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地裁刑事部職員の皆さま 最高裁長官の感謝状です

親愛なる地裁刑事部職員の皆さま方へ

                                                          鸚哥大学法学部 ひよこhiyokosyoumen1

前略
そうでなくても人べらしで日頃から苦労されている皆さま、8年前に最高裁が訳のわからない制度を始めたことで、義務を果たしに来るだけの市民に最大限の敬語を使って粗相のないように対処せよなんて厳しく言われくそ面倒な気遣いに追われている皆さま方におかれましては、お疲れとお嘆きと憤懣の日々をお過ごしのことと心からご同情申し上げます。

 今や裁判所に出頭してくる、いえ皆さまの慣用語法では「出席」なさる人たちは、お上に召されて御用を果たせるのが嬉しくて仕方がないお調子者と、長いものには巻かれるしかないと思い定めている諦めの人と、暇をもてあましている説教たれと、行かなきゃ過料行けば日当、そうだ裁判所行こうと財布を握る人だけになったと言われています。

 人を見る眼という言葉がありますが、出頭してくる人たちの風貌、顔色、挙動、視線、言葉遣いなどを観察されている皆さまの眼には、この人たちはどのように映っていますか。皆さまが自身の誇りをかけて生涯の仕事に選んだ司法の現場がこんな姿になってしまったことをどうお考えでしょう。おいおいこれが裁判かよって正直思っているのではありませんか。

 本論に戻ります。インコ先輩は、「ワインの澱のような人たち」と言ってますが、ボクは出頭者のすべてが吐き出すしかない澱のような人たちだとは思っていません。もっともこれからはわかりませんが今のところの話です。現在は、その人たちの中にも「やりたくない」と言うためだけに出頭してくる人たちもいます。その皆さんはくじで外れればほっとして裁判所を後にします。

 しかし、人を裁きたくて出てきた人たちはくじ引きで外れるとがっかりするんですね。何だやらせてくれないのかって職員の皆さんに怒りをぶつける人もいるやにうかがいます。11月14日付け『朝日』の声欄には「裁判員呼び出し 駆けつけたら…」という投書が掲載されていました。これもどうやらその手の人らしい。彼はあわれインコ先輩の餌食となりました。ご覧にならなかった向きはぜひご一読をと思います。

 その中で、ボクは「くじで外れてがっくりしている人にはテラダ長官の顔写真&サイン入りの感謝状を差し上げるという方針が登場するのでは」と申しました。われながらそれは妙策だと思うのです。司法への信頼を維持するというテラダ長官のお気持ちにもそうのではないでしょうか。そこで、僭越ながら、最高裁事務総局になり代わり、「最高裁判所長官からのごあいさつ」というタイトルの感謝状を作ってみました。地裁刑事部職員の皆さまにおかれましては、ぜひともこの感謝状をご活用いただき、裁判員に選ばれなかった市民にお渡し下さるようお薦めいたします。丁寧に懇切にお渡し下さいね。

 そう、お客様は丁寧に懇切に対応しなければならない神様です。そしてまた、お客様は結局のところ司法判断の本当の中身には関わりようのない通りすがりのお客様です。通りすがりの人たちからも非難や中傷をされないように配慮することは出前持ちとしての常識だとテラダ長官にお伝え下さい。

 急に寒くなってきました。裁判所内のブリザードはこれからますます激しく厳しくなるでしょう。皆さまのこれからの生活が実り多きものになりますよう、どうぞご自愛ください。ボクはインコのお山のてっぺんからじいーっと観察させていただきます。
草々
Print20171126-11


投稿:2017年11月26日

裁判員呼び出し 駆けつけたら…

001177これは『朝日』(11月14日)の声欄への投稿のタイトルです。

hiyokosyoumen1裁判員候補者に対する裁判所の姿勢を批判していますね。

001177千葉県に住む70歳以上になる義弟に地裁から呼び出し状がきた。「正当な理由のない不出頭は過料の対象になるかも」などと書かれていた。やりくりして2日間日をあけて出て行ったら、「70歳以上は辞退できるのを知っているか」と聞かれた。えっと思い、「知っているが司法に興味があるので来た」と答えた。事前に辞退したいと裁判所に伝えていなかったし、強い文面で日時を指定している以上、行けばやることになると思っていた。実際には選任で外され、役立ちたいという義弟の気持ちは裁判所に振り回されて終わった。年齢を言うのなら選考の段階で考慮できないのか」。そんな0011文章でした。

