トピックス

トップ > トピックス

新刊書籍紹介『さらば、裁判員制度』

『さらば、裁判員制度 -司法の混乱がもたらした悲劇(1月30日発行)
著者は新潟大学名誉教授の西野喜一先生。

帯には織田信夫弁護士の「もはや迷っている時間はない。裁判員制度に造詣の深い西野教授のこの全面的批判論を強く推薦したい。」とあります。

同書紹介文
裁判員制度。この制度を維持するために、国はあらゆる手段を講じてきた。そして2011年には、最高裁判所大法廷が裁判員制度を合憲と判断してしまったが、この判断には問題が多いと言わざるを得ない。裁判員制度施行から時間がたち、さまざまな問題が噴出してきた。この状況を見て、何を迷う必要があろうか。『裁判員制度の正体』の著者が、平易な文体で裁判員制度の問題を徹底解説し、制度の廃止を提言する。Q&A14

出版社:ミネルヴァ書房

価格:2,000円(本体)+税

ぜひ、書店で手にとってご一読を!

ここだけの話
インコは今日、本を手に入れたばかりでまだ「はしがき」しか読んでいませんが、インコのホームページのことも出てくると風の噂で聞きました。
楽しみ!

=目 次=
はしがき
序 裁判員制度の悲劇とは
第1部 裁判員制度の概要-制度の悲劇
第1章 裁判員制度はどのようにしてできたのか
第2章 裁判員制度とはどのようなものか
第Ⅱ部 「司法制度改革」の現在の姿-運用の悲劇
第3章 裁判員制度の本当の『正体』とは何か
第4章 恐怖の裁判員制度
第5章 裁判員制度に期待したそれぞれの夢と思惑
第6章 痩せる一方の制度の理念
第Ⅲ部 最高裁判所と裁判員制度-変節の悲劇
第7章 最高裁判所の変節
第8章 最高裁判所大法廷判決
第9章 疑問① そもそも憲法上国民の司法参加は可能なのか
第10章 疑問② 裁判員法は憲法に適合しているか
第11章 疑問③ 国民負担はどうなるのか
第12章 制度折哀の悲劇と裁判官全員一致の怪
第13章 裁判員制度の未解決の問題を追究する
第14章 裁判所侮辱罪との関係
終章 正義のゆくえ
あとがきに代えて-さらば、裁判員制度

カレンダー・6月

投稿:2015年1月31日

おとぎの国の裁判員物語 さぁ開幕の時です

2190 本日の公演は「おとぎの国の裁判員物語」です。客席入り口に用意しておりますイヤホンをおとり下さい。幕間にご案内をさせていただきます。

出頭拒絶に歯止めがかからない

今は昔、鸚鵡藩のお家騒動に端を発した歴史的な事件がありました。いろいろ事情があって、最近になりこの被告人は4つの罪名で起訴されたのでございます。被告人は犯罪には関わっていないと主張しているらしく、また関連の事件で死刑判決を言い渡された何人もの元被告人たちがこの裁判に証人として出廷するらしいということもあって、ずいぶんと話題になりました。

裁判員裁判が始まります。おとぎの国の首都地方裁判所で、1月8日に裁判員の選任手続が行われました。

裁判員候補者名簿から650人が抽出されました。500人でまかなうはずだったのですが、出頭を断る方々の数がどんどん増え、これでは裁判が始められないかも知れないということになりました。あわてた裁判所は、そこであと150人を追加抽出することにしたのです。合計650人です。日本の神戸地裁で今審理されている尼崎変死事件では、抽出者の数は400人だったそうですから、それより250人も多いことになります。

たった6人の正裁判員と数名の補充裁判員を選ぶのに、650人を候補者名簿から引っ張り出すというのですから、話ははじめから普通ではありませんが、おそらくこの国は財政がたいそう豊かなのでございましょう。

さて、その候補者名簿に書かれていた事情だけで出頭予定者から外された候補者が153人にもなりました。尼崎では、この「いち抜けたぁ」の幸運な人たちの数は118人でしたから、ここからもう数が違います。

地裁は残る497人に呼出状を送りました。さぁ、たいへんです。いっせいに拒絶、拒絶、拒絶の大嵐、いや土管破裂の大洪水。411人という大量の候補者が「にぃ抜けたぁ」と消えてゆきました。497人中の411人は83%です。尼崎ではここで3分の2も抜けたと騒がれたようですが、今回は衝撃的な拒絶率の高さになってしまいました。

った86人が当日出頭いたしました。650人のうちの86人ということは13%。裁判員裁判史上最低レベルの数字です。しかも、出頭したその場でもさらに23人が辞退を認められたのでございます。尼崎では選任期日当日の辞退決定者は11人でしたから、23人という人数の多さはおわかりいただけると思います。

結局、最終的に残った候補者の人数は63人でした。それは抽出者650人のなんと9.7%。尼崎では400人中の48人、12%が最後に残ったのでしたが、尼崎より審理期間が短いのに最終残留者はついに10%を割り込んでしまいました。しかも尼崎では4人だった補充裁判員がこちらは6人です。いやはやという結果だったのでございます。

裁判員候補者になったことを公にしないでください!♡1

この日に先立ち地裁から裁判員候補者に送られてきていた書類がありました。その中には、「呼出状」だの「質問票」だのいろいろな書面が入ったのですが、中でも注意を引いたのは、「裁判員候補者に選ばれた方々へ」と題する書面でした。実際この書面の冒頭に「はじめにお読みください!」とご丁寧なご案内がありました。

そして、その中には、「裁判員候補者になったことを公にしないでください!」という大きなタイトルが太字で描かれ、最後に感嘆符まで付いていたのでございます。お役所が国民に連絡する文書に感嘆符が付くのは珍しいことです。よほど必死なのでしょう。

そこに書かれていた文章の内容は次のとおりです。

裁判員候補者のプライバシーや生活の平穏を守るため、裁判員候補者になったことを公にすることは法律上禁止されています。「公にする」とは、インターネット等で公表するなど、裁判員候補者になったことを不特定多数の人が知ることのできる状態にすることをいいます。
●休暇を取ったり、相談をしたりするために会社の上司や同僚、家族に話をし、書類を見せることは全く問題ありません

太字で示したのは、原文がゴチック表示になっているのを表現しようとしたもので、他意はありません。どぎつい印象がいたしますが、文章の中身は難解です。
「不特定多数の人が知ることのできる状態」の意味がよくわかりません。「会社の上司や同僚、家族に話をし、書類を見せることは全く問題がない」と言われますが、「休暇を取ったり、相談をしたりするためなら」と限られ、それ以外の目的だと許されないと言っているようです。「相談」ならよいというのですが、どんな相談でもいいのでしょうか。

「見せることは問題がない」というのはコピーをとるのはいけないという趣旨のように言われそうです。そんな制約などしていないと言われればそのようにも思えますが、とにかくわかりにくく、そぞろ怖さを漂わせた文章です。

