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ストレス障害国賠訴訟第2回口頭弁論 -その3-

被告第1準備書面+インコがつつく

1 全体の構成
20頁におよぶ、しかし内容のまったくない書面。はっきり言ってしょうもないことしか書いてない。

  乙部竜夫以下15人が名前を連ね、はんこは加藤恵盛のところだけ「加藤」という印が押されていて、後の14人のところには全部「東海林」という印が押されている。「加藤」は加藤恵盛の、「東海林」は東海林秀一の印だろう。加藤も東海林も福島地方法務局の職員。はんこ押しは地方法務局の仕事と内規で決まっているのか。この人たちのやることはわからない(以上、敬称略)。
第1は「認否の補足説明について」、これが1頁。第2は「被告の主張」、これが大半を占めて15頁半。第3は「原告準備書面における求釈明に対する回答」、これが1頁。で、表紙などを入れて都合20頁。以下、それぞれについて紹介する。
 と見得は切ったものの、裁判用語は素人にはなんともわかりにくい。出だしの第1が特にややこしい。鳥頭024909のインコにはなおさらのこと。
そこで鸚鵡大学法学部にゃんこ先生に説明していただくことにした(鸚大は法科大学院を認めていません。悪しからず)。

2 うろたえる最高裁、またのタイトルを、第1「認否の補足説明について
(1) 認否を補足するって
にゃんこ先生によれば、ここは、うろたえる最高裁や政府の姿勢がいちばんよく出ている部分とのこと。
「かかる立法の重大な過失により、原告は深刻な精神的損害を受けた」という原告の訴状の主張に対し、被告は答弁書の中で「原告が『深刻な精神的損害を受けた』との点は不知、その余は否認ないし争う」と反論していた。この答弁を補足するという。

  (2) 前はなんて言ってたんだっけ
被告が以前主張していた部分(太字、下線のところ)は要するに何を言っていたのか。まずはそこからと先生に聞いてみた。

 1この部分を丁寧に言うと次のようになるでしょう。
「Aさんが『深刻な精神的損害を受けた』と主張していた点については、最高裁は損害の一つひとつを直接見聞きしていないので『わからない』=『不知』(裁判用語)というほかない。それ以外の『Aさんは立法の過失のためにこのような打撃を受けたのだ』という主張は認めず争う」と。別の言い方では「因果関係を争う」などというのです。そう言っていたんですよ。
えっ、これもわかりにくい? 困ったなぁ。つまり、それが裁判は素人には難しいってことに通じるんですね。

  へ?  ルールを知らないインコがフットボールの試合を見たときに似ているなぁ。まぁ裁判が素人には難しいという話は別の機会に。
   インコの頭でフツーに整理すると、最高裁は、Aさんが「裁判員を務めたためにストレス障害になった」と言ってたことについて、初めはそんなはずがないと争っていた。同じように裁判員をやった人がみんなストレス障害になっていた訳じゃないし、あなたはもともと虚弱体質の人だったんじゃないのとか、そういうこと言いたかったんだね、きっと。
そんな権力思想でよく「私の視点、私の感覚、私の言葉で参加します」なんてぬけぬけと言ったもんだ。

   と怒り心頭のインコに対し、「インコのお山裁判員制度対策本部」(イン裁本部)から「いやいや、落ち着いて向こうさんの言い分を説明してもらいなさい」と「落ち着け命令」が来た。

   (3) で、それをどう変更すると
因果関係についても『否認ないし争う』としたのは、その前提となる『かかる立法の重大な過失』との点を『否認ないし争う』からである。『原告が裁判員の職務を担当、遂行したことにより精神的損害を受けた』との因果関係まで積極的に『否認ないし争う』とする趣旨ではなく、その点は『不知』とするものである」。

へ?    いや、落ち着いてもやっぱりわからん。先生、お願いします。

 1  因果関係を争うと言ったのは、「立法に重大な過失がある」というAさんの主張に限って争うということで、裁判員をやったから精神的損害を受けたという因果関係までを積極的に争いはしない。それはあくまで「不知」だと言ってる。
でも、以前は「因果関係を争う」って言っていたんだから、これは苦しい弁明。それに裁判用語では、「不知」は事実を争う時の用語で、因果関係など理屈を争う時には普通そのとおりに「争う」と言います。