1-e1397901276348これは面白い。いろんなことを考えさせられるな。

hiyokosyoumen1今でも、正当な理由のない不出頭は過料の対象になるのですよね。

1-e1397901276348裁判員法にはそう書いてある。

hiyokosyoumen1でも、理由の有無にかかわらず無断で出頭しない人はものすごい数になっているのに、1人も制裁を科されていないんでしょ。

1-e1397901276348そうだ。でも、制裁しないと言い切ってしまうと不出頭者が更に増えるから、最高裁は幾ら有名無実になってもこの規定を改めるわけにはいかない。

001177やってみたいという人は今や極少です。みんなやりたくないと思っているとなると、最高裁としては何があってもこの言葉を消すわけにはいかないんでしょうね。

1-e1397901276348そういうこともあるが、この制度の本質は国民意識の改造にあるのだから、やりたい者だけの制度にするなんていう制度仕組みの本質を変えるようなことはできるわけがないのだ。

001178まね0『朝日』は、こんな人がまだいたんだという感動で投稿を掲載することにしたんでしょうね。制度推進新聞らしい。

hiyokosyoumen170歳以上は辞退できるっていうことは呼び出し状に書いてあるんじゃなかったっけ。

1-e1397901276348書いてある。この義弟という人はその説明も読んだけれど、裁判員をやってみたいと思っていたので、計画していた旅行の日程を切り上げて出頭したというのだ。

001177どうしてそんなに辞退できるんだよとしつこく言うのだ、私はやりたいんだということですね。

HP201642221そう言われても裁判所は簡単には引けない。異議も申し立てず裁判員の仕事をやり通した人から「どうして私に裁判員をさせたのだ」と国家賠償請求の訴訟を起こされたからな。

hiyokosyoumen1トラウマですか。

1-e1397901276348トラウマだかなにうまだか知らんが、最高裁は国賠事件以降、やりたくなければやらないでくれとしつこく言えと現場を指導するようになった。

hiyokosyoumen1やりたくないというのは出頭を拒否する正当な理由になったんですか。

1-e1397901276348裁判員法に出頭義務の規定がある以上、堂々とは言えないが、裁判員就任を事実上抑える方針をとっている。

hiyokosyoumen170歳以上の国民には裁判員資格がないことにするという案はないんですか。

1-e1397901276348そうするとそれは問題だという論が必ず出てくる。大体これだけ不評の制度でも支えようと言ってくれるんだから、テラダ長官なんぞ涙を流して卒倒するほどうれしい話なのだ。

hiyokosyoumen1制度構想としては、やりたくてしようがない人というのはお呼びじゃなかったんでは。インコ先輩は「どうしようかなぁと迷っている中間層が主要なターゲットだ」とか言ってませんでしたか。

1-e1397901276348そのとおりなのだが、ここまで不評と反発が続いたら、そんな原則論を言っている余裕なんてなくなってしまっている。

hiyokosyoumen1とにかく来てくれる人は誰だっていいから来てくれ、拒絶しないでくれっていう状況なんですね。

hiyokosyoumen1そんな状況なのにこの義弟さんのような人を作ってしまっちゃダメじゃないですか。

001177テラダ長官にとっては痛恨事でしょうね。

hiyokosyoumen1くじで外れてがっくりしている人にはテラダ長官の顔写真&サイン入りの感謝状を差し上げるという方針が登場するんじゃないかな。

001177面白い。裁判員候補者名簿登載通知で呼びかけるだけじゃ駄目。奇特な方へのアフターフォローもしていただかなきゃ。

hiyokosyoumen1拒絶がひどく増えて裁判員と補充裁判員の数しか残らないというような場合でなければ、選任期日にはくじ引きが行われるんですよね。

1-e1397901276348そのとおりだ。

hiyokosyoumen1そしてそのことは呼び出し状にはっきり書いてあるんですよね。

1-e1397901276348くじ引きのことは書かれている。

hiyokosyoumen1選任手続きがあると書かれていれば、この義弟さんは自分が選ばれないこともあり得ると考えていてもよかったように思うんですが。

001177呼び出し状をちゃんと読んでいなかったのかもしれませんね。

hiyokowarai1♪やりたいきもーちがままーならーぬ、さいばんのくーじはー、つめたーくはずーれー♪♫

1-e1397901276348(無視して)呼び出し状に「ほとんどの場合にくじびきという手続きがあります。あなたがどんなにやりたくても裁判員にも補充裁判員にも選ばれないことがあり得るのです。もしかするとそうなるかもしれないということを考えて、そうなっても致し方ないというおつもりでお見えください」と太文字で書くことが考えられる。

hiyoko2-1も、そんなことを書くと、旅行を取り止めたり受診日を変更したりしても全部無駄になるかもしれないぞということを事前通告するようなものですね。

001177そんな犠牲を払わなくちゃいけないのだったら裁判所に行かないことにするという人がどっと出てしまいますね。

1-e1397901276348そのとおりさ。それで出頭車は一挙に20%を割る。インコのかねての説明を使わせて貰えば、ワインの本体と澱の境界辺の微妙な層がごっそり不出頭側に言ってしまい、旅行や受診日の変更が無意味になったとしても裁判所やテラダ君を恨まないという奇特な人だけが残るのだ。

hiyokosyoumen1それはまた、制度の破綻をみんなに示してしまうことにもなりますね。

001177日頃司法に興味を持ち、裁判所から呼び出されたので万障繰り合わせて裁判所に駆けつけた人が選任されずに怒っているというそのこと自体が現在の裁判員制度のありようを象徴しているように思います。

20160517114どう取り繕ったところで制度は完全に破綻している。京都地裁の裁判員裁判で行われた青酸事件を見てみろ。裁判員は記者会見で「証人尋問などで専門用語が飛びかい、理解が追いつかず質問も浮かばなかった。素人にもわかりやすい言葉で説明してほしかった」と言ったそうだ(『京都』11月7日)。自分はよくわからないまま判断したと告白している。この事件の判決は死刑だったのだ。

001177やりたいという執念一筋で参加したり、やってもよいという程度の無責任な感覚で参加したりしている人たちがこの国の重大刑事裁判を担っている。

hiyokosyoumen1『共同』の大きな配信記事は、裁判員経験者は「被告人が共犯者と知り合った経緯を知りたいと裁判官に言ったら、明日の公判になればわかると言われた。裁判員はお客さんに過ぎず、なめられている。被告人がどんな人かもわからなかった」という裁判員経験者の言葉を紹介しています (『山梨日日』10月19日など)。

001177「裁判官が教え、裁判員が教えられる関係だった。台本どおりにやっているという感じだった」と言っている女性裁判員の声も紹介していますね。

1-e1397901276348今、最高裁が現場の裁判官に求めているのは「レールは見えないように引け、台本を裁判員に気付かせるな」だ。裁判員の意見を尊重しつつ結論を出しているというように装いながら既定の結論に上手に導いていけるかどうかで裁判官の能力を判定している。

hiyokosyoumen1これまで裁判員を経験した人は5万9000人います。この人たちはいったい今どこにいるのでしょうか。『山梨日日』は隠れキリシタンのように生きていると評する人もいると紹介していますが。

1-e1397901276348そうさ、それらのすべてが裁判員制度の終末の風景なのだよ。

923605

 

 

投稿:2017年11月23日

崩壊する司法「改革」 当時の主役たちは?

