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2017年10月

10月31日 津地裁
ガソリンスタンド3店で店員にけがをさせたり現金を盗んだりしたなどとして、強盗傷害と窃盗の罪に問われた41歳の男性に対し、田中伸一裁判長は懲役9年(求刑10年)を言い渡した。
判決によると、被告は1月13日午前4時20分〜同5時45分ごろ、共犯の男(当時20歳)と共謀し、乗用車を盗み、GS3カ所で現金計約23万円などを奪った。うち1カ所で店員の両腕をバールで数回殴り、骨折などのけがをさせた。
田中裁判長は「短時間に複数のGSを回り、犯行後、車の焼却などの罪証隠滅工作をして計画的。複数回服役したにもかかわらず、出所後わずか半年で犯行に及んでおり厳しい非難を免れない」とした。
共犯の男には4月に、懲役3年・保護観察付き執行猶予5年(求刑3年6月)の判決が出た。

10月31日 福岡地裁
路上で2016年2月、予備校生(当時19)が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた元少年(21)に対し、懲役20年(求刑22年)を言い渡した。平塚浩司裁判長は、元少年の責任能力を認め「被害者に落ち度はなく、無念さは察するに余りある」と述べた。
判決によると、元少年は同じ予備校に通っていた被害者に交際を申し入れたが断られた。その後、被害者が自分の秘密を言い広めたと考えるようになり殺害を決意。路上においてナイフ2本で多数回刺したり、おの1丁で殴ったりして殺害した。
争点は、元少年の責任能力の有無と程度だった。弁護側は「幻聴があり、統合失調症の影響で、心神喪失か心神耗弱だった疑いがある」と主張。判決は、精神鑑定を担当した医師の証言などから、元少年には精神障害などがあり犯行に影響を及ぼしたと認めたうえで、約10分後に自首するなど善悪の判断はついたとし、さらに、数日前に大学入試の2次試験を受けるなど自分の行動をコントロールする能力はあり、完全責任能力があった、と判断した。
平塚裁判長は量刑の理由について「背後からいきなり襲いかかり、馬乗りになるなどしながら59カ所もの傷を負わせて殺害した。態様はしつようであまりに残忍。被害者は将来のある若さで突如、命を奪われ、遺族が厳しい処罰を望むのも当然。同種事案の中でも重い部類に属する事案だ」と説明した。

10月30日 千葉地裁
昨年7月、53歳男性が複数人から暴行を受け死亡した事件で、傷害致死の罪に問われた右翼団体「潔心塾」構成員の47歳男性ら3人に対し、松本圭史裁判長は「粗暴かつ危険な犯行」などとして、中心となって暴行したとされるO被告に懲役10年(求刑12年)を言い渡した。
O被告の後輩で33歳のI被告は同8年(同9年)、同団体創設者で顧問の55歳男性=同罪で起訴=の下で運転手をしていた39歳のM被告には同4年(同7年)。
判決で松本裁判長は「被害者が一方的にO被告方に押しかけたことや、被害者の言動に恐怖を感じたなどとする経緯や動機は理解できる」とした一方で「明らかに度を越えた暴行。数的に勝る状況を作り出し、O被告は死因に最も寄与した激しい暴行を加えた」と指弾。I被告については「O被告とともに中心となって暴行しており、責任は大月被告に次ぐ」とし、M被告については「O被告とI被告の間から数発手を出し、うち1回は首付近に当てた。その後は暴行をやめて消極的な態度を示した」と判示した。
O被告の弁護側は「被害者側の落ち度が事件の原因」として同4年6月が相当、I被告の弁護側は「他の仲間との共謀はない」などと傷害罪を適用した上で同2年が相当、M被告の弁護側は「致命傷となる暴行は加えていない」などとして執行猶予付き判決を主張していたが、松本裁判長は「5〜6人で取り囲み自分以外の者の暴行を認識していなかったとは、到底考えられない。暗黙の内に互いに意を通じて暴行しており、共謀が成立する」と退けた。
判決によると、3人は顧問らと共謀し昨年7月24日午前0時ごろから同30分ごろまでの間、駐車場などで、被害者の顔や胸、腹などを多数回にわたり殴る蹴るなどの暴行を加え、同2時ごろ、同市内の病院で被害者を多発外傷による出血性ショックで死亡させた。
同事件で地裁は10月11日、48歳男性に懲役4年の実刑判決を言い渡している。

10月30日 東京地裁
生後3カ月の長女を浴槽に沈め殺害したとして、殺人罪に問われた39歳の女性に対し、島田一裁判長は「統合失調症による妄想に強く影響されていた」として、心神耗弱だったと認定、懲役3年・執行猶予5年(求刑4年)を言い渡した。
島田裁判長は、被告には2012年春頃から統合失調症の症状がみられ、不妊治療を経て16年10月に長女を出産した後、幻聴などの症状が悪化したと指摘。「長女を死なせてあげないといけない」という妄想的な確信が強くなり、追い詰められた状態で犯行に及んだとした。