この書面を見た候補者の皆さんは、まず「自分に呼出状が送られてきたことは気安く周りに知らせてはいけないことらしい」と思い、「黙っているにこしたことはない」と思うようになります。この制度は公然と話すことがはばかられ、ひそひそ話さなければいけない性質の話ということになります。その書面と一緒に送られてくるのが「呼出状」です。

これが問題の赤紙「召集令状」だ099696

さて、皆さま。おとぎの国の裁判員裁判の呼出状をご紹介いたしましょう。おとぎの国ですから現実の事件や裁判とは関係ないことをお断りしておきます。
呼出状                         

「あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。あした、めんどなさいばんしますから、おいでんなさい。山ねこ 拝」のはがきは宮沢賢治の『どんぐりと山猫』の冒頭ですが、こちらはとんでもなく高飛車と言うのか、居丈高と申しますのか。まるで短銃を突きつけられているようです。

その短銃を隠すためなのでしょうか、「参加していただく」「お越しいただく」とか物腰だけは変に柔らかくしています。「別紙記載の通りから平成27年4月30日まで、裁判員(または補充裁判員)として」と言葉遣いもおかしいですね。普通は「別紙記載の通り、裁判員(または補充裁判員)として」とか「別紙記載の通り、平成27年1月16日から同年4月30日まで」と表記されるものじゃあないでしょうか。細かなことでございますが。

「正当な理由がなくこの呼出に応じないときは、10万円以下の過料に処せられることがあります」の下には太いアンダーラインが引かれています。文章からはみ出ているので下線ではなく、証明欄との境を示しているように見えます。しかし、過料への強調と取り、衝撃を受ける人が少なくありません。冗談じゃないと怒る人もいますが、恐怖に襲われる人も多いと聞きます。

「とびどぐもたないでくなさい」といかにも申し訳なさそうな山猫とは主客の転倒、天と地の違いでございます。

スケジュール表を見て、驚かないでね

呼出状の中に「別紙記載の通り」と書かれているのが、裁判員としての参加が予定されている日程になります。その「別紙」は次の内容でございます。

 スケジュール                          

さぁ、お客さま。いかがでしょう。1月16日から4月30日まで、ほぼ休みなしというスケジュール。毎日午前9時30分から午後5時までという予定です。この日程で裁判所に113日間通い続けられるのはどういう人たちなのでしょうか、毎日の公演に追われている私どもには到底想像ができません。

裁判を仕事にしている法曹の皆さんでさえこれだけ1つの事件にかかり切りになるのはたいへんなことだとお聞きします。ましてや一般の市民が、自身の日ごろの仕事を3か月半も投げ打って裁判所に通い詰めることがどうしてできるのか。この間この皆さんたちには、保育園の送り迎えも、確定申告も、年度末や年度初めの多忙も、転勤も配転もないのかしらとつい思ってしまいます。

しかもその間、80日間世界一周のように心を癒す旅行に出かけたりするのではありません。人の生死に関わる事実の判断とかそのことに関わった責任とか、それこそ極限まで神経を張り詰めすり減らす仕事に専念しなければならないのです。そういうことをやってみようというのは常識では考えられないことのように思えるのでございます。

「日本社会にとって大きな事件。審理に参加して被告の動機を知りたかった」という34歳の主婦、「外れて残念」と語った23歳の男性会社員。650人の中には少しはいらっしゃるこういう皆さんによって支えられている裁判員裁判。これが健全で常識的なものと言えるのかどうか、私にはよくわかりません。

1-e1397901276348はい、私はイヤホンでこんなお話をしているだけでどっと疲れてまいりました。このまま寝込んでしまいそうです。皆さんはいかがでしたでしょうか。それではお帰りにはイヤホンは客席出口でお返し下さり、ご機嫌よろしゅうお元気でお過ごし下さいませ。

どんぐり

投稿:2015年1月12日

裁判員にさせられたら一直線に解任をめざそう

001177「あらっごかいにんですって、おめでとうございます」なんて言葉、今年は流行るかもね。

006311009少子化対策が功を奏して? まさか…

001177かいにん違いよ。ご懐妊ではなくてご解任。

1-e1397901276348そのご解任でおめでとうが流行るって、あり得るんじゃないか。インコは、去年10月にその辺のことについて、「解任しない、します、するとき、すれば、せよ」というタイトルで危険信号というか安産信号というか、考える材料を提供したもん。

001177れについて、確かにインコさんは力作をものしているわね。解任に関する手羽先作りの表も登場していたし。にゃんこ先生も「数字を見てこの制度の危機の深まりを改めて深く感じたよ」と仰っていたわ。

お茶そうか。エヘンΣ( ̄◇ ̄) そうでしょう。

001178まね0(なんか危ない気配)そこで今回は、年の初めのおめでたいお話として、やっぱり解任の問題を取り上げてもらおうと思うの。解任問題を解明することは、裁判員制度の現状と問題点を明らかにする決定的なポイントになりますから。

admin-ajax[1]褒めていただいたので、それではもう一度、2つの表を出させてもらいましょうか。なんてったって私以外の鳥には作れないものです。

001178まね0(ったく、すぐに図に乗るんだから)

1-e13979012763481つは年々解任がどのように発生しているかをまとめた表。もう1つは全国60の裁判所で解任がどれだけ発生しているかをまとめた表です。

表1楽

表2楽しもう

1-e1397901276348まず、表1を見て下さい。裁判が始まった2009年、早くも被告人14人に1人の割合で解任事件が発生していた。それが翌10年には11人に1人の解任になった。つまり首切り事件が大きく増えた。11年は9.4人に1人、12年は9.6人に1人と続き、さてどうなるかなと思っていたら、13年には一気に7.7人に1人が解任され、去年14年にはまた増えて被告人6.7人に1人の割合で解任事件が発生した。

001177制度開始から5年間で、裁判員の首切り事件は2倍以上に増えていますね。これからもっとたいへんな状態になるのかしら。事態は今や深刻の極み。年も改まったし、今回は問題点をぐっと深掘りしてくださいね。

1-e1397901276348まず、解任の理由は何かだ。この表によれば、解任の理由のほとんどは「辞任の申立」ということになっている。しかし、辞任申立ての内容について最高裁が何と説明しているかというと、実は何も説明していない。122頁という大部の「裁判員制度実施状況の検証報告書」(2012年12月発表)だが、その中でも、解任の理由どころか解任状況の解説そのものをまったくしていない。

001181解任の数を推測させる唯一のデータは、その「検証報告書」にある「図表13 裁判員に選任された補充裁判員数」だけね。
解任表

1-e1397901276348補充裁判員が裁判員に選任されるのは裁判員がいなくなった時だけ。裁判員がいなくなるのは死んだのでもなければ解任しかない。ということで、「検証報告書」の中ではこれが事実上解任状況を推測するデータになっている。

