~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
3月7日の『読売新聞』新潟版は「裁判員候補者の2割が選任手続き欠席」と題して、裁判員の出頭減を懸念する次のような記事を掲載しました。
「新潟地裁の裁判員裁判で昨年、辞退する理由がなく選任手続きに呼び出された裁判員候補者402人のうち、欠席した人が90人(22.4%)に上ったことがわかった。欠席率は2010年から3年連続で増加、地裁は『このままでは司法の民主化という所期の目的が果たせなくなる』と危機感を募らせている。
学業や高齢、仕事や家庭の事情などの理由があれば、裁判員の辞退が認められる。裁判所は候補者名簿登録時の調査票や、選任時の質問票で辞退理由の存否を尋ねており、新潟地裁でも昨年は候補者1120人のうち718人の辞退が認められた。
認められなければ出頭義務があり、不当な欠席には10万円以下の過料が定められているが、過料を徴収したケースはない。昨年は呼び出された402人のうち、実際に出席したのは312人(77.6%)にとどまった。10年の85.4%から年々減っている。全国でも、出席率は09年の83.9%から12年には76.0%に下がり、13年は9月末時点で74.8%に落ち込んだ。
青柳勤新潟地裁所長は「徐々に新鮮味がなくなっているのかもしれない。国民が司法を支えているという意識を持ち続けてほしい」と積極的な参加を呼びかけている」
さぁさぁお立ち会い。ここは郷土の大先輩田中角栄さん風に言えばだなぁ、よっしゃばっさり切って捨ててやるかだ。えっ、上から目線の言い方をするなってインコのお山から注意指令だと。はいはいはい、ではじっくりと一寸刻みに切らせていただきますわいなぁ。
数字がやたら並ぶ記事だけど、インコ生まれつき数字に弱い。ここはくちばしを食いしばってがんばろう。この記事、はっきり言ってインコにもわかるようにもう少し整理してほしい。いや、わざとわかりにくくしているのかな。正しく言えばこういうことになるんじゃないですか。
昨年は候補者1120人のうちの大量の人びとが呼び出さないでくれと最高裁や地裁に要望した。そしたら地裁はなんと718人(64.1%)もの人についてさっさとその要望を認めた。みんな不当な不出頭ではないことになったんだね。この嫌がられ度の高さと裁判所の引けた姿勢にまず驚こう。結果、辞退が認められなかった人ややるしかないと思った人ややりたくてしょうがない人などが402人残ることになった(1120人-718人)。
さぁ、選任当日が来たぞ。そしたらその残った402人のうちの90人もの人がやっぱり裁判所に来なかった。ちぇっ、来ないでよいことにしてやるって大盤振る舞いして718人も減らしてやったのに、残った数少ない人たちの中からまたまたその4分の1近くが来なかった、よくよくイヤなんだねっていうショッキングなお話。
候補者1120人のうち選任当日に来た人の数は312人(402人-90人) 、つまり正しい出頭率は27.8%っていうことです(312人÷1120人)。記事が312人を77.6%と説明しているのはどうしてかって。それは出頭者を出頭予定者数(出頭してくれるだろうなぁと裁判所から期待された人の数)で割っているからですよ。分母には出頭予定者数をおいてはいけません、候補者総数をおくのです。
分母に出頭予定者数をおいて出した割合というのは、期待数のうちの達成数の割合です。来てくれるかなぁと思った相手のうち本当に来てくれた人の割合を出してどうするの。地裁が期待したかどうか知らないけど、考えて見れば、辞退させてくれなんて言う気にもならないっていう22.4%(100.0%-77.6%)の人たちって、要するに裁判所からの連絡を完全に黙殺した人たちっていうことでしょ。それってもしかしたら最強の裁判員制度批判者かも知れないですよね。
話がそれたので戻ります。もっと深刻なのは、出頭した312人がみんな裁判員をやってもよいとかやりたいとか考えているのではないということ。不当欠席とされ10万円の過料がとられるのが怖いというだけの理由で来ている候補者がこの中にたくさん混じっています。その人たちの多くが選任当日の裁判長の首実検(面接)の場で裁判員をやりたくないと懇願して外して貰っている。その数はかなりの数にのぼります。
つまりつまり、本当に裁判員候補者としてくじびきの段に進む人は312人-α。出頭率は27.8%でも最終残存率はそこからまたたくさんマイナスしたものになるのです。このαが非常に多い。最終残存率はもう20%を割っていると現場の法曹はみています。公判期日に長短のある中の平均値がこれですから、期日が長くなる事件では完全に10%を割っているというのが実情です。出頭情勢はいまや全層雪崩状況と言って少しもオーバーではありません。
新潟地裁はどうしてこんなにひどいのかですって。いやいや違います、ご心配にはおよびません青柳所長さん。新聞記事にもあるように、全国の地裁の出頭率が年々どんどんきちんとした足取りで(この表現少し変かな) 落ち込んでいます。全国の地裁がみんな成績不良なのですから。最高裁はあなたの転勤命令なんか出しようがない(少なくとも出頭率の悪さを理由にしてはね)。
青柳さん、「徐々に新鮮味がなくなっている」んじゃなくて、もともと新鮮味なんてありゃしねぇがな、いやありませんですよ。「国民が司法を支えているという意識を持ち続けてほしい」ですって。そんなつまらんこと言ってないで、全国の地裁所長と連絡をとって、「賞味期限が切れたこの制度はもう引き時では」っていう建白書でも最高裁に送り付けたらどうだがな、どうでしようか。
最後に読売新聞新潟支局に。「裁判員候補者の2割が選任手続き欠席」のタイトルが正しくないということがわかりましたか。
投稿:2014年3月8日