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犯罪被害者、遺族や代理人弁護士が「裁判員の判断」を強調する意味

弁護士 猪野亨

下記は「弁護士 猪野亨のブログ」3月18日の記事です。
猪野弁護士のご了解の下、転載しております。

先般、大阪高裁では、裁判員裁判の死刑判決を破棄し、無期懲役とした判決が立て続けに2件ありました。
裁判員裁判の死刑判決が高裁で破棄される 守られるべきは先例ではなく基準 勝手に作られる裁判員制度の意味

遺族やその代理人弁護士にとって死刑判決が破棄されることに対して、感情的に受け入れられないのは、理解できなくもありません(代理人弁護士が感情論に陥っているのは、法曹としてはどうかと思います。)。

検察庁に対し、上告するよう求めるわけですが、そこで違和感があるのが、「裁判員の判断」を持ち出すことです。
「裁判員裁判を軽視している」最高検に遺族が上告要請 一審の死刑から無期減刑で」(産経新聞2017年3月17日)
「大阪の繁華街・ミナミで平成24年、通行人2人を無差別に刺殺したとして殺人などの罪に問われた無職礒飛京三被告(41)に対し、大阪高裁判決が一審の死刑から無期懲役に減刑したのを受け、遺族や代理人弁護士らが17日、「市民感覚を取り入れた一審の裁判員裁判を軽視している」として上告するよう最高検に申し入れた。」

確かに裁判員制度になってから、重罰化が進みました。死刑か無期懲役かという究極の量刑が争われるような事件ですら、中には、過去の基準なんて関係ない、などと言い放つ裁判員もいたり、非常に問題をはらんでいたのが裁判員裁判でした。
死刑か無期懲役かは、天と地ほどの差があるのですから、これを裁判員裁判だからというただの一言をもって正当化されることはありません。
だからこそ、最高裁は、死刑判決を破棄した高裁判決を是認しているのです。
最高裁 裁判員裁判の死刑判決を認めず!

この裁判員裁判による死刑か無期懲役かの量刑判断ははもちろんすべてが死刑になっているわけではありません。
そのような場合、遺族やその代理人は、裁判員裁判の結果だから尊重せよ、ということになるのでしょうか。
遺族についてはそれぞれが全く違う方たちですから、同じような議論はなじみにくいとはいえます。例えば、あなたは裁判員裁判の結果は尊重しなくてもいいというのであれば、別事件で裁判員裁判の死刑判決を破棄した高裁判決も尊重すべきといえるのですね、ということですが、その遺族にとっては他は関係ないとは言うでしょう。
しかし、代理人弁護士としてはどうですか。この犯罪被害者の事件ではよく同じお名前をみたりしますが、死刑を選択せず、無期懲役とするようなどのような判断に対しても尊重せよと言うのですか。
先の日弁連の人権擁護大会でも、死刑制度廃止宣言に反対する弁護士たちは、極めて恥ずかしいレベルの醜態をさらしていました。単なる感情レベルでの絶叫でおおよそ法曹としての発言ではなかったわけです。
瀬戸内寂聴さんの発言はどうかと思うが、犯罪被害者側弁護士の主張に道理はない

弁護士が極めてご都合主義的に「裁判員裁判」を利用するのはやめるべきでしょう。
法曹としての資質が問われます。Print

 

 

 

投稿:2017年4月16日