006311009この表のどこを見ても解任という言葉は出てこないんですけど。

1-e1397901276348そうだ。どこにも出てこない。けれど、公判中に1人が解任された事例が309件あるとか、1人の被告人で3人も解任された大変な事件もあったんだなぁというように推測することができる。でも、考えれば考えるほど、推測させるだけの資料というのは変なものだ。

006311000確かに…。

1-e1397901276348しかも、補充裁判員が解任されたケースはこの表にも出てこない。補充裁判員の「裁判員選任」は正裁判員がいなくなった時しか行われない。補充裁判員のままで解任された場合はここに上がってこないからだ。

001177つまり、「検証報告書」ではそういう形でしか裁判員たちの解任の実相がわからないということ。まして解任状況の検証などと言える内容はこの報告書にどこにもないって訳。

1-e1397901276348このところ最高裁は、「やりたくない人は積極的に辞退させよ」とさかんに下知している。ということからすると、出頭者の中で解任される人たちの数は減ってよいはずなのに、解任が年々増えているのはなぜだろう。解任は減らないどころか増えている。そのココロは制度の嫌われ度の高まりが最高裁の緊急指示効果の上を行っているからだ。最高裁の指示は、事態の深刻化を前に完全に空回りしている。

006311000最高裁の思いはいつも国民の前でからから回り♪

焦るまあ、よくそんな昔の歌を知っていること。

1-e1397901276348話を「辞任の分析」に戻そう。インコが別の最高裁情報から引っ張り出した資料などを元に作ったのが冒頭の表1だ。そこでも最高裁は、辞任申立ての内容や解任の実情について何の説明もしていない。裁判員裁判の実施状況を知らせると銘打ってるんだぜ。「辞任の分析」が最重要ポイントってことは誰の目にも明らかでしょ。

001177つまり、最高裁は、どうでもよい図表をごちゃごちゃ載せて大事なことを陰に隠しているって訳ね。

1-e1397901276348裁判員法44条を見てほしい。辞任の申立てにより解任されるのはものすごく限られた場合だけだと決めている。「裁判員の選任前に申し立てていれば辞退できたはずの事実がたまたま裁判員選任決定後に発生したこと」「そしてその事実のために今後裁判員や補充裁判員の職務を行うことが難しくなっていること」が絶対の前提条件なのだ。

001177はい、みなさんご承知のように、裁判員法16条は、70歳以上、議員、学生生徒、過去一定期間に裁判員等をやったことがある者だとか、重い疾病や傷害で出頭困難な者などに辞退事由を厳しく絞り込んでいます。

1-e1397901276348そう、だからもしそういう事情が選任前に発生してたんだったら、そのことをその時に言わない方がおかしい。そのような事情が選任後に発生するなんてこと自体、ちょっとやそっとでは考えられないという話だ。

001181しかし、現実を見れば、裁判員裁判開始後昨年8月までの5年間に、09年8月以降に9人、10年に123人、11年に154人、12年に137人、13年に162人、14年8月までに107人、つごう692人の裁判員が、辞任の申立てがあったことを理由にバッサリ解任されていますね。

006311000その数実に692人に及ぶってことっすね。

1-e1397901276348付け加えたいことがある。692人というのは「辞任を申し立てた人」の数ではない。辞任の申し立てがあったということで「裁判所によって解任された人」の数なのだ。つまり、辞任を申し立てたけれども解任して貰えなかった人はこの中に入っていない。実際に辞任を申し立てた人の数は解任された人の数を大きく上回るはずだ。

001178まね0でも、最高裁は解任理由の詳細はおろか、辞任申立者の数さえ発表していません。何から何まで隠しっぱなし。

1-e1397901276348辞任申立ての内容や解任の実情は本当のところどうなっているのか。最高裁はどうして実情を明らかにしないのか。裁判員や補充裁判員に選任された人たちが裁判の途中で辞めてしまうというのは考えて見ればたいへんなことだ。この国の裁判官が5年間で692人も辞めてしまったら、この国の司法ははっきり言って崩壊だよ。

006311000確かに…。

1-e1397901276348裁判員の職務を考える上で、解任の理由をきちんと解明するのは不可欠のことだ。最高裁が、裁判員裁判を今でも本気で定着させようと思うのなら、裁判員たちの解任がやむを得ない措置だったことをちゃんと分析し、その結論を公表して全裁判所の共通の理解にする必要がある。それだけではない、確かな刑事裁判のためには次のことを踏まえてほしいと国民に発信して、その理解を得ようとするはずだ。

006311000分析しているんでしょうか。

1-e1397901276348徹底的にやっているはずだ。やらない訳にはいかない。しかしその結果は絶対に公表しない。ここまで不評では、そしてここまで反発を買っていては、公表などできるはずもない。

001177今や国民に知らせる訳にはいかない話になったって訳ね。裁判員制度の破綻はそこまで来ているってこと。

1-e1397901276348表2を見てほしい。解任の傾向は一部の裁判所に限られず、全国の地裁に広がっている。裁判員裁判が1番少なかった鳥取地裁でも2番手の松江地裁でも解任事件が発生している。東京地裁に至っては87人、千葉地裁でも78人、大阪地裁でも75人と、大規模裁判所で解任された裁判員たちの数はべらぼうな数に上る。

006311000最高裁は何を秘密にしようとしているのですか。

1-e1397901276348確信をもってその答えを指摘しよう。裁判員や補充裁判員として法壇に立つ人たちの中にこんなことをやってらんないと考える人が非常に多くいるから、そしてその数が年々どんどん増加しているからだ。
評議の場でやめたいと言い出す人もいる。明日は裁判所に来ないと漏らす人もいる。何の連絡もせずに来なくなってしまう人もいる。発言を裁判長にとがめられて参加意欲を失う人もいるだろう。

001177でも、そういう人たちは、「辞退事由が後に発覚した人」にあたりません。解任事由を厳しく絞り込んだ結果、辞退をしたいと思う人たちの具体的な態度行動はほとんど解任事由にあてはまらくなっていますね。

006311000辞めたいと言っても「ダメです」と言われるだけってことっすね。

001177それが裁判員法の下で裁判所が裁判員たちに要求する基準でした。しかし、現実にはそれではやれません。建前と現実の途方もない乖離。それが最高裁が真実を公表できない理由ですね。

1-e1397901276348最高裁は裁判員法の建前では解任理由にあたらないたくさんの人たちを実際にはどんどん解任している。何と言ってもやらせるなんて裁判長が言ってごらん。途端に現場は崩壊さ。だから何が何でも恰好をつけて解任手続きをやってしまう。

006311000裁判長も本当は心砕くのは審理の中身だけにしたいだろうに。

1-e1397901276348表1をもう1度見てほしい。ついでに言わせてもらうが、5年間で合計181人もいるという「宣誓拒否・出頭義務違反・欠格事由等・進行妨害」によって解任された人たちはいったい何をしたっていうんだろう。その実情を明らかにすることも解任状況を解明する上で欠かせないとインコは思う。

006311000うわっ。それめっちゃ知りたい。

パンチ議の秘密を明らかにすることはできないと言うのだったら、インコは言う。「そうですか。国民はあなたたちがそういう態度とるのだから、裁判員裁判廃止の声を揺るぎないものにするのですよ」と。

 

辞められない 辞めさせない 辞めさせたくない君001181
いろんな言葉で君に参加を要請してきたけれども
終わりさ みんな終わりさ 最高裁のひとりよがり
制度推進の要の糸は 今プツリと切れた
Oh 裁判員 国民参加を叫ぶ 最高裁はせつないよ
やりたくない思いの前で カラカラから回り
Oh 裁判員 制度推進を叫ぶ 最高裁はかなしいよ
だから廃止のドアを ノックしないで
ノックしないで ノックしないで

嫌いかい 嫌いなんだね こんな制度のこと
人を裁くことが そんなにイヤだったとはね
ずるいよ 君はずるいよ インコの言うことと
最高裁を比べていたとは  冗談のひとつにもなりゃしない
Oh 裁判員 国民参加を叫ぶ 最高裁はせつないよ
やりたくない思いの前で カラカラから回り
Oh 裁判員 制度推進を叫ぶ 最高裁はかなしいよ歌2
だから廃止のドアを ノックしようよ
ノックしようよ ノックしようよ

 

 

投稿:2015年1月7日

登録除外と呼出取消の要請行動を-第3篇

実際の事件を通して裁判員不参加(拒絶)の現状を知ってもらい(第1篇)、裁判員選任の一般的な手順に即して裁判員不参加(拒絶)の行動を提案させていただき(第2篇)、そして、インコ渾身の「登録除外と呼出取消の要請行動を」はついに第3篇に入る! あなたはとうとうここまで来た! あなたはここに来る運命にあったのだ! インコはそれをとうに見通していた。なんちゃってね。

この篇では、「裁判員候補者名簿からの除外を求める要請書」と「裁判員呼出の取消を求める要請書」の書き方を指南しちゃいます。住所と氏名などを書くだけでOKの要請書のダウンロードもできちゃいます。書き方の約束なんてものはないけど、最高裁にやらせると変なものを作っちゃうから(作るわけないか)、インコが基本フォーマットを作成して進ぜようと思うのだ(なんか偉そうって? とにかく聞いてくださいよ)。

「裁判員候補者名簿からの除外を求める要請書」

裁判員候補者名簿からの除外を求める要請書のダウンロード

書き方を知る前提として、除外を求める意味を押さえてね。

最高裁が前年末頃までに地裁に送ってくる裁判員候補者名簿には、各候補者からの「調査票」返信の記載内容が転記されている。あなたが「調査票」を返送していれば、自分は警察官をしているとか、何月は仕事上の事情でダメとか、書き込んだことが記されている。あなたが裁判員は絶対にやらないと書いていたならどうなるか。それも書かれている可能性はあるが、確かなことはわからない。

だから、あなたが「調査票」にどのように返事を書いていたかは関係なく、この「要請書」で名簿からの除外を求める。そうすると地裁は、あなたのところに「除外要請書」送付者と記録する。これは実際の裁判員裁判が始まる前のこと。この段階でここまで対応しておくことが大切。 

時が経ち具体的な事件の審理が始まる段階になると、地裁の裁判官と職員は、先の候補者名簿から無作為に150人とか200人とかをまず選ぶ(その人数は事件の内容性質などを踏まえて地裁が決める)。 

その名簿中に書かれている「70歳以上で辞退希望」とか「前年に裁判員か補充裁判員をやったことがある」とか「来年は一年中学生や生徒」とか「来年は一年中重い病気やケガで裁判に参加できない」とかの障害事由を一つひとつチェックし、外すべきと判断した候補者を外してゆく。これがインコの言う「名簿からの除外」。

「具体的な事件の審理が始まる時が来たら裁判員候補から必ず外してほしいと事前にきつく申し入れておく」という牽制の先行行動。

最高裁に「調査票」を返した時に削除や拒否の意思表示をしている人もこれを出すべきだというのはどうしてか。返信していても確実に地裁に伝達されているかどうかわからない。念のためという言葉もある。で、みんなそろって「削除要請書」を送ろうということ。

「裁判員呼出の取消を求める要請書」

裁判員呼出の取消を求める要請書のダウンロード

こちらについても、取消を求める意味を簡単に確認ね。

最高裁はこう言っている。「大半の辞退者は書面での回答によって呼出し自体が免除されている上、その割合は徐々に増加しており、現行の選任手続が全体として国民の負担軽減の上で大きな機能を果たしているということができよう」って。インコのお里ではこういう言い方を負け惜しみと言うんだけれど、とにかく三宅坂辺りは「物は言いよう」の世界。

彼らは、「選任期日前の出頭免除が活発に行われ国民の負担を軽くしている、そして最近その傾向がいっそう強まっている」と自讃する。ま、いいことだねぇ。私たちはその傾向をもっと加速させ、最高裁にはもっともっと自讃してもらいましょう。

呼出を取り消すというのは召集令状の発布を正式に撤回すること。呼出の取消を要請するというのは正式撤回を要求すること。要請が通れば、地裁から「呼出取消通知書」が送られてくる。バンザイ\(^◇^)/ それは裁判員を務める考えがないというあなたの挑戦に裁判所が屈したことを示す「降伏文書」だもんね。

10万円過料の脅しの破産を意味する「呼出取消通知書」は、価値の高い「闘いの記録」d( ̄◇ ̄)b グッ♪ 家族にはもちろん、周囲の友人知人にも「通知書」を見せまくってね。呼出取消要請書の手元控えも一緒に紹介して、「やりたくなければこういうこともできる」と、あなたの経験を何倍、何十倍に広げて下さい。ツイッターやフェィスブック、ブログにホームページなどなどにアップしていただき、それがどんどん拡散されていくとインコもっと嬉しい(≧∀≦)♪

呼出取消要請書を送ったのに呼出状がきたらどうするか? インコは、選任期日には出頭しない無視黙殺方針を提案! その理由は、最高裁が「(無視黙殺組が増える)動向を十分に注視していく必要がある」と懸念しているから。「現状では運営に支障が生じるレベルではないが」などとわざわざ断り書きをしているところ、かえって強い焦りを感じさせるけど、はっきり言えるのは、無視黙殺組が増えると最高裁は地裁に対し事前取消を強く勧めることになること。無視黙殺方針は事前取消の翼じゃなかった扉を大きく広げるのだ。

