~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
戸浪、戻りし源三に何かありやと尋ぬれば、菅秀才の追っ手が村に迫れると。追っ手に囲まれたる上は秀才の首を討ちて渡すほかなきか。源三、そこで小太郎を秀才の身替わりにと考える。追っ手を斬って捨てるか秀才とともに自害し果てるか。あぁ、「せまじきものは宮仕え、せまじきものは宮仕え…」。
というわけで、インコ、最後のお願いと長老直伝、苦役に難渋しとうない皆さまのために謹んで裁判員の断り方をお知らせいたしまする。新春プレゼント第3弾は、三段目車曳きの段から桜丸切腹の段までをすっ飛ばし、人気の四段目・寺子屋の段でござりまする。
さて、第二段・杖折檻の段は腕を競っての論戦展開。対する四段目はひねくれ人の皆さまがお相手の場面でござります。ひねくれ人って本当にひねくれている人じゃないよ、勘違いしないでね。もはや理屈を超越した境地に立つ方々のいやみ、ひねり、揶揄、罵倒のたぐいですね。長老も「これはセンスが問われるのじゃ」と申しておりまする。「お主やりおるな」と言わせるような名言で舞台を圧倒してください。ではよろしくね。
またまたちょいと幕間のご挨拶を
何事も末期という時期に至りますと、争乱怒濤の時代に入ります。徳川の世もそうでした。第2次大戦末期もそうでした。裁判員制度が登場した現在も例外ではありませんな。たがが外れている。制度が出てきておかしくなったのか、おかしくなったから制度が出てきたのか、裁判員制度はもう投げられたってそこのところジョニーにうまく伝えてよ…♪。いやいや失礼、くちばしが滑りました。真梨子の世界に入りかかっちゃった。とにかくそこら辺はよくよく研究しなければいけませんが、世の中がこのところ奥底からおかしくなっていることは間違いありません。
前の段で不出頭は正義だと申しました。制度拒否の皆さまにはご自身が出頭を拒絶する理屈を展開するのは雑作もないことかも知れません。そういう方の中には、こんな制度はそのうちつぶれちゃうのだからほかっておくのが一番ではなどとおっしゃる方がいらっしゃいます。こういう考え方を「放置主義」とか「法の腐敗」と言い、それはダメです。
でも、前にも申し上げたとおり、無視黙殺や飲み屋のうんちくたれでは事態は根本からは変わりません。名簿記載の通知書(調査票)にも地方裁判所からの呼出状(質問票)にも、間髪入れずにあなたらしい皮肉を込めた拒絶通知を叩き付けていただきたい。ただし、できるだけ品位のあるウィットを飛ばして下さいね。
ひねくれ御仁のあなたに呼出状が来たら「四段目」の線で行き、周囲の方に来たら、その方のタイプにより「初段」から「四段目」までのどれかで行く。そこら辺も考えながら周りの方にも断り状をお勧め下さい。通知書にも呼出状にも闘わんかなの精神でとりくみましょう。通知書に対する出頭拒絶の回答の内容次第で呼出状の送付先から外されますし、呼出状に対する出等拒絶の回答も理由次第で呼び出し取り消しの対象になります。
インコは、こういう断り状はいかがかという「長老直伝・お断り参考文例」を皆さまにお届けします。特にこの段は独創性が重要です。だいたい平安時代に寺子屋なんてなかったもんね、細かいことは言わない。ウィットやユーモアの世界では、既視感がないことがとても大事です。読む側に与える打撃効果や引きつけ効果に大きな差をもたらします。文例はあくまでもちょっとした参考です。適宜大きく修正してご利用下さい。
それでは、続いて皆さまを、第四段『寺子屋の段』へとご案内つかまつりまする。
第四段「寺子屋の段」
これは、表面では春風駘蕩を装いながら、その実戦々恐々としている連中の心臓を一刺しで貫く小気味よい剣先の断り状です。理屈というのはいろいろあっても数に限りがある。しかし、ウィットやユーモアの世界は限りがありません。人の数だけ言えます。
おかしな時代には、皮肉に溢れた罵倒や揶揄やおちょくりが幅をきかせます。この国も、アジア最強のマンモス国家や東北アジアの世襲元首国家に負けない秘密統制強靱国家です。四段目は、そのようなお国と時代にぴったり合った寸鉄人を刺す名文の断り状です。さぁ、インコも頑張ろうっと。
(心構え)
長老は、「内容が不正確だったりしてはいけないのは前の段と同じじゃが、にやっと笑えるかどうかが決定的なポイントじゃ」と申しております。ひとりよがりはバカにされるだけ。奥の院は必死、でも現場の人たちはなんだこの制度って思っている。そのどちらにもぐさっと突き刺さる中身がほしい。そうなると制度廃止に向けたのろしの決定打になります。
(例えば次のようなことを書く)
□日当1万円と聞いて考えたのは、出頭して「断固拒否」と騒いだうえ、一日分の手当をもらって凱旋し、おいしいワインを買って帰ることでした。でも考え直してバーゲンセールに直行ということにします。おいしいワインも気分が大事。この制度は人を豊かな気分にさせません。それに幅広く辞退を認めるって国が言っているじゃないですか。バーゲンに行くのも「正当な理由」になりますよね。
