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憲法記念日会見 触れたくない、聞かれたくない

1-e1397901276348201705020033_001_m今年の記者会見はよほどきつかったと見える。

hiyokosyoumen1誰がきつかったのですか。

1-e1397901276348テラダ長官さ。

001177この人、いつもきつそうに見えません。

HP201642221世の中何がおもしろいのかというご面相の人だが、今年はいつも以上にきつかった。

hiyokowarai1長官きつけりゃ記者まできつい、ですかね。

へ?・・・

001177裁判員制度について今年も触れなかったんですね。

hiyokowarai1話題がなかったということでしょうか。ゆうことなしの禿頭とか。

1-e1397901276348いくら行くとこなしの大型連休だって、この話題だけは大あり名古屋の金のしゃちほこ。せっつきなさんな青年たちよ。順序立てて話して進ぜよう。

hiyokowarai1さてはさては先輩、またまた朝早くからコンビニに駆けつけましたね。

001177去年の記者会見は、ハンセン病隔離法廷問題で長官が謝罪したことが柱。後はほとんど付け足しでした。

20160517114差別の先頭に立った最高裁の責任は重かつ大。頭を下げれば済む問題ではない。「この国の司法の正統性」なんてどこのコンビニで売ってるんだっていう話だった。

001177しかしまた、ハンセンの問題にこと寄せて裁判員制度について一言も話さなかったのはこれはこれで大問題でした。

hiyokowarai1しっかり先輩の餌食になりました。

1-e1397901276348今年も無言劇を通そうとしたようだが、昨年の無言劇はやはりまずかったと思った記者の方が質問の追い打ちをかけたらしい。

hiyokosyoumen1そんなことがわかるんですか。

1-e1397901276348そういう質問をした記者がいたので、そうだったのではなかろうかと思うのだ。

001181それはきっと『朝日』や『読売』ではないでしょう、制度が破綻していることをよくよく知っている新聞社は黙っている。

hiyokosyoumen1権力と社会的勢力の隠蔽共謀罪ですか。

1-e1397901276348去年も言ったのだが、この記者会見は会見場の全景も撮らない約束になっているらしい。徹頭徹尾報道管制が敷かれている。参加できるのも各社1人だけとかね。

hiyokowarai1へんなの。

001177では、主要紙の内容を紹介しましょう。

『朝日』は千葉雄高。市川美亜子は消えた。わずか26行のベタ記事。写真なし。冷たいなぁ。見出しは「『国民的な議論に委ねるべき問題』改憲めぐり最高裁長官」。裁判員制度については一言もなし。「司法取引」の来年施行に備えて裁判官の準備が必要と。人権侵害刑事司法をいそいそと進める最高裁を紹介しています。

『読売』無署名。3段41行と昨年同様に記事量が多い。写真あり。見出しは「最高裁長官 改憲議論『十分に注視』」。こちらは裁判員制度にも論及、昨年公判前整理手続きが平均8.2か月と長期化したことに触れ、「手続きが簡潔に行われていない。効率化は大課題」と長官が言ったと。また、司法取引は「柔軟な発想で議論したい」とも言ったそうな。露骨な刑事司法改悪歓迎がこの日の会見の「きも」だったようです。

『毎日』伊藤直孝。2段24行。文字がやけに少ない。写真でごまかした感じ。見出しは「『柔軟な発想必要』最高裁長官」。裁判員制度にはまったく触れていない。司法取引の施行に「柔軟に」備えると。記者連は危険性がわかっているのでしょうか。この淡々とした紹介ぶりはとても気になります。

『日経』無署名。2段28行。短いがおもしろい。昨年と違って写真なし。「8年目を迎える裁判員制度への評価を問われると、『大きな破綻はないが、努力すべきことも少なくない』と言ったそうな。(長官は)争点や証拠を絞る公判前整理手続きの充実などを課題に挙げた」ともあります。裁判員制度については、長官は自分からは発言せず、質問が出て初めて答えただけのようです。こんなところでリアルな姿が露見しますね。

 『産経』無署名。大ぶりのカラー写真でなぜかはしゃいでいる。34行。見出しは、「『国民的議論に委ねるべきだ』寺田最高裁長官が見解」。改憲論議が巻き起こることを期待しているように誤読する向きもありそうだ。裁判員制度に関しては、「『裁判員が安心して裁判に参加できるよう、環境整備など努力しなければならないことも少なくない』と語った」とある。長官は、例の声かけ事件のことを言ったんだろうが、もう一回りも二回りも回っているのに、外れている。