どうしても裁判所に出頭して拒絶を言いたいという方は、選任期日には必ず呼出取消申請書を持参して、「このとおり呼出の取消を求めたのに私の要請を無視して呼び出した」と抗議する姿勢が大切。選任期日の拒絶を祈る。頑張ってくださいd( ̄◇ ̄)b グッ♪☆

要請書を書く上でのご注意

書き方に難しいことはないが、簡単に説明します。サンプル書面に番号をつけるので、それを参照してね。なお、①~⑦は両書面共通、⑧以下は別々になります。

除外要請取消要請① あなたの住所地の地方裁判所の名前を書く。裁判所名は、昨年11月に送られてきた封筒中の「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」に書かれている。この封筒の表には「最高裁判所」と大書されていたが、実は発信人は地方裁判所だったのだ。この「権威主義の脅し根性」が許せない。「お知らせ」なんてもう捨てちゃったって? 気持ちはわかります。ではネットで調べてね。地方裁判所は1都府県に1つずつ、ただし北海道だけは札幌、函館、旭川、釧路の4つがある。

② 支部で裁判員裁判をやるところは、東京地裁立川支部、横浜の小田原、静岡の沼津と浜松、長野の松本、大阪の堺、神戸の姫路、名古屋の岡崎、福岡の小倉、そして福島の郡山のつごう10か所。ご自身のご住所によって地方裁判所本庁(本店のこと)でやるのか支部でやるのか分かれるので、「捨てました」派の皆さんはわからなければ地方裁判所に電話して確認を。「裁判員になるかも知れないので教えて下さい」と言ってね。信じられないくらい丁重に説明してくれるよ。それも彼らが窮地に追い込まれていることの証拠。なお、書面を送るのだから、地方裁判所の住所を聞くのももちろん忘れないように。

③④ 投函する日にち。

⑤⑥  昨秋送られてきた「お知らせ」に記載されていた住所・氏名を書かないと裁判所から確認の問い合わせが来ることが考えられる。煩わしいことは避けたいのでなるべくきちんと確認して書いてね。「お知らせ」がなければ現在の住所・氏名を書く。なお、印鑑は認め印で大丈夫。

⑦ 「お知らせ」のあなたの名前の下にバーコードがあり、その下側に数字が印刷されている。地方裁判所の職員はこれであなたを特定する。これも書き込んでおくと混乱防止になる。「マイナンバーは反対だ」という方や「捨てました」派の皆さんは何も書かずに送ろう。

左⑧ 地方裁判所に対するあなたの警告。これを送ったのに呼出状が来たら、必ずはっきり抗議した上で、「呼出の取消」を要請しよう。

左⑨ 名簿からの除外を求めるあなたの考えや気持ちを補足して書くスペース。イヤだからイヤという明快な答え方もよいけど、詳しく書きたい方は遠慮せず深い思いを書いて下さい。用紙を追加してももちろんOK。

左⑩ 書いた書面は後の証拠になるので、コピーをとってね。

左⑪ 封筒には地方裁判所の住所を書き、宛名は住所地によって「○○地方裁判所刑事部裁判員担当係」とか「○○地方裁判所○○支部刑事部裁判員担当係」にしてね。確実な配達のためには「配達証明郵便」が望ましいけど費用がかさむ。「普通郵便」で送るんだったら封筒もコピーを。

右⑧⑨ 呼び出されている選任期日の月日を書く。

右⑩ 地方裁判所に対するあなたの警告。万一無視黙殺されて呼出状が来てしまったら、今度は呼出状を無視黙殺!

左⑪ 呼出の取消を求めるあなたの考えや気持ちを補足して書くスペース。イヤだからイヤという明快な答え方もよいけど、詳しく書きたい方は遠慮せず深い思いを書いて下さい。用紙を追加してももちろんOK。

左⑫ 書いた書面は後の証拠になるので、コピーを。

左⑬ 封筒には地方裁判所の住所を書き、宛名は住所地によって「○○地方裁判所刑事部裁判員担当係」とか「○○地方裁判所○○支部刑事部裁判員担当係」にしてね。確実な配達のためには「配達証明郵便」が望ましいけど費用がかさむ。「普通郵便」で送るんだったら封筒もコピーを。

要請書のダウンロードを! そして嵐の拡散を!!

相手はリングの上にやっと立っているフラフラ状態。この2つの要請書を全国各地の地裁に集中して送ることは、裁判員制度の横っ腹に加える確実なボディーブローになる。いや、アッパーカットと言った方がよいかも知れない。
インコは心あるすべての国民に提案します。2つの要請書を思い切って使って下さい。とんで とんで とんで…、まわって まわって まわって…とかいう唄があったけど、これは使って 使って 使いまくって下さい。SNSなども活用してどんどん拡散してね。

そして、声を大にして言いたいのは、自分が出頭を免れただけでは問題は決して終わらないということ。出頭拒否の先に制度の廃止を展望しなければ、後の人たちが苦しむだけに終わる。

裁判員候補者名簿からの除外を求める要請書のダウンロード

 裁判員呼出の取消を求める要請書のダウンロード

鍋談義1
宣言

投稿:2015年1月4日

登録除外と呼出取消の要請行動を-第2篇

引っ張ったんでもなんでもないぞ。これだけのことを発表するには、あれだけの前置きが絶対に必要だったんだよ。第1篇では、実際の事件を取り上げて、裁判員不参加(拒絶)の現状を知ってもらった。第2篇では、裁判員選任の一般的な手順に即して、裁判員不参加(拒絶)の具体的な行動方針を提案させていただく。

参考資料として、最高裁事務総局が2012年12月に発表した「裁判員裁判実施状況の検証報告書」の添付資料「図表4 裁判員選任手続きの流れ」(下図)も紹介させてもらう。図中、選任決定への流れを示す下向きの矢印表示は、実際には手続きが進むと幅が極端に細くなる(「辞退等」に流れる方がずっと太くなる)のだが、そんなに細く描かないところはあざといなぁ。それにしても先に行くに従って色がどんどん濃くなってゆくのは「やりたいと強く思う人」が増えていくってことか。ワインの底にたまる澱を思ってしまうよ。

なお、以下の説明の中で「最高裁が……と言っている」という時は、特に断らない限りこの検証報告書の中でそのように解説されているということ。よろしく。

図表4

就任拒絶に向けた怒濤の進撃が始まった

はじめに一言。インコは「辞退」という言葉が非常に気になる。はっきり言ってこの言葉を使いたくない。裁判員法にもこの図表の中にも「辞退」が頻繁に登場するが、「辞退」とは「へりくだって引き下がること」(広辞苑)だ。「勲位受章を辞退する」などと使ったりする。下々(しもじも)の者が上位の者にへつらい、恐れ入りますが遠慮させていただきますという時の言葉。裁判員制度は参政権に類似する主権者の権利のようなものなどという解説の嘘っぽさを強く感じさせるね。という訳で、以下は、特に「辞退」と言わなければならない場合以外は、主権者らしく「拒絶」という表現にさせてもらう。

