~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
1「立法事実なし」との原告の主張に対する国の反論
(立法事実はあるぞっていう主張らしい。事前に原告に渡されているけれど、法廷では被告国の代理人は何も説明しない。傍聴席にいるだけだと何もわからない。)
2「請求原因を追加する」っていう原告の新しい主張
(原告は、欺瞞的な大法廷判決について最高裁の責任を国の責任として新たに賠償請求の理由に追加すると。うわっ。)
3 1の国の反論(立法事実あり)に対する原告の再反論
(原告は手回しよくもう準備していましたね。しかも原告代理人はこれについて法廷できちんと説明されました。)
4 2の原告新主張に対する被告国の認否反論
(「被告の認否反論ですね」って裁判長に確認を求められて、「そうです」と言っただけ。声の出し惜しみをするなよ! けっ。)
5 4の被告国の認否反論に対する原告の求釈明
(被告国の認否反論に対する再反論をこれから準備するが、その上で必要な事前の説明要求だと。よく準備されているなぁ!)
6 5の原告要求に対する被告国の応答
(「釈明の必要を認めない」って。元裁判員の請求に国は回答する必要がないという返事! これじゃぁねぇ、あんた一事が万事よ。)
7 最後に次回の裁判の予定と日程
(次回は4月22日午後2時から。Aさんの原告本人尋問だぁ!)
今回の法廷、いろいろありました。これをさらにさらにまとめれば、
A 立法事実の有無に関する被告(あり)と原告(なし)の応酬
B 原告の請求原因追加(最高裁の責任)に関する原告(あり)と被告(なし)の応酬
C 原告本人調べの決定(ついにご本人が法廷で訴える!)
ということになりますね。今回と次回に分けてこの3本柱の説明をします。ぶっ続けはインコもみなさんも疲れるからね。
□ 立法事実の有無に関する被告の主張は
立法事実に関する被告の主張を明らかにしたものという1月24日付け第2準備書面です。これが25頁もあって何とも長ったらしい。だが、内容は本当にあるか、実体はこけおどしではないか。超簡単に紹介すると次のとおりになります。
1 立法目的(立法趣旨)は明確
国民参加で司法に対する国民の理解支持が深まり司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになることが主目的。裁判の迅速化やわかりやすさの実現も期待された。平成23年最高裁判決もそう言っている。
2 立法目的の合理性・必要性、目的達成の手段の合理性を裏付ける立法事実
一般に、「立法事実とは法律の立法目的の合理性と立法の必要性を裏付ける事実」および「目的達成の手段の合理性を基礎づける事実」をいう。識者の説明によれば、それは絶対の真理や客観的真実ではなく、解釈・評価・予測が多く含まれ、証拠で支えられるものではなく、国会の裁量に委ねられることも多いとされる。
まず「法律の立法目的の合理性と立法の必要性を裏付ける事実」。
司法の国民的基盤がより強固になり、裁判がより迅速化され、よりわかりやすくなることが期待されることが立法事実である。欧米にも陪・参審などの国民参加制度があり、わが国でも過去陪審制が採用されていた。司法制度改革審議会の意見書も、司法機能の充実のためには国民の幅広い支持と理解が不可欠だとして、司法制度改革の主柱の1つに位置づけている。これを受けて成立した司法制度改革推進法は国民が裁判官とともに刑事訴訟手続に関与する制度の導入を方針とした。裁判員法制定後の意識調査の結果で国民から高い期待や評価が寄せられていることは立法目的の合理性や立法の必要性を裏付ける。なお、裁判員法が従来の刑事司法の弊害を克服する目的で制定されたものではないことは制定当時法務大臣や政府参考人が再三国会で答弁している。
次に「目的達成の手段の合理性を基礎づける事実」。
広く国民が参加することで司法の国民的基盤が得られる。出頭義務を課さなければ広い参加で国民的基盤を確立するという立法目的に沿わないし、国民負担の公平性も確保されず、選ばれる裁判員の資質や性向に偏りが生じる懸念がある。義務不履行に制裁を科さなければ履行確保が担保されないことも自明である。制裁として10万円以下の過料としたのは、司法制度改革審議会の「裁判員制度・刑事検討会」の議論の結果、それが妥当と判断されたのである。選挙人名簿から無作為抽出した候補者に出頭義務を課したこと、裁判員に職務遂行義務を課したこと、違反者に10万円以下の過料の制裁を定めたことは、法の立法目的を達成するために必要な合理的手段である。このことについても制定当時法務大臣や政府参考人が国会で答弁している。
裁判員法は、従来の刑事司法の弊害を克服するという消極的未来的のためではなく、よりよい刑事司法を目指して立法されたものであり、高度の政策判断が求められ、憲法上保障された国民の重要な権利・自由を直接規制する立法ではないことなどから、立法府に広範な裁量が認められるべきであり、立法事実の存否や妥当性についても基本的に立法府の判断が尊重されるべきである。最高裁平成23年判決も国民参加の内容は立法府に委ねられていると言っている。
最判が立法事実の存否や妥当性について述べず特段の検討もなく合憲の判断をしているのは、立法府の広範な裁量を前提として立法府が判断することを合理的だと認めたからである。裁判員の職務は参政権と同様の権限を国民に与えるものなどと言っている。これは、裁判員法の立法事実の存在と妥当性を当然に公定しているものと解される。この判断は確立した判例であり、裁判員法の立法事実の審査をする必要性自体乏しい。
第2 裁判員法は憲法18条に違反しないという最高裁平成23年判決の判示が違憲だとの原告主張は失当
1 原告は、弁護人が上告理由としなかったことを理由に「裁判員法は苦役の禁止(憲法18条)に抵触しない」という最高裁判決には拘束力はないと言う。
2 当該事案における弁護人の上告趣意は憲法18条違反の主張を含むものと解して憲法18条違反にならないと判示したものであり、憲法81条に違反しないし、判例としての拘束力も否定されない。平成23年最判は参政権類似の裁判員の職務を苦役というのは不適切だとしており、裁判員法16条やこれに基づく政令等が柔軟な辞退制度を設けていることや出頭裁判員(候補者)に負担軽減の措置が講じられていることなどに徴し、裁判員の職務が憲法18条後段が禁ずる『苦役』に当たらないことは明らかである。
1 原告は、長期短期にかかわらず公務員の職務に就く義務を負わせることは職業選択の自由に反すると言う。
2 職業というのは継続性と生計維持目的を要素とし、昭和50年4月30日最判のいう「生計維持のための継続的活動」という定義は、その範囲を明確適切に画したものである。労働の対価を得ない一時的公務たる裁判員の職務が「職業」に当たらないのは明らかで、裁判員法制定過程やその後の議論でも、裁判員法が憲法22条(職業選択の自由)に適合するか否かを議論した形跡がほとんどない。
1 原告は、裁判員法は、憲法13条(生命、自由、幸福追求の権利)を侵害すると言う。
2 裁判員の職務は合理的な範囲内の負担であるから13条に違反しない。長谷部恭男東大教授は参院法務委で同旨の意見を述べ、平成23年最判もそのことを認めている。
1 原告は、国賠法1条1項の違法性判断に関する確立した判例はないと言い、仮に平成17年最判に基づいても裁判員法の制定は国賠法1条1項の適用上違法だと主張する。
2 平成17年最判は、法律の内容が仮に違憲であってもその立法行為の内容が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するなど極めて例外的な場合のみ国賠法1条1項の適用が違法とされると判示したものである。そして、同最判はその他の最判で引用されるなどしており、確立した判例というべきである。
原告は、平成17年最判の理解を前提としても裁判員法の制定は国賠法1条1項の適用上違法だと言う。しかし、裁判員法が違憲ではないことは平成23年最判のほか累次の最判が認めており、「立法内容が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合」(平成17年最判)に該当する余地はなく、その法制定行為が平成17年最判の判断枠組みの下で例外的に国賠法1条1項の適用上違法と判断される余地はない。
□ 対する原告の反論は
原告代理人織田弁護士は、2月20日付準備書面(3)の内容を陳述しました。これも14頁におよぶ読みでのある書面。法廷で実際に述べた内容は前回紹介しましたが、改めてここでご紹介します。
1 被告が立法事実として主張するものは、裁判員法に根拠を有しない独自の目的なるものを持ち出しているに過ぎない。
2 司法の国民的基盤の強化が目的というなら、それを強化しなければならない状況があることを明確にすることが立法事実の主張と言える。被告はそれを全く明らかにしていない。却って、今の司法には問題がないと言っている。
3 欧米諸国では陪・参審制という国民の刑事司法参加の制度があるというが、それをわが国にも必要だというのであれば、欧米がそれを導入した歴史的背景等立法事実を明確にし、それと同じ立法事実が今の我が国にもあることを主張すべきである。武器保有を憲法に規定している先進国があれば、それを真似るべきだということになるのか。
4 我が国で過去に陪審制を採用していたことが何故に立法事実になるのか。却って、裁判所法3条3項に「陪審の制度を設けることを妨げない」と規定されていても、戦後60年余年間全くその制度設定の兆しも見えなかったのは、我が国には国民参加の必要性がなかったと言えるのではないか。
5 被告は平成23年11月16日大法廷判決を盛んに引用するが、それは上告趣意を虚偽作出した違法な判決であり、何ら判例としての価値のないものである。
6 職業選択の自由という場合の職業というのは、人間が社会的関係において営む仕事をいう。対価を伴うかどうかは必須ではない。被告の主張は間違っている。
7 裁判員法制定時には、徴用される国民の苦痛への配慮、その憲法問題としての認識は、全くなかった。被告としては長期的政策目的があれば国民の1人や2人の犠牲者が出てもそれは立法の裁量に委ねられていると考えているようであるが、それは憲法が掲げる国民の個人尊重の理念に反するものである。
これで、立法事実に関する原告と被告の応酬は一応終わりました。このやりとりについて、裁判所はどのような判断を下すのか。適当な言葉で逃げさせないように監視しなければいけませんね。
さて、Aの解説はここまで。続いて、
B 原告の請求原因追加(最高裁の責任)に関する原告(あり)と被告(なし)の応酬
C 原告本人調べの決定(ついにご本人が法廷で訴える!)
投稿:2014年4月9日