10月27日 那覇地裁
2015年2月に自宅で妻=当時(73)=の首を絞めて殺害したとして、殺人の罪に問われた76歳の男性に対し、柴田寿宏裁判長は「第三者の犯行可能性が排除できない」と検察側の立証が不十分と指摘し、無罪(求刑17年)を言い渡した。
09年に始まった那覇地裁の裁判員裁判で、完全無罪の判決は初めて。
判決で柴田裁判長は、遺体発見時に外部から侵入可能だった妻の寝室の掃き出し窓について「事件当時には完全に閉まっていたとは限らない」と指摘。「開いていた窓から侵入した可能性が残る以上、第三者の犯行可能性は排除できない」と判示した。
検察側は、「掃き出し窓には外部から侵入した場合に残る痕跡はなかった」とす鑑識担当警官の証言などを基に、「妻の死亡推定時刻には自宅に妻と被告人しかいない。自宅内に争ったり物色されたりした形跡はなく、証拠上は被告人が犯人と考えた方が整合的だ」と訴えた。
だが柴田裁判長は、事件当日の鑑識活動で窓の状況を撮影した写真がないとし、警察の鑑識活動が不十分だと認定。「物色された痕跡がないからといって、窃盗目的の侵入が否定されたことにはならない」とした。
弁護側の大井琢弁護士は「不十分な証拠で逮捕・起訴した」と県警や那覇地検を批判。「男性を苦しめることになるので、控訴するべきでない」と訴えた。
地検の白井智之次席検事は「判決を精査し、上級庁とも協議して適切に対応したい」とコメントした。県警捜査1課は「判決については承知しているが、県警としてコメントできる立場にない」とした。
男性は、15年2月に自宅で妻の首を圧迫して殺害したとして、昨年12月に起訴された。

10月26日 高知地裁
 2015年、警察官に自転車で衝突し、死亡させたとして、重過失致死罪に問われた少年(19)の判決があり、山田裕文裁判長は禁錮3年・保護観察付き執行猶予5年を言い渡した。
少年は傷害致死罪などに問われていたが、8月4日の裁判員裁判の判決当日に地裁が検察側に訴因変更を打診。地検が応じて期日が延期されたうえ、裁判員裁判の対象外になったため、裁判官だけで審理をやり直した。
判決によると、少年は15年8月14日夜、歩道を無灯火の自転車で走り、制止しようとした男性警部(当時25)に衝突。転倒させて意識不明の重体とさせ、10月に死亡させた。求刑は禁錮2年以上4年以下の不定期刑だった。
少年は、パトカーに停止を求められたが加速して逃走し、警察官ら数人が前方の歩道にいるのに気づいたが、時速約45㌔で疾走したとして、12月に傷害致死と公務執行妨害の非行内容で高知家裁に送致された。その後、家裁は検察官送致(逆送)と決定し、高知地検は傷害致死と公務執行妨害の罪で起訴した。

10月25日 佐賀地裁
民家に押し入り住民にけがをさせたなどとされる事件で、強盗傷害や窃盗の罪に問われた33歳の男性に懲役8年(求刑10年)、同じく48歳の男性に懲役6年(同9年)を言い渡した。
吉井広幸裁判長は判決理由で、土木作業員の被告に指示されたという実行役の受刑者の男(27)による供述を「内容が一貫し、十分信用できる」などとして、両被告の共謀を認定した。
判決によると、両被告は受刑者の男と共謀、昨年6月24日に当時80代女性方に侵入して現金を要求し、けがをさせた。昨年6月に3人で7件、同年5月には受刑者を除く2人で1件の盗みなどを働いた。

10月24日 静岡地裁沼津支部
2012年2月、自宅で無理心中を図り息子2人を殺害したとして殺人の罪に問われた48歳の女性に対し、菱田泰信裁判長は懲役10年(求刑15年)を言い渡した。
犯行当時の被告の責任能力の有無が争点となっていた。菱田裁判長は軽度のうつ状態などの精神障害はあったが影響は限定的で無理心中を決意した後も冷静に合理的に行動していた―などと指摘し、「完全責任能力があった」と認定。弁護側の「心神耗弱であった」との主張を退けた。
量刑理由については「2人の尊い命を奪った結果は重大で、何の罪もない子どもを理不尽に巻き込むことは許されない」と非難しつつ、「自身も自殺しようとして高次脳機能障害を抱えるなど、動機や経緯に酌むべき事情がある」とした。