本論に戻ろう。候補者就任の拒絶は実際には次のように行われている。

① 裁判員候補者名簿に名前が載ったという通知が最高裁から届いた時に返送する「調査票への回答」の中で多くの人たちが拒絶すると回答して候補者から除外されている。尼崎事件で言えば、118人中のおそらく大多数の皆さんがそれだ。この後も尼崎事件の数字を紹介してゆく。〔最高裁作成図表4で言えば、「調査票により辞退等が認められた人」にあたる〕

② 具体的な裁判日程が決まり、地裁が候補者を呼び出す。赤紙召集令状だ。その時に候補者が地裁に返送する「質問票への回答」の中で多くの人たちが拒絶を通知し、候補者から除外されている。呼出取消の通知をゲットして勝利の鐘がカランカランと鳴り響く。尼崎事件で言えば、282人中190人の仲間に入る。〔図表4中の「質問票により辞退等が認められた人」〕

③  「転居先不明者ら」の判定に入るように工夫を凝らす人もいる。これも大事なところ。92人中の16人に勝利の女神がにっこりほほえむ。〔図表4中には「転居先不明者ら」に対する措置の説明がない〕

④  拒絶回答をしないと当日裁判所に連行されるのか? 「裁判員 出頭しなけりゃ 被告人」なんてことは絶対にない。制度開始以来、不出頭で処罰された者は1人もいない。残った76人中に無視黙殺を決め込んだ人が17人もいるのだ。〔図表4中には無視黙殺者に関する説明がない〕そりゃ、書けんわな。

⑤  選任期日が来た~。一応は裁判所に出かけて行き、決意を込めて裁判長に「自分は絶対にやりたくない」と言おうと思う人もいるだろう。この場でももちろん拒絶できる。実際、少なくない候補者が拒絶に成功している。尼崎で言えば59人中の11人。女神はんは、「あんた、ようがんばりなはった」ってウィンクしてくれるかも知れない。

⑥ これで結局、不選任率は400分の352、比率で言えば88%に達する。不選任の中には職業上選任されない人もいるが、大半は拒絶だぁ、そう拒絶の嵐、怒濤の進撃。

裁判所はあなたの拒絶要求を待っている?109776

ここで話は大きく変わる。ボロボロこぼれるように抜けているというか、抜けていける構造になっていることに驚く皆さん。実は、最高裁は、我が選任期日の出席率は諸外国の陪審裁判の選任期日の出席率に比べてかなり高いと自慢していることを知っているだろうか。

こんなこと言ってるのだ。「(裁判員選任期日の出席率が高い理由は)裁判員候補者の負担が過重とならないように、書面による辞退という制度を設け、その運用を柔軟に行うこととした点にある」と。やりたくない人を期日前に除外している我が国は、当日の「勝手欠席」が外国よりはるかに少ないと言う訳だ。そら結構なことでんなぁテラダはん。

尼崎事件で言えば、もともとの400人から、純米大吟醸並に削りに削って76人まで絞っておいた結果、選任期日にはなんと59人もの「たくさんの人たち」(!)が裁判所に来てくれた。76人中の59人だから出席率は77.6%だァなんて解説するんだよ。

そういえば、最高裁も裁判員制度合憲判決(2011年11月16日)の中で、「辞退を広範に認めているから苦役の禁止にあたらない」ように言ってたし、福島地裁の外傷性ストレス障害判決(2014年9月30日)も同じような言い方をしていた。「苦役の強制」と批判されている手前、広く辞退を認めざるを得なくなっているんだ。

もともと裁判員法は辞退できる場合を厳しく制限していたが、制度実施の準備段階以来、この制度は国民から徹底的に批判された。そして、時の経過とともに嫌われ度がどんどん高まった。その経過の中で、政府・最高裁は、「嫌がる者は来なくてよい、やってもいいと思う者にこの制度を支えさせるしかない」というサバイバル方針を打ち出した。それは追い詰められ断崖絶壁に立たされた末の窮余の策だった。

ま、簡単に言えばそういう経過がある。そこで、インコは提案する。やりたくない者は早い時期からやりたくないと裁判所に拒絶意思を伝え(ここは丁寧に「お伝えし」と言ってあげよう)、早期に裁判員候補者から外させ(「外すことに協力し」)、嫌がる人を選任期日までに徹底的に振り落とす(「出席率を高めることに協力する」)のだ。

選任期日以降の手間も何かと省かせることにもなる。やりたい人ばっかり集まるから感謝状など出す必要もなくなる。そう、感謝状はインコがもらうことになるかも知れない。とにかく出席率は今よりずっと上がり、諸外国よりさらに高くなる。これで最高裁事務総局の鼻も高くなることは請け合いだ。

インコ提案の第1は「登録除外の要請」104861

インコの具体的な提案の第1は、自分の住所地の地裁に「裁判員候補者名簿から自分の名前を削除してくれ」と要請することだ。

裁判員候補者から最高裁に返信されてきた「調査票」は、毎年11月末頃までに民間業者(昨年は共同印刷)の手にわたり、そこで辞任理由の区分けなどが行われ、年末頃までに全国の地裁に送られる。地裁はその名簿をもとに2月以降の裁判員裁判をにらんだ候補者選定準備に入る。

あなたが候補者名簿記載の通知を受け取ったのなら、名簿から自分の名前を削除してほしいと地裁に要請しよう。「調査票」に回答しなかったって? それでもよい。どんどん削除を求めよう。

だいたい、「調査票」は辞退できる場合を裁判員法の規定以上に絞り込んでいる。「裁判員を務める考えがない」などと書き込む欄も用意していない。それでもどこかの隙間に書き込むつわものもいるんだなぁ。実際、尼崎事件では、この「調査票」への回答を見ただけで29.5パーセントの候補者が外されていることを前に述べた。10人中3人がここで外されるんだ。

「調査票」の回答欄には、「重い病気又はケガ」という欄がある。ここに印を付けて返す人が驚くほどたくさんいる。その多くは本当は裁判員を務めたくない人たちなんだろうね。この際、裁判員を務める考えがないと正面から訴えよう。思いの丈を書き綴ろう。この人は絶対にやる考えがないなと思われれば、地裁の職員は静かにあなたの名前を候補者から外す。なんてったって、外傷性ストレス国賠訴訟で、現場は「無理強い厳禁」でぴりぴりしているんだ。

これだけ厭だと言われているのに無理強いして裁判員をやらせれば、その人の身体や生活にたいへんな苦痛・苦労を生じさせ、その全責任を裁判所が負なければならなくなるかも知れない。そう思えば、裁判所としては「これは外しておいた方がよさそうだ」と考えるようになる。

提案の第2は「呼出取消の要請」気球

裁判員裁判が始まることになり、地裁から選任期日への出頭を求める呼出状が来た時には、ただちに、自分は裁判員を務める考えがないことを伝え、呼出の取消を求めよう。あなたが候補者名簿からの除外を要請していたとしても、その要請をしていなかったとしても、この行動をとろう(前者だったら怒りを倍返しにして取消を要求するだけのことだ)

送られてくるのは、選任期日の年月日と呼出時刻が書かれた赤紙召集令状だ。「正当な理由がなくこの呼出に応じないときは、10万円以下の過料に処せられることがあります」なんて書かれている。同封の「質問票」にも「裁判員を務める考えがない」などと書き込む欄がない。しかし、やりたくない人はやりたくないとはっきり書く必要がある。

この提案は、呼出状に対して拒絶の意思を明確に示そうということ。欄がないなら自分が欄を作るのだと言ってもよい。尼崎事件の例をまた引くが、282人中190人について拒絶意思が受け入れられていることを思い起こそう。やりたくないという意思を明確に示すことは、その後のあなたの思いと行動を青空のようにすっきりさせる。

やりたくない理由もできるだけ書こう。登録除外の要請を出していたのに呼出状が届いた場合には(そのような場合は極めて少ないと思われるが)、なぜ除外しなかったのかと厳しく批判しよう。

呼出を取り消すと「呼出取消通知」が送られてくる。送られてきたらすべては終了。送られてこなかったら? その時は出頭すると決める必要はない。尼崎には無視黙殺組が76人中17人もいたでしょ。よくよく考えるにしくはない。

やることや注意することはまだまだある。

「転居先不明」の応答の中には、呼び出されて困り切っている家族を思いやり、「あいつはここんとこ、どこに行っちまったかわかんねぇ」なんていう「親心いっぱいの弁明」を編み出す家族もあるだろう。にわか病人やにわかケガ人も出そうだ。調査票と違って、質問票は嘘を書くと処罰されることがある。「嘘を書いて処罰された人がいた」と聞いたことはないが、ここは正面突破の正攻法をお勧めしたい。

大切なことは、やりたくなければ裁判所には出頭しないということだ。正当な理由がないと処罰かもと言われるが、そもそも正当な理由ってなんなんだというところをもう一度考えよう。「当日、出頭しようとしたら寒気がした。風邪を引いたのかも知れない。他の人にはともかく、裁判所のみなさんにうつしては大変だと思い欠席した」っていうのも正当な理由だしね。なんてったって「命あっての物種」。ストレス障害になりたい人はあまりいないだろう。そして何度も言うように、不出頭で処罰された人はこの国に1人もいないのだ。

どうしても裁判所に出かけてゆき、そこで拒絶を訴えたいというのなら、その腹をしっかりと固め、何と何を言うか、きちんと頭を整理しておきたいね。と言うわけで、どちらもどっちも、すみからすみまでずずいーっと、グッドラック!

えっえっえっ!? 削除や取消の要請書って言っても書き方がわからないって?
へっへっへっ。そこよそこ。それが第3篇なのよ。さぁ、読む気になったでしょ  A^◇^;)

初湯

投稿:2015年1月3日

登録除外と呼出取消の要求行動を-第1篇

006311000あけましておめでとうございます。お年玉1

001177おめでとうございます。はい、お年玉。

1-e1397901276348インコには?

001178まね0ありません! それより、インコさんはみなさんに大事なお話しがあるでしょう。元旦に信念のご挨拶を申し上げた際の宣言「『いやだ』の思いから『やめろ』の行動へ」の具体的な提案をするという…

1-e1397901276348はいはい。でも、提案発表の前に実際の事件を取り上げて、登録除外と呼出取消の要求のきっかけになるポイントを理解してもらいます。取り上げるのは、2012年10月に発覚した連続変死事件。

001177新年早々ご紹介するには何とも気が引ける悲惨な事件ですが、裁判員裁判にはそのようなお話ししかないのですみません…。ではご指名はございませんが恒例ですので、私が事件の概略を説明しましょう。
1987年頃に一連の「犯罪」が始まったとされ、8人が死亡し3人が行方不明になった尼崎連続変死事件と呼ばれる事件。大きな特徴は、捜査の対象になった人の数が17名と非常に多く、中には被害者の子どもや姉妹などといった身近な親族も含まれていること。事件の主犯格とされるMは勾留中に自殺しています(当時64)。
さて、インコさんが取り上げようとしているのは、Mの次男で2人に対する殺人などの罪に問われたY被告人(27)の公判ですね。

1-e1397901276348検察は、Y被告人が男性(51)を崖から飛び降りさせて殺害、事故死を装って保険金を詐取し、また義姉(同26)を自宅の物置などに監禁し、飲食や睡眠を制限するなどして殺害したと主張。これに対して被告人側は、前者については自殺をほう助しただけだと殺害を否認、後者についても傷害致死に当たるだけでしかも実行行為に加わってもいないとしてやはり殺害を否認。

006311000これって典型的な否認事件ですよね。

1-e1397901276348う。ちなみに、被告人が容疑(公訴事実) を否認する事件の割合は全体の40%程度。また、2人を殺害すると死刑求刑の可能性が高くなるというのが一般的な相場。Y被告人に対しても、検察は死刑を求刑する可能性が高いとみられている。

001177Y被告人の公判は昨年11月19日に始まり、判決は今年3月18日と予定されています。裁判員の在任期間は130日を超え、過去最長になる見込みです。

1-e1397901276348裁判員裁判のために選任される裁判員の数は6人。補充裁判員の基本は2人だが、長期化が予想されるケースでは3、4人に増やすことがある。この事件について、神戸地裁は、最高裁から送られてきた裁判員候補者名簿の中から選んだ400人のうち282人に出頭を求めた。

001181ということは、地裁は名簿を見ただけで118人つまり29.5%の候補者を出頭要請の対象者から外したということね。

1-e1397901276348はい、名簿をにらんだだけで3割が外されているというところが第1のポイント。

006311000…名簿をにらんだだけで何かわかるのかなぁ。

1-e1397901276348出頭を求めた282人の運命を追跡しよう。地裁は選任期日到来前になんと190人もの大量辞退を認めた。辞退要請をしてきた候補者の数は発表されていないが、地裁が出頭を求めた者の67.4%、対象者の3分の2以上が「兵役」を免除されたところが決定的な第2のポイント。なお、「辞退」という言葉については、第2篇で一言言わせてもらいます。

006311000残った92人の運命やいかに…

1-e1397901276348それが、地裁はそのうち76人にしか呼出状を送っていないのだ。

00631100016人はどうして消えたのですか。

1-e1397901276348地裁は「転居先不明者ら」としか説明していないが、その正体は不明だ。極めて怪しげな話だね。

006311009でも転居先が不明なら仕方ないんじゃ…

怒り違う。候補者名簿は半年かせいぜいで1年前の選挙人名簿に基づいて選ばれている、ということになっている。直近の候補者名簿から無作為に選ばれた92人の2割近くがどこに行ったのかもうわからなくなっちゃったなんて絶対にあり得ない話。「転居先不明者ら」の「転居先不明者」の意味も「ら」の付け加えもくせ者なんだね。ここも重要な第3のポイント。