 弁護士 猪野 亨

 下記は「弁護士 猪野亨のブログ」11月18日の記事です。
インコ作成の「総統閣下は裁判員制度の失敗にお怒りです」をご紹介いただきました。

猪野弁護士のご了解の下、転載しております。

 この動画がおもしろいです。これまでに起きた司法「改革」がらみの不正や不祥事が思い起こされます。

司法制度「改革」が始まったのが2001年の司法制度改革審議会の意見書(なのでその前からは始まっているのですが)とすれば、それに日弁連やマスコミ、政府、大学関係者などがこぞって、その司法審意見書を絶賛していました。
しかし、すべての「改革」がことごとく失敗し、散々たる状況を招いていますが、未だに「反省」の声が聞こえません。
動画では、「関係者」が悲痛な面持ちになっていますが、本来、今の惨状をみたらこうならなければならないはずです。
推進した人たちには一欠片の自責の念はあるのでしょうか。
推進してきた方々へ 少しの良心でも残っているなら動画を見て反省してください。

投稿:2017年11月19日

裁判員裁判の怪 不倫した妻を殴ることは理解できる?

弁護士 猪野 亨

 下記は「弁護士 猪野亨のブログ」11月15日の記事です。
猪野弁護士のご了解の下、転載しております。

 裁判員裁判では時折、疑問符の付くような判決が出てくることがありますが、これもその1つではないでしょうか。
不倫に激高、妻を死亡させた夫に判決」(MBSニュース2017年11月13日)
「13
日の判決で大阪地裁は「抵抗しなかった被害者に対し、暴行を繰り返したことは厳しい非難を免れない」とした一方で、「被告人が激しい怒りを覚えたのは理解ができ、重大な傷害を負わせる意図はなかったとして、本間被告に対し懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡しました。」

不倫をした妻に繰り返し暴行を加え、その結果、急性硬膜下血腫などの傷害を負わせ死亡させたという事件ですが、不倫をした配偶者であろうと暴力が許されるはずもなく、その責任は重大なのですが、「被告人が激しい怒りを覚えたのは理解ができ、重大な傷害を負わせる意図はなかった」から執行猶予に結びつくのかが理解不能です。怒りを覚えることと暴力行為を結び付けるには飛躍があるからです。
「理解でき」できようができまいが暴力行為自体を正当化することはできないのですから、それが執行猶予の理由(根拠)として挙げられていることになります。
この判決を意訳すると、こんな感じになります。
不倫に対して殴ってしまったのはよくなかったけれど、不倫したやつがわるいんだしね、結果として死んでしまったのは残念だったけれど、まっ、死ぬとは思っていなかったんだから仕方ないよね

 暴力行為から死の結果が生じることは当然に予期できることであり、だから傷害致死罪という犯罪類型が規定されています。
本来であれば、頭部や腹部に繰り返し暴行を加えれば死の危険があることは明らかであり、死ぬとは思わなかったという主張(言い分)でさえ、疑問符のつくところであり、殺人という故意の有無、その立証の問題に行き着くことから、検察は傷害致死での起訴ということになるわけです(その辺りがかなり定型的に処理されていると思います。被害者側が納得できないのは、これが何故、殺人ではなく傷害致死なんですかという思いです)。
虐待する親に親としての資格なし 幼児の頭を殴って死亡させても傷害致死にしかならない怪

この事件でも同じ何故、傷害致死どまりなのかという疑問が沸きます。殴り殺したという感じなのですが。
参照
I容疑者の詳細情報!19歳の与島稜菜さんを殴打し殺害した動機とは?新橋ホステス傷害致死事件まとめ

今回の裁判員裁判の判決は、これら傷害致死を適用はしているものの、死亡の結果が生じた、しかし殺人の故意は立証できないということを前提としたものよりもさらに軽く扱うものです。
裁判員が関与しからの判決なのか、裁判官だけでも同じような判決になったのか、その裁判員の顔ぶれがわからないので断言はできませんが、裁判官だけの判決ではこうはならなかったのではないでしょうか。

1-e1397901276348インコおまけの一言
どうも「女性差別の匂いがする判決」なんだよね
。不倫も浮気も法律では「不貞行為」。
夫(男)が他の女と情を通じたって? 男が浮気するのは仕方ない、よくある話だ。
妻(女)が他の男と情を通じたって? 不倫するような女はけしからん。夫をこけにしたんだから殴られて当然。
そんな意識が根底にないか?

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投稿:2017年11月18日