10月23日 大阪地裁
アパートで管理人の男性が刃物で殺害された事件で、79歳の男性に対し、懲役14年(求刑16年)が言い渡された。
判決によると、被告は、去年5月、住んでいたアパートの玄関で、管理人の男性(当時74)の対応に腹を立てて、果物ナイフを男性の胸などに突き刺して殺害した。
逮捕当時、被告は、「頼み事をしても何もしてくれず、不満だった」と供述していて、裁判の争点は、被告に殺意があったかどうかと、精神障害や酒の影響による責任能力の「程度」だった。
判決は、殺傷能力がある凶器を使っている点や、犯行前後の行動に異常な点はみられないことなどから「完全責任能力があった」と認定。一方で、「犯行直前に被害者と口論した段階では、その経緯や刺した方法などからは、強い殺意があったとは認められない」と。

10月17日 東京地裁
交差点でタクシーに衝突し、運転手ら5人を死傷させたなどとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)罪などに問われた21歳の男性に対し、河本雅也裁判長は「交通ルールを無視した危険極まりない運転だ」と述べ、懲役17年(求刑20年)を言い渡した。
河本裁判長は、整備不良でパトカーの追跡を受けた被告が、飲酒運転の発覚を恐れて逃走したと指摘。弁護側は「赤信号を認識していなかった」と主張したが、判決は「時速約160㌔で交差点に進入しており、信号に従う意思がなかったことは明らかだ」と退けた。

10月12日 大阪地裁
昨年9月、自宅で不動産会社店長(当時34)に対して、刺身包丁で4回切りつけてけがをさせた上、逃げ出した店長を追いかけ、店舗でも包丁を振り回して、「殺すぞ」などと店員らを脅した罪に問われた67歳男性に対し、懲役11年を言い渡した。
被告は「合い鍵」をめぐって店長がうそをついたと思い込み、嫌がらせを白状させる目的で犯行に及んだとされ、裁判は、殺意の有無と精神障害の影響による責任能力の有無が争点となっていた。
判決は、「人が死ぬ危険性が高い行為だったことは明らか」と指摘。「精神障害の影響は限定的で、完全責任能力があった」と認定した。

10月11日 和歌山地裁
和歌山市で昨年10月、当時の指定暴力団神戸山口組系紀州連合会の会長だった男性を暴行して死亡させたとして、傷害致死などの罪に問われた指定暴力団山口組系の55歳の組幹部ら4人に対し、武田正裁判長は、懲役8年6月~同7年を言い渡した。求刑は組幹部を含む3人が懲役10年、ほか1人は懲役8年だった。
事件では他にも同じ組の幹部を含む4人が同罪などで起訴されている。
武田裁判長は判決理由で「被告らは、被害者が対立関係にある暴力団の会長だと認識し、暴行の意思を通じ合わせていた」と共謀を認定。「事件は会長の執拗な挑発が原因で、突発的に発生した」としたが「集団で取り囲み、一方的に頭部を蹴るなど危険な犯行だ」と指摘した。
判決によると、8人は共謀し昨年10月9日午前1時ごろ、被告らの組と関係する和歌山市内の飲食店で騒いでいた当時の紀州連合会会長を路上に連れ出し、頭部付近を複数回蹴るなどして死亡させた。会長の知人にも暴行を加えた。

10月07日 大阪地裁堺支部
当時3歳の長男を死なせ、遺体を山中に埋めたとして、傷害致死、死体遺棄などの罪に問われた36歳の父親と33歳の母親に対し、真鍋秀永裁判長は、父親に懲役7年、母親に懲役3年を言い渡した。
判決によると2015年12月、父親は、寝付かなかった長男の頭部を平手でたたき、壁に打ち付けるなどして翌日ごろに死亡させた。母親も夫の暴行を止めず、放置した。遺体は両被告が昨年5月、河原に埋めた。父親はその後も長男が生きているように装い、児童手当をだまし取ったとされる。
公判で母親は傷害致死には関与していないと主張。判決も「父親に寝かし付けを頼んだからといって、暴行の意思連絡があったとは言えない」と述べたが、「父親が暴行を加えることを阻止する義務があった」として、傷害致死の幇助にあたると認定した。

10月6日 札幌地裁
アパートで昨年10月、過去に雇用していた住人の男性を仕事上の恨みから刺殺したとして、殺人などの罪に問われた52歳の男性に対し、懲役18年(求刑20年)を言い渡した。
弁護側は公判で、男性が被告の会社を2010年に退職後、報道機関に「悪徳業者だ」とうその情報を流し、被告が仕事を失ったと主張。男性にも落ち度があり、懲役13年が妥当としたが、金子大作裁判長は「行政処分を複数回受けるなど、法令順守の観点からかなり問題があった。全く根拠のない誹謗中傷ではない」と退けた。

