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裁判員制度は大量死刑執行のトリガー!?

 谷垣法相は、9月12日、3度目の死刑執行を行った。執行されたK氏の1審判決は無期懲役、死亡被害者1人の事件でしかも自首しており、既に73歳という高齢者であった。 谷垣法相による最初の執行は就任わずか2カ月足らずの本年2月21日。2度目の執行は4月26日、そして今回と約3カ月に1度の執行は、死刑という殺人行為に痛痒を感じない大臣であると言わざるを得ない。月見て跳ねる無地

 それにしても、いつから私たちの社会は、「殺せ」とか「早く吊せ」とか言い募るようになったのか。

 永山第1次上告審判決の1983年から司法制度改革審議会が発足した99年まで、1審死刑判決は毎年1桁台、99年の確定死刑囚は50人と一応は慎重な姿勢が続いていた。

 しかし、司法制度改革が本格化した90年代末頃から刑事裁判は求刑も判決も明らかに重罰化にシフトし、死刑判決は00年(1審14人)以降ずっと年2桁台が続くようになった。裁判官の意識は「迷ったら無期」から「迷っても死刑」に変わったとも言われたが、この時期は裁判員制度の検討と準備の期間に完全に重なった。その極めつきは光市殺害事件第1次上告審判決(08年)である。

   刑事弁護士の中には、裁判員裁判で冤罪が減り死刑判決も少なくなると期待した向きがあった。市民が参加すれば無罪判決も増え、量刑も権力的な重罰指向から被告人への理解指向に変わると考えたのである。しかし現実はどうだったか。月見て跳ねる

 非公開の場で争点が「整理」され、法廷で裁判の進め方を決めるやり方が完全に封じられた。裁判は迅速最優先になった。裁判員裁判が始まって1年余の10年11月に第1号の死刑判決が出、今までに20人に死刑判決が言い渡された。これまでなら無期刑だったかと思われるケースでも死刑判決が続いている(例えば、千葉地裁11年6月30日判決の千葉女子大生殺害事件は被害者が1人。13年2月14日判決の同僚女性殺害事件も被害者が1人で被告人は前科もなかった)。

 2月21日の執行時、「法務省内には『裁判員裁判で死刑判決が相次いでいる。市民も参加した裁判の判断に、行政が待ったをかけるのはおかしい』との声」という報道がなされ、今回の執行でも「裁判員裁判で、市民が苦悩した上で死刑を選択していることもあり、同省(法務省)内では『執行が滞れば、死刑制度の形骸化につながりかねない』との危機感が強い」という報道があった(9月12日『読売新聞』夕刊)。  

  国民は苦しみながら死刑判決を言い渡しているのだから、法務大臣は進んで執行しろと言うのであれば、大量執行を促すトリガーの役割を裁判員に果たさせようとしていることになる。

 裁判員制度は人を家庭から裁判所に駆り出し、日常感覚の中に法的殺害を受容する素地を作るものだ。軍事行動を諦めない国は死刑制度に固執すると言う。国民に人を裁かせ死刑判決を繰り出させる日本はいったいどこに向かおうとしているのか。インコはおそろしい。

月見

 

 

 

投稿:2013年9月14日