 では、どうへ?してそんな苦しい修正をしてきたんですか、最高裁は。

 1  前回の法廷で因果関係を争うと明確に言い切ったので、マスコミはいっせいにAさんの主張を正面から争う最高裁と報道しましたね。これはまずいということになったのでしょう。その印象を少しでも和らげたいと考えたのだと思います。

な~1  確かにマスコミはいっせいに「国側は全面的に争う姿勢」と報道しました。なるほど。でもその根性は小汚いじゃないですか。

1 えぇ、大いに小汚い。いや大汚いと申しますか。

  へ?で、そうなると裁判の進み方が何か変わってくるんですか。

1

  何も変わりません。被告から「不知」と主張されると、原告は裁判員を務めたために深刻な精神的損害を受けたことを証明しなければなりません。言葉の使い方だけのこと。
ちょっとした目くらましのつまらん話です。

パンチ(冷静に)インコはこのことを激しい怒りをもってイン裁本部に報告します。

1イン裁本部によろしくですな。

 

3 何もしない時この国は「十分にした」という、またのタイトルを、第2「被告の主張」
(1) 一言で言ってしまうと
15頁もある今回の書面のコアの部分。国は、前回の答弁書の中で裁判員法の立法理由などをあれこれ書いてきたのだが、Aさんからそれは裁判員法の成立の経過も裁判員法の立法の趣旨の合理性も憲法適合性もまともに説明していないと言われ、それを受けて裁判所から詳しく書くように指示されて国が出してきた部分だ。035601

(2) まず、「裁判員法案の国会における審議過程」なる文章が
国会に提出されるまでに、内閣に設置された司法制度改革審議会が2年間も調査・審議を尽くし、司法制度改革推進本部が2年にわたり検討を尽くして閣議決定の上国会に提出した法案だ。衆議院では平成16年(2004年)3月16日の本会議の趣旨説明と質疑以来、4月23日までの間に法務委員会で計10日の質疑と1日の公聴会が行われている。参議院では4月28日の本会議の趣旨説明と質疑以来、5月21日までの間に法務委員会で計4日の質疑と1日の公聴会が行われた。
うーん、なんと審議はたったこれだけなんだ。本会議と法務委員会の質疑を合わせて合計14日。しかも両院とも法務委員会には他の法案も係っていたから、裁判員法に専念していたのでもない。
マスコミは特定秘密保護法の審議が拙速だと批判しているけど(それもまったくそのとおりだけど)、特定秘密保護法の国会審議は両院合わせて合計68時間、裁判員法はそれさえ大きく下回る。こういう説明をする国は少しは恥ずかしいと思わないのかな。だから指定代理人も印を押すのをためらったんじゃないのかな(笑) 。044256

(3) 「裁判員法の立法趣旨の合理性について国会審議は十分だった」と
審議の内容経過を見ると、広く国民の参加を求めるという裁判員法の立法趣旨の合理性等について審議が十分に尽くされていることが明らかだ。 今世紀のわが国社会の国民は自らのうちに公共意識を醸成し、公共的事柄に対する能動的姿勢を強めていくことが求められている(←誰が求めているの?)。
司法の分野も同じ。司法が機能を果たすには国民の支持と理解が不可欠。司法の国民的基盤を確立する方策として、一般の国民が裁判に参加し、裁判内容に国民の健全な常識をより反映させることで国民の司法に対する理解・支持が深まるという認識に立って、裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続きに関与することが司法に対する国民の理解の増進と信頼の向上に資することを立法趣旨として立案された(←誰がそんなこと言っているの?)。
立法趣旨の合理性等について審議が十分に尽くされているというのは次のとおり。法務大臣は裁判員法の立法趣旨について様々な場面でこの説明をしており、裁判員法の立法趣旨は国会審議の中で明示された上、質疑応答が行われていた。具体的な審議の過程でも、法務大臣や司法制度改革推進本部事務局長は「大事な大事な(ママ)法案と考えている」「プロと一緒に判断していただくことによって司法に対する理解がきちっと(ママ)できてくる」「事実認定や量刑判断の幅の中に国民の意見が投影される」「いろいろな人生観で結論が変わることもあり得る」などと具体的な答弁をしており(←どこが具体的?)、真摯かつ丁寧な答弁による多くの議論が繰り返されている(←どこが丁寧でどこで多くの議論が繰り返されているのか?)。049755