『東京』無署名。ベタ記事で写真もない。28行とこれも冷たいなぁ。「司法取引」には触れたが、裁判員制度には一言も触れなかった。

20160517114これが憲法記念日朝刊の報道ぶりだ。裁判員に触れたのは、『読売』『日経』『産経』の3紙だけ。悪辣司法隠蔽策の裁判員制度。ハンセンショックと通底する大テーマのはずなんだが、この影の薄さをどう見るか。

hiyokosyoumen1少しでも光が見えてくれば、何か言うはずですよね、針小も棒大にして。

001177そう。「お客様満足度95%」みたいな宣伝がいっとき盛んでしたが、出頭率がどんどん悪くなる状況にあまりにも整合しない話で、あの話は今では神通力を失いましたね。

hiyoko2-1言う方のテラダ君は言いたくなく、聞く方の各社記者連も聞きたくもないということになったのでしょうか。どちらもどっちも触れたくない。

20160517114長官とすれば、少しでも光が差す話があれば話したかったが、何一つなかったということだ。

hiyokosyoumen1しかし『日経』の報道はおもしろいですね。「裁判員制度への評価を問われると、『大きな破綻はないが、努力すべきことも少なくない』と言ったという。

1-e1397901276348「大きな破綻はない」とは傑作だ。これは「破綻の徴候が各所に出ている」と言っているのに等しい。「順調」とか「定着」とかの言葉を使わなくなって久しいが、これが最末期の「公用語」になったのだろう。

hiyokosyoumen1前号でもお伝えしましたが、今年2月末には裁判員の出頭率がとうとう20%を割りました。これは「大きな破綻」の証拠ではないのでしょうか。

001177そう、20%を割ったら大変だなどと言われていました。そのことに触れないようにするのが今回の記者会見の最重要課題だったかもしれませんね。

hiyoko2-1でも、これを「大きな破綻」と言わないのなら、裁判員が法廷で毒を飲んで死にでもしなければ破綻とは言わないかも。

HP201642221いや、それでも破綻したとは言わないだろう。最高裁は「この程度のことで死ぬ奴は死んでも仕方がない」くらい言いそうだ。

001177テラダ長官の口から「破綻」という言葉が出たというだけで、眼前に広がるのは終末期の荒涼たる風景なのだと思わなければなりませんね。

hiyoko2-1「努力すべきことも少なくない」というのはどういうことでしょうか。

001181どういう問題点が表れているかを具体的に言わないから、何を努力しなければならないのかがまるきりわからない。

1-e1397901276348第一線の記者が集まっているのにそこを指摘しないというのはどういうことか。

001177そうですね。でも、この日の長官会見の内容が事前に漏れていたのか、前日の『読売』朝刊は公判前整理が長くなっていることを大きく報道しています。

1-e1397901276348そう、8段抜きの大報道だった。

hiyokosyoumen1ボクも読みました。見出しは「公判前整理延々8か月 裁判員裁判昨年平均 弁護・検察側の駆け引き」でしたね。

001177公判前整理が長くなっていることはかねてからの指摘です。制度発足当初は手間のかからない事件から始まりましたから整理期間も2.8か月という短さでしたが、その後段々長くなって今では実に8か月ほどです。

HP201642221無理もない。超短期間の法廷審理で決着をつけるとなれば、公判前整理は激しい攻防戦になる。無罪を争う事件ならとりわけそうだ。検察は証拠を出したがらないし、弁護側は開示を強く求める。

hiyoko2-1「準備は短く 公判も短し 裁けよ市民」という要求自体に無理があるのではないでしょうか。

1-e1397901276348長官は「手続きが簡潔に行われていない。効率化は大課題」というが、無理に争点を少なくさせたり証拠を絞らせたりすると、真実の認定は一気に難しくなる。

001178まね0最高裁が 「努力すべきことも少なくない」というのは、具体的にはどういう方向を考えているのか。そこが問題ですね。

hiyokosyoumen1裁判員制度は起訴から判決までの期間を短くさせることに目標の柱がありました。でも、裁判員裁判になって裁判官時代より審理期間が長くなってしまった。

1-e1397901276348そうだ。これでは裁判員裁判を導入した目的と現実の結果が大きく乖離する。何とかしなければ制度存立の大きな柱が崩壊する。

001177しかし、公判前整理手続きを短くしたら、審理そのものが粗雑になってしまいます。

1-e1397901276348そうさ。裁判員裁判はもともと粗雑司法だ。考えて見れば、公判前整理の長期化は粗雑司法に対する実務法曹の抵抗とも言える。

001178まね0素人に裁かせるのだから簡単でよいという理屈がこれから裁判所の中を吹き荒れるのでしょうね。

hiyokosyoumen1ということは、民意の離反というだけではなく、制度そのもののあり方という面からもやっぱりこの制度は破綻じゃないですか。

1-e1397901276348そうだ。この制度はにっちもさっちもいかないところにきている。長官が憲法記念日に裁判員制度に触れない、そっとしておいてくれということ自体、最高裁が制度破綻を自白していることを意味するのだ。

hiyokowarai1あ、先輩、聞こえてきました。ららばい ららばい お休みよー ボロボロ制度の子守歌♪ って。

20160418inkoテラダ君も嘆いているだろうよ。そんなにオレが悪いのかってさ。同情する気には少しもならないがね。

  

投稿:2017年5月5日