10月06日 大阪地裁
 60代の元交際女性を殺害しようとしたとされる66歳の男性に対し、懲役4年6ヵ月を言い渡した。
裁判で被告は、「自らナイフを突き刺したのではなく、転倒した時に偶然刺さってしまった」と殺意を否認していた。
判決は、「被害者の傷は、被告が意図的に刺したことで生じたものと認めるのが合理的」と指摘。「被害者への執着心からナイフを持って自宅を出発した時点で、すでに殺意を持ち、被害者を殺害して自分も死ぬつもりでナイフを突き刺した」と認定した一方、被害者が、「被告を許す」と言っている点を考慮した。

10月05日 長野地裁松本支部
温泉施設玄関先で2015年10月、43歳男性が射殺された事件で、殺人と銃刀法違反の罪で起訴された指定暴力団山口組系組幹部の50歳男性に対し、野沢晃一裁判長は「危険かつ冷酷」とし、有期刑の上限の懲役30年(求刑無期懲役)を言い渡した。
弁護側は「事実認定に納得できない」として控訴する方針。
野沢裁判長は「当初から殺意を持って被害者を追いかけ、頭部に向けて拳銃を発射したことを強く推測させる」と指摘。被害者が被告の所属する暴力団から対立する別の暴力団に移籍しようとしていたことを知ると、周囲に危害を加えるような言葉を発しており、「事件前から射殺の意思があった」と認定した。
弁護側は、被害者が襲いかかってきたため、払いのけようとして誤って発砲した―とし、殺人罪と銃刀法違反罪(発射)について無罪を主張していた。同裁判長は捜査段階では意図的に発射したとの趣旨の供述をしており、「信用できない」と退けた。量刑理由では、銃器を使用した殺人事件としては「重い方に位置する」とする一方、組織的な犯行と比べると「無期懲役を選択することはためらわれる」とした。

10月05日 岐阜地裁
自宅に放火し、障害のある妹を殺害したとして、殺人や現住建造物等放火などの罪に問われた59歳男性に対し、懲役12年(求刑20年)を言い渡した。
被告は生活に困窮して自殺を決意し、「妹は一人では生きていけないから、一緒に連れて行こうと思った」という。菅原暁裁判長は公判で明らかになった経緯を踏まえ、「死を回避する努力を放棄していた」と厳しく批判した。

10月04日 福岡地裁小倉支部
 生後約3カ月の長女を浴槽に沈めるなどして死なせたとして、傷害致死罪に問われた32歳の母親に対し、松藤和博裁判長は懲役4年6月(求刑6年)を言い渡した。
判決によると、昨年12月17日、ラブホテルで、元交際相手の33歳男性=殺人罪で起訴=と共謀し、2人の間に生まれた長女を浴槽に沈め、頭に暴行を加えて死亡させた。
判決は、直接暴行したのは父親と認定。その一方で、被告に関し、事件前にも長女への暴行を目撃したり、予告されたりしたとして「暴力が振るわれる可能性が高いと十分認識しながら、被害者をホテルに伴い、2人きりにするなどした」と非難した。

10月03日 神戸地裁
一方通行の道路を逆走して死亡事故を起こし、逃走したとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)やひき逃げなどの罪に問われた38歳の男性に対し、芦高源裁判長は「覚せい剤使用の発覚を恐れ、追跡するパトカーから逃げるために危険な運転をしており、動機は身勝手」と述べ、懲役11年(求刑13年)を言い渡した。
芦高裁判長は判決で、「事故直前も赤信号の無視や逆走を繰り返し、交通の安全より逃走を優先した危険な運転」と指摘。事故後に現場を立ち去った点も「非常に悪質」と非難した。

10月02日 大阪地裁
生後2カ月の孫を揺さぶって暴行し死なせたとして傷害致死の罪に問われた67歳の祖母に対し、飯島健太郎裁判長は「首もすわっておらず、抵抗できない乳児を強く揺さぶっており、同情する事情はない」として懲役5年6カ月(求刑6年)を言い渡した。
判決によると、被告は2016年4月、孫をゆさぶるなどして頭部に大けがを負わせ、急性硬膜下血腫などにより約3カ月後に死亡させた。当時、被告が一人で乳児と2歳の姉の面倒を見ており、母親は外出していた。
被告は逮捕直後から一貫して「やっていません」と否認、弁護人も「孫を可愛がっており、虐待の兆候も動機もない」として無罪を主張していた。しかし判決は、乳児の脳障害は故意に外力が加えられたことによるものと指摘。「被告以外に強い衝撃を与えうる人物はいない。泣きやまないなどの理由で突発的に暴行を加える可能性はある」と結論づけた。

投稿者 : いらないインコ|2017年12月29日