に燦然と輝く正確無比のものです。

今村表2

この表は正しい。と言っても、突然見せられた向きにはわかりにくいかもしれない。今日初めてご覧になる方々のために、あらためて少し説明させていただきます。

事件数について裁判官時代と裁判員時代を比較すると、全裁判員事件の1割も占めない覚せい剤事件だけは2倍近くに増えているものの、それ以外の事件は半分以下に減り、覚せい剤事件を加えた事件総数でみても半分近くに減っています。刑事事件の発生情勢がこの間激変しているんですね。

そして、無罪率の話です。まず、事件総数でみましょう。裁判官時代の無罪件数(裁判員制度が導入されたら裁判員裁判の対象になる罪名の事件の件数)は44件、比率にして0.6%。それが裁判員時代に入って無罪件数は18件、比率にして0.5%。0.1ポイントの低下、比率で言えば6分の5に減ったことになる。百分率で言えば約83%。

これを以前の記事の中では「0.3%、半分に減った」と言っちゃったんですね。事実は「0.5%、8割ちょっとに減った」。確実に減っていますが、減り方の説明がオーバー。謹んで間違いをお詫びします。検算時にいっぱいやってたんじゃないかと深く反省しとります。

覚せい剤事件を除けば、裁判官時代の無罪総数は43件、比率にして0.6%。それが裁判員時代に入って無罪総数は10件、比率にして0.3%。こちらは正真正銘の半減です。

なお、もう少し比較の年月幅を広げて事前5年と事後5年を比べたら、その差はさらに広がると思います。最高裁が発表するかしないかはそれこそ見物ですがね。

この際、有罪率からも見ておきましょう。総数では有罪率は96.0%から97.0%に上がっています。覚せい剤事件は97.2%から94.6%に下がりましたが、覚せい剤事件を除くと96.0%から97.3%にまでさらに上がります。

犯罪別にももう一度まとめておきます。強盗致傷は94.2→97.2、殺人は97.4→97.7、現住建造物等放火は96.4→97.2、傷害致死は97.6→97.9、強制わいせつ致死傷と準強制わいせつ致死傷が97.2→99,5、強盗強姦が90.5→91.4、強盗致死(強盗殺人)が95.8→98.2だ。単位は%。

ついでに、最高裁が発表した昨年の裁判員裁判のデータも見ておきます。

総数では、有罪率は97.7%、強盗致傷は97.8%、殺人は98.1%、現住建造物等放火は98.3%、傷害致死は98.3%、強盗強姦が100%、強盗致死(強盗殺人)が97.3%、覚せい剤取締法違反が96.5%と、強盗致死以外はさらに有罪率が上がっています。強盗致死も裁判官時代が95.8%でしたので、上がっていることに変わりはありません。

また、この表には、強制わいせつ致死傷と準強制わいせつ致死傷の項目がないので性犯罪の項目ごとに見ると、(準)強姦致死傷は93.3%、(準)強制わいせつ致死傷は98.8%、集団(準)強姦致死傷は100%、(準)強姦も100%となっています。

今村さんへ。あなたは多少の分析さえもしていない(と思われる)。あなたが本気で裁判員裁判では無罪が増えているって思ってるとすれば不勉強の極、本当のことを知りながらそう言っているんだったらウソつきの極。どっちにしても極悪。135245

もう一度原文を見ようと思っている探求心旺盛な方々へ。ごめん、もう訂正しちゃったよ。今はこうなっている。

インコさんは「有罪率」で比較したけれど、無罪の総人数を終局人員の総人数で割った「無罪率」を考えてみて。さっきの表をもう一度見てご覧。裁判官時代は0.6%だった無罪率が裁判員時代には0.5%に下がっている。0.1ポイント減ね。

でも、ここまで読んでくれた紳士淑女の皆さんは、新装なった原文「裁判員裁判はえん罪を確実に増やす」をやっぱり見てくれるでしょうね。詳しい説明をぜひ読んで下さい。

結論をはっきりさせておきましょう。

□裁判員裁判になった結果、以前より全体として有罪率が高まり、無罪率が下がった。覚せい剤事件を除くとその傾向はさらに強くなる。

そして、この御方が言う「無罪が増えることは、えん罪を防ぐ一定の効果を持つ」という前提に立つと、次の結論が導かれます。

□裁判員制度はえん罪を増加させる要因を作っている。

ちょっとしたミスかもしれないけれど、ミスはミス。インコはきちんと謝りましたね。さ、今村さんとやらもこの辺で潔く謝った方がいいと思うよ。『論語』に見える有名な句「過ちては改むるに憚ること勿れ」をさっさと実行しなさいっていうことよ。

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投稿:2015年10月4日