  (4) そして、「裁判員法の憲法適合性についても審議は十分だった」と
ここがこの裁判の大争点(のはず)。いくらか難しい法律論も出てくるが、がんばって読んでみた。
まず衆院。裁判員の義務づけは、「広く多数の公平な国民参加を得るための必要最小限の義務だから決して(ママ)憲法に違反しない」という(その程度のことで憲法18条後段の苦役禁止の法理に違反しない理屈になると思うほうがおかしいだろ)。
法務大臣は「一定の場合には辞退を認め、連日的開廷を確保し、旅費日当を支給するなどの手当をし、辞退事由を定める政令も検討している」と答えている。また司法制度改革推進本部事務局長は「幅広い国民からの選任や負担の公平化を図らないと希望者だけが裁判員になってその資質や性向が偏ることが懸念される。実際上は裁判員になることを強く拒んでいる人に無理矢理裁判員を務めさせることにはならない。質問票の返送によって出頭義務が免除され得ると考えている」と答えている(←免除されるのに出てきた奴が悪いって言いたいのか? それにもう、ごく一部の希望者、つまり「資質や性向が偏っている」人たちに集中してきている!)。
そして参院。苦役の禁止に抵触しないという推進本部事務局長の答弁を被告はそのまま引用している。ナマで紹介しよう。「ただいま御指摘の憲法の条文があること、我々も十分認識しておりますけれども、この憲法の条文につきまして、これ、じゃ、すべてこれに反するものが駄目かということでございますが、そこの解釈は、行うものの必要性と、それからそれを行うについて必要最小限のという、そういう制度の歯止めですね、こういうものを設けているということから、最終的にはそういうものであれば、それはこの憲法18条、これに該当するものではないというふうに考えているわけでございます」(←奥歯に物が挟まったような言い方で、必要なら禁止される苦役の強制にあたらないというめちゃくちゃな理屈!) 。
そして、参考人の長谷部恭男東大教授の「制度は正しい。思想信条としてやりたくないのなら辞退させよ」という意見、土屋美明共同通信論説委員の「気持ちの負担の重い仕事を国民にあえて引き受けさせることに意味がある」という意見、伊藤和子弁護士の「制裁よりも参加しやすい基盤整備を先に」などの意見など様々な意見が寄せられた」(←制度推進派ばっかり並べてどこが「様々な意見」か? この弁護士、自由法曹団っていう法律家団体のメンバーなんだって。自由民主党の顧問弁護士かしら)。
以上を踏まえて言う。平成17年最判などによれば、裁判員法の制定行為が国賠法1条1項を適用する上で違法になるかどうかは、端的に、同法の立法内容が憲法上保障されている国民の権利を違法に侵害することが「明白である場合」等の例外的な場合に該当するか否かによって決せられる(←裁判員制度はその「明白である場合」でしょ)。

4 逃げる最高裁、またのタイトルを、第3「原告準備書面における求釈明に対する回答」
原告は前回の期日までに、被告国に対して、4点の求釈明(説明要求)をしていた。これに対する被告の釈明(説明)は次のとおり。

(1) 裁判員の義務づけに関し、国会においていつ、いかなる憲法上の審議が行われたというのか(第1、2点)
  2項で述べたとおりで、付け加えることはない(←つまり、これで審議は十分だったと?)。

(2) 裁判員の参加は参政権と同様のものだとし、辞退も可能だったと指摘した最高裁の平成23年の判例を引いたが、そうすると被告は、自己の意思で裁判員になった原告の受傷は「自業自得」だというのか(第3点)。
最高裁の判例を引用したのは「苦役」にあたらないという最高裁の一般的な結論を引いて主張したものに過ぎない(←全然説明になってない! だから何なの?)。

(3) 合憲の根拠の1つとして、正当な理由のない不出頭にも刑事罰は科していないというが、では刑事罰を科したら違憲になるというのか(第4点)。
仮定の質問には答える必要がない
(←つまり、その程度の誠実さしか持ち合わせていないということ!)。

さてさて、この奇っ怪極まる被告国の主張に対して、織田弁護士・佐久間弁護士はどう切り返すか。次の報告をご期待下さい。

インコ・キック

 

 

 

投稿:2013年12月17日