□「それが反省している態度か」と人に説教したり、「生まれ変わって人格を変えろ」と被告人に言ったり、挙句は「裁判員になって勉強になりました」とか「社会に関心を持つようになりました」なんてアンケートに書いたり。そんな人を見下した言葉やごますりの言葉はいりません。わざわざ裁判所に行かなくても、毎日会社で聞かされたり言わされたりしていますので。
□呼出状が届いてから体の震えが止まりません。考えるだけで涙が出てきます。いやなものはいや、だめなものはだめです。これは国によるDVだと思います。人を裁くことを人生の目標にしている人のそばに近づくだけでも私は気持ちが悪い。自分の身体を机に縛りつけても家から離れません。私に呼出状を送った人を生涯をかけて探し出し、呪って呪って呪います。
□裁判は誰にでもできると最高裁の偉い人が言っているのをテレビで見ました。それならどうして裁判官に高い給料を払うのですか。裁判官の給料ってすごく高くて、しかも私たちに裁判員をやらせたからって皆さんの給料が下がったりしないんですってね。それってどういうことですか。あなたたちの給料が日当1万円と交通費だけになったときに私も出頭します。それまでは私を呼び出さないで下さい。
□名張ぶどう酒事件とか袴田事件とかいろいろな再審請求事件がありますね。そういう事件なら出頭もしましょう。えん罪の片棒担ぎをさせられるのはごめんですので、裁判員の呼び出しはお断りいたします。どうしても私に裁判員になれというのなら、被告人が自白していようが現行犯逮捕だろうが、私は「被告人は無罪です」と言い続けます。私はこの国の刑事裁判をまったく信用していませんので。
□裁判員法は苦役を国民に強制するもので、憲法違反の法律だと思います。そのような簡単なことがわからないような裁判官の横に座ったら、そのお馬鹿が伝染しそうで恐いので出頭しません。わかっていながら素知らぬ顔をして坐っているのなら、そんな卑劣な人とは同席したくありませんのでやっぱり出頭しません。どういうつもりで裁判員裁判に関わっているのか裁判官に質問します。大至急私に「回答書」を送って下さい。
□私は忙しい物書きです。どうしても来いというなら必ず裁判員に選んで下さい、必ずですよ。メシのタネですから聞いたことは何でも書きます。罰金50万円を超える印税をもらえる本を書きます。最高懲役6か月だそうですが、実刑にはならないと友人の弁護士に聞きました。もし実刑になったらそれも結構。その体験を週刊誌に売るか本にします。ひとつの経験で2冊の本が書けるかも。さぁどうします、裁判長。
(工夫のしどころ)
□ うん、これならボクにも書けるっていう感じになったかも知れません。ただし、長老は「ユーモアと本気の両立って意外に難しいものじゃ」と申しとります。「おしゃべりを楽しんでいるだけととられないように気を遣え」とも。鍵はやっぱり「知識と怒り」。私はこの制度のあやしさを知ってるよという雰囲気をみなぎらせ、相手を追い詰める気迫を堅持しなければなりません。
□ 大事なことは、前から申し上げているとおり、こいつを呼び出すとろくなことにならなさそうだと裁判所に思わせ、二の足を踏ませることです。
□ そしてこれはあくまでもちょいとした参考文例です。あなたの感性を磨きに磨いて、思う存分大展開して下さい。がんばれ主権者の皆さま。それから書いたものは送る前に必ずコピーをとっておきましょう。
最後のむすび
大きな声で笑いながら怒りを叩きつけましょう。魯迅は「水に落ちた犬を打て」と言ったようですが、裁判員制度犬という犬は、水に落ちてもここには水はないなどと言うへんな犬です。また、水から出てきてからまた悪さを始めるとてもおかしな犬なのです。最後の最後まで叩きつぶさなければなりません。何と言っても「寺子屋の段」ですから、偽の首実検なんて手も使われかねない。愛犬家の皆さん、ごめんなさい。不適切な表現と思われた方は、「犬」の代わりに別の言葉を入れて読んで下さい、ただし「インコ」は使ってはいけません。
断り状は必ず書きましょう。納得していないという意思を示す場としてこの機会を利用するのが目的です。この行動は、制度に対する批判の強さを裁判所に思い知らせ、彼らをめげさせ、つくづくいやにさせます。せまじきものは宮仕え。裁判所で働く大半の人たちは、どうしてこんな制度を始めちゃったんだと思っています。本当に悪い奴はこの国のど真ん中にいる数少ない連中だけです。
初段の断り状が初手の反撃とすれば、第二段の断り条は切り込み隊の反撃、そして第四段は総仕上げの総大将の反撃です。渾身のラブレターをものして下さい。最後にまたもインコからのお願い。裁判所に送る断り状のコピーを送って下さい。「裁判所に送る一通の手紙」大コンクールで紹介させていただきます。
さてもさても、インコのお山長老伝授不出頭手習鑑全三幕の通し狂言、長らくのご愛顧、ご愛読まことにありがとうございました。
投稿:2014年1月7日