~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
弁護士 猪野 亨
下記は「弁護士 猪野亨のブログ」記事です。
猪野弁護士のご了解の下、転載しております。
水戸地裁で行われていた現住建造物等放火事件で、補充裁判員、裁判員が次々と「辞任」し、すべて「辞任」となったので、選任と審理をやり直すということになりました。
朝日新聞の見出しがおもしろいです。
「裁判員、そして誰もいなくなった 水戸地裁、辞任相次ぐ 公判後に定員割れ、選び直し」(朝日2014年1月16日)
本来、裁判員には「辞任」する権限はありません。あくまで法定の事由がある場合に「辞任」を申し出ることができるだけです。
裁判所は、正当と認める限りにおいてその裁判員を解任することを決定します。
第44条 裁判員又は補充裁判員は、裁判所に対し、その選任の決定がされた後に生じた第16条第8号に規定する事由により裁判員又は補充裁判員の職務を行うことが困難であることを理由として辞任の申立てをすることができる。
2 裁判所は、前項の申立てを受けた場合において、その理由があると認めるときは、当該裁判員又は補充裁判員を解任する決定をしなければならない。
16条8号の規定は以下のとおり
8 次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者
イ 重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。
ロ 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。
ハ その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。
ニ 父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。
今回は、補充裁判員、続いて1人の裁判員が「辞任」を申し出、裁判所が解任したことにより、既に予定されていた期日を取り消し、別途、期日を指定しようとしたところ、他の5人の裁判員全員から、「辞任」の申し出があり、裁判所は全員を解任したというものです。
この全員に上記に上げたような事由があるとも思えず、要は、実情としては裁判員がもうやりたくないという申し出を裁判所が認めたということです。
本来的には裁判員法の精神は、国民の義務であってお役目を果たさなければならないというものですが、現実には、この裁判員制度の根幹は揺らいでいます。
裁判所の発表では、出頭命令に対して9割の国民が出頭していると発表していますが、実際には、事前に幅広く「辞退」を認めているので、3~4割程度の国民しか出頭していません。
「遺体写真見たくない! 当たり前のこと」
なお、裁判所から呼出を受けたときは、「出頭」であり、それはあくまでも国家による命令なのです。
裁判員法には以下のように規定されています。
第29条 呼出しを受けた裁判員候補者は、裁判員等選任手続の期日に出頭しなければならない。
実際には、義務だ、出頭せよということで運用することになっている裁判員制度は、現実には国民的な支持などなかったのです。
もともと裁判員制度が始められたのは、国民を関与させることによって司法基盤を強化することでした。
あたかも国民の大多数が出頭しているかのような当局の大本営発表の下に、「自分も呼出を受けたら出頭しなきゃいけないのかなあ」という気持ちにさせようとしているのです。
しかし、昨年には、遺体の写真をみてPTSDを発症した女性が国に対し、損害賠償請求訴訟を提起するに至り、本当に国民は裁判員にならなければならないのかということが国民の間でも当然の疑問としてクローズアップされるようになりました。
この訴訟では国は言うに事欠いて、裁判員は「裁判員は辞退や辞任が認められている」などと答弁したのです。
「奇っ怪な国の答弁 裁判員の辞退を認めている?」
これでは、裁判所(国)が裁判員制度が限界に来ていることを露呈したようなものです。
裁判員制度に大義はありません。裁判員になることを拒否しましょう。
投稿:2014年1月16日