001177で、地裁は76人を呼び出したの。だけど選任期日当日の出頭者は59人。ということは、その差17人は音無の構えのまま選任期日に出頭しなかったということね。

1-e1397901276348そう、それまで「うんともはぁとも言ってこなかった」から、地裁は選任期日にはいそいそと来てくれるかなぁって期待していたのに、無視されたというか黙殺されたというか、なんの反応もなく選任期日に来なかった「冷た~い」17人、約4分の1。これも重要な第4のポイント。

001177千早来ぬ 神代もいやと 裁判は 来てくれないに みな困るとは

1-e1397901276348さぁ、この59人。武者震いの勇士たちと言ってあげたいところだが、違うんだなぁ。過料10万円におびえ震えながらきた人や、例の最高裁マンガで選任期日に裁判長に訴えろなんて言われて「直訴」しに来ただけの人たちもこの中にいるんだ。

006311000裁判官に直接訴えるんだから、これがホントの直訴だぁ。

1-e1397901276348直訴者の数は発表されていないけれど、結局この日に辞退が認められた人は11人もいたという。出頭者の18.6%。軍艦に乗るところで戦線離脱が認められた波打ち際厭戦兵が2割弱もいるということ。これも重要な第5のポイント。

001177呼び出しに つれなく応えし 断りの 声聞くほどに 憂きものはなし

1-e1397901276348こうして最後まで残った48人の中から6人の裁判員と4人の補充裁判員が選ばれた。
整理しよう。候補者名簿400人→名簿にらんで282人→事前辞退で92人→意味不明で76人→無視黙殺されて59人→直前離脱で48人。不選任率は400分の352、実に88%。

00117788%ですか。尼崎連続変死裁判の裁判員拒否率は、「『やりたくない』が85%」という最高裁調査結果を明らかに超えましたね。これが最近の超長期裁判員裁判のリアル。

1-e1397901276348そう、『みんないやがって、みんないい』の世界に完全突入なのだ。

006311000さぁ、いよいよ先輩提起「登録除外と呼出取消のインコ提案」の発表ですよね?

1-e1397901276348せかさない、せかさない。まずは自分でよく考えてご覧。

006311009じゃあヒントください。

admin-ajax[1]今日、重要なポイントって言ったでしょ、その節目節目で行動を起こすのさ。ま、少し研究してくれたまえ。

読書うさぎ(やれやれ、出来の悪い新春テレビ番組みたいに引っ張ること…)

 

初夢

 

投稿:2015年1月2日

新春を迎え、インコ信念のご挨拶を申し上げまする

めでたいです。何がめでたいのかって? そりゃ、裁判員制度の破綻がいよいよ大詰めに来て、惨状がもう4乗くらいになっていることでんがな。「やめるのは今でしょ」も裁判員裁判のこと、「ダメよ~ダメダメ」も裁判員制度のこと。「何から何まで真っ暗闇よ」も…、こりゃちょっと古かったか。ま、いいとしてよ、元旦なんだから。109340

今年初春のインコの宣言は、「『いやだ』の思いから
『やめろ』の行動へ」です。
裁判員裁判が始まって6回目のお正月。裁判員候補者の出頭率はいよいよ大暴落。出頭率っていうのは、「裁判員候補者名簿に記載された者の数」に対する「選任手続期日に出席した候補者の数」の比率のこと。実施年にもう40.3%という低さでした。それが3年後の12年には30.6%と10ポイント近くも落ちた。それがそれが昨年9月末にはとうとう27.4%まで落ち込んじゃった。

選任期日に出頭したっていっても、そのみんなが裁判員をやってもいいって言っているんじゃないんだからね。最高10万円の過料の脅しもあって泣く泣く出かけて行った人とか、やりたくないって直接裁判官に訴える覚悟で出かけて行った人とか、そんな人たちを含んでの27.4%なんだ。ひでぇもんでしょ。

やってもいいという候補者はもう暁天の星くらいしかいないって去年の元旦に言わせてもらったけど、今年はもう昼あんどんっていう感じなんだな。 ん? 意味がだいぶ違うって。ま、当たらずといえども春遠からじでしょ。勘弁してよ、とにかく元旦なんだからね。1

昨年4月には、おさき真っ暗のタケサキ君から、やってられねぇのテラダ君に最高裁の総大将は変わったけど、事態は変わらず悪化の一途。私の里インコのお山のメイカイ国語辞典の「破綻に瀕している」は、最高裁国語辞典では「順調に推移している」と表現し、用語例としては「順調に難産し順調に衰弱して順調に絶滅する」なんて言いますね、はい。右下の写真「後は君に任せた」と逃走するタケサキ君とそれを睨むテラダ君竹﨑と寺田

一昨年は、外傷性ストレス障害になった元裁判員が国を相手取る責任追及の訴訟を福島地裁に起こした。提訴に狼狽したタケサキ君は、地裁の裁判官は裁判員裁判が終わってから、元裁判員に電話をかけるなどして「君、病気になってないかい?」って問い合わせろと命令したね。一方、昨年4月、就任早々のテラダ君は、裁判官は街に出て裁判員裁判宣伝の「出前講座」を開けって命令した。どちらについても「成果報告」はとんと聞きませぬが。

昨年9月、福島地裁は元裁判員の請求を棄却する判決を言い渡した。「辞めたきゃ辞められたのに最後まで裁判員をやりきったお前が悪かったのよ」とさ。話はもうめちゃくちゃ。この判決を知って、「それじゃあ裁判員をやってみようか」なんて思った人がどこにいる? これがこの国の政府と最高裁の態度なのさ。10万円のペナルティーで出頭の脅しをかけたり、無理して出て行って病気になったら自業自得って言ったりとで、これでこの制度は終わりも終わり

無理やりに 呼び出しやらせ 病得て 自業自得と 国は言うなり 

この制度はもう消えていきます。「最後の電話を握りしめて、私は一人で死んで行く」なんて唄が昔あったんじゃなかったっけ。ま、いいや、正確に言わせてもらいましょう。制度が潰れて行くのを待っているんじゃなくて、私たちが制度を潰しにゆく時が来たんです。

今日は信念のご挨拶。インコの宣言「『いやだ』の思いから『やめろ』の行動へ」の具体的な提案は次号以下で謹んでパンパカパーンと発表させていたただきます。どちらさまもお楽しみに。
では、とざいとーざい、すみからすみまでずずいーっと今年もよろしくおたの申します。

年越し酒で二日酔いと言うか二年酔いの
裁判員制度はいらないインコ 拝

正月1気がついたら鏡餅になっていた… 

投稿:2015年1月1日