トピックス

トップ > トピックス > 死刑…世界の潮流と日本の現状

死刑…世界の潮流と日本の現状

 6月26日、大阪地裁堺支部は無罪を主張していた46歳の男性に死刑判決を言い渡した。
状況証拠しかなく、被告人は別に実行犯2人がいると訴えていた。しかも大阪府警は失踪当時に夫婦宅で採取していた毛髪や血痕などを紛失(また!)していた。
裁判員裁判での死刑判決はすでに19件(うち1件は本年6月20日東京高裁で無期懲役に)。 

昨年3月29日、小川敏夫法務大臣(当時)は就任後わずか2ヶ月で、3人の死刑を執行した。その際、「裁判員も死刑を支持している」と言い、世論調査を持ち出し「世論の85%が死刑存置だ」と言った。この85%は「将来廃止しても」とか「条件によっては廃止」などを含む数字。世論の支持で結論を決めるなら84%が「イヤだ」「やりたくない」と言っている裁判員制度は即刻廃止すべきだろう。

そして今年2月 21 日、 谷垣禎一法務大臣も就任か らわずか2ヶ月足らず で 3人の死刑を執行。さらに4月26日2度目の死刑執行。 谷垣大臣の執行に関しても、法務省内には「裁判員裁判で死刑判決が相次いでいる。市民も参加した判断に行政が待ったをかけるのはおかしい」との声があったという。

裁判員裁判の死刑判決を政府が死刑執行の口実にしている。
しかし、世界の潮流は死刑廃止である。
「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」が本年6月30日に発行した機関紙『FORUM90』VOL.129の記事を掲載する。

2012年の死刑判決と死刑執行HP私の責任HP

アムネスティ・インターナショナル報告書より

※死刑廃止へ向かう世界の動向

○G8国で死刑執行したのは、日本と米国のみ

○国連加盟国193ヵ国のうち174ヵ国で死刑執行なし

○米国は、南北アメリカで唯一の死刑執行国

○ベラルーシは、ヨーロッパと中央アジアで唯一の死刑執行国

○アフリカ連合54ヵ国中死刑執行は5ヵ国のみ、37ヵ国は法律上or事実上死刑を廃止

○アラブ連合21加盟国のうち7ヵ国で死刑を執行

○ASEANでは10加盟国のうちのいずれも死刑執行はなし

アムネスティの調べでは、2012年に死刑を執行した国は21ヵ国、件数は682件であった。これは2011年(21ヵ国、680件)とほぼ同数である。この682件には、中国の数千件にのぼると言われる死刑執行は含まれていない。確認されている死刑執行数では、イラン、イラク、サウジアラビアの3ヵ国で総数の4分の3に達している。

2012年に58ヵ国で少なくとも1722人が死刑宣告を受けた模様だ。これはアムネスティが確認できた最小推定値だが、世界63ヵ国で少なくとも1923人が死刑宣告を受けた2011年に比べ大幅な減少である。2012年末時点で世界中に少なくとも2万3386人の死刑囚がいる。これはアムネスティが各国から入手した数字を基にした最小推定値である。

死刑廃止に向けた前進は世界の全地域で見られた。米国は南北アメリカで唯一の死刑執行国だが、州単位で見ると2011年には13州で執行があったのに、2012年には9州に減少した。コネチカット州は4月に17番目の死刑廃止州となった。また、全米で宣告された死刑判決は12州であった。2013年にはメリーランド州が18番目の死刑廃止州になる。

南アジアでは、日本、台湾など数ヵ国で死刑執行再開などの退行的な動きがあったが、一方ベトナムでは死刑判決をくださず、シンガポールも死刑の法律の改正をしているため執行停止を順守している。

サハラ以南のアフリカでは死刑廃止へのさらなる進展があった。ベナンでは、死刑関連の条項を撤廃する立法的措置を取った。ガーナでは、新憲法で死刑を廃止する計画だ。シエラレオネでは、ついに死刑囚がいなくなった。

死刑執行には以下の方法が使用された。

・斬首:サウジアラビア

・絞首:日本、アフガニスタン、バングラデシュ、ボツワナ、インド、イラク、イラン、パキスタン、パレスチナ自治政府、南スーダン、スーダン

・致死薬注射:米国、中国

・銃殺:ベラルーシ、中国、ガンビア、朝鮮民主主義人民共和国、パレスチナ自治政府、ソマリア、台湾、アラブ首長国連邦、イエメン

※東アジア(大韓民国・台湾・日本)の情勢について

[大韓民国]

大韓民国では2つの死刑宣告がなされ、年末までに63人が死刑囚として残った。5月に国会が休会したことで、2008年、2009年、2010年に国会で導入された死刑廃止3法案の期限が切れた。10月25日の国連の普遍的定期審査で、韓国政府は刑事訴訟法の修正に関する特別文化委員会(法務大臣の諮問機関)を通じて、死刑を含む法律を改正する必要性を検討すると述べた。そのため、死刑廃止条約(国際規約第2選択議定書)の批准が困難であるとも述べた。

 [台湾]

 台湾では12月21日に6人の死刑執行が行われ、7件の死刑判決が出た。年末の時点で120人の死刑囚のうち55人の上告の道が途絶え、刑が執行される可能性が高まった。家族は死刑執行の前に知らされることはなく、執行された事実は遺体安置所から遺体を引き取るときに初めてわかる。台湾総統の死刑廃止の約束を守るよう国内外が要請していることに対して、林永楽外交部長は台湾の台北タイムズに対し、政府はそのような言質を与えたことはないと述べた。

[日本]

日本では20ヵ月間なかった死刑の執行が2012年3月29日に再開され、3人が処刑された。当時の小川敏夫法務大臣は、死刑の執行は法相の「職責」だと述べ、執行に踏み切った。2012年中に男性6人と女性1人の死刑が執行され、新たに3人が死刑判決を受けた。2012年末の確定死刑囚は133人だった。

2012年10月31日、国連人権理事会による普遍的定期審査で、日本政府は、「国民の大多数が極めて凶悪な犯罪に対しては死刑もやむを得ないと考えており、こうした犯罪があとを絶たないため死刑を直ちに廃止することは適当ではない」と述べた。「死刑囚を24時間独房に拘禁することは法の定める人権侵害には当たらず、この処遇は本人の情緒の安定を確保するための措置である」と述べた。人権理事会から日本に対してなされた勧告は、死刑廃止条約(国際規約第2選択議定書)の批准、各利害関係者の意見を踏まえた死刑制度に関する国民的議論の促進、死刑の廃止または死刑執行の停止(モラトリアム)、自由を奪われた被拘禁者に対する「代用監獄制度」(警察が囚人の身柄を最長23日間拘束できる制度)の見直し、等だ。日本政府は、これらの勧告内容を検討し、2013年3月の第22回会期までに受け入れるか否かを表明することに同意した。

〈日本は3月、国連人権理事会に対して「人権侵害救済機関」(国内人権機関)の設置勧告を受け入れた以外、他のこと全て(死刑制度に関すること、代用監獄に関すること等)に関して受け入れを拒否した〉

(可知亮)

投稿:2013年6月28日