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裁判員制度5周年社説をインコが突き回す-朝日編

裁判員制度5年。多くのメディアが社説や特集記事を打ち出し、テレビでもニュース報道などが展開された。今、マスコミは裁判員制度について何を言うのか、どう言うのか。主な新聞の社説を取り上げて、観察してみました。
まず「制度推進は社是」の『朝日』(5月23日)から。033851

現在 過去 未来 最高裁におもねって
  朝日はいつまでも推進していると市民に伝えて…

はい、これがインコが読んで最初に浮かんだフレーズです。

社説は仰々しいぶち抜き1本勝負。普通2本構成にする社説を1本にしたのは、年頭とか憲法記念日とか、今日はこれ以外のテーマは無視するという特別版。『読売』だったら改憲試案を提起するというような時にやるヤツね。
さすが「裁判員問題は我が社に任せなさい」の『朝日』。他社の多くが5年目当日の21日に掲載するものとして23日にご登場。ご本人としては横綱相撲のつもりなんだろう。そしてお題は「社会で経験蓄え育てよう」。何を言っているのか一読ではわからないところに『朝日』記事の奥深さがあるというか、味わい深いものがありますねぇ。

内容に入ります。1本社説って言うことは記事量厖大っていうこと。総量なんと1800字超! ふつうはせいぜい1000字。ずいぶんたくさんのことを論じているのかと思いきや、内容はなんとすかすか、ホント水増しのすかすか。インコが簡単に整理してさし上げます。

① 冒頭で、「『ふつうの市民にできるのか』『辞退続きで裁判にならないのでは』。そんな懸念があったなか、おおむね順調に進んできたといえるだろう」と来た。ふつうの市民はもうやっていないし、実際に辞退続きの惨状になってるでしょうが。このどこが順調ですか。「順調論」は当の最高裁でさえもう堂々と言わなくなっているのに、新聞社の論説委員室の辞書にはまだ残っているらしい(これは『読売』も同じ)。ラッパ
長寿のインコとしては、木口小平のラッパを思い出しちゃうね。ん、知らない? 修身教科書の「キグチコヘイ ハ テキ ノ タマ ニ アタリマシタ ガ、シンデモ ラッパ ヲ クチ カラ ハナシマセン デシタ」さ。精神力の賜物ではなくて死後硬直の問題だって言うのが今では通説らしいけど、マスコミも日清戦争以来ずっと死後硬直状態なんだね、きっと。

② で、ここから「課題は少なくない」という話に。やっぱり課題だらけじゃないか。まてまて、『朝日』が言う課題とは何だ。「有罪・無罪の判断にこそ市民の目を生かすべきで、被告人が起訴内容を争う事件には裁判員を参加させろ」とあるぞ。
冗談言っちゃいけない。この制度はもともと「有罪・無罪の判断に市民の目を生かす」制度ではありません。06年10月に最高裁・法務省・日弁連が御紙の紙面に掲載した全面広告は、「判決や刑罰決定までの過程を体験、理解し、犯罪がどのように起こるのかを考えるきっかけを作ることで、安心して暮らせる社会に何が必要かを自分のこととして考える」んだって言ってたんだよ。わかりやすく言えば「安心安全のためにあんたの感覚で処罰してご覧」ってことだった。
被告人が起訴内容を争うたくさんの事件に裁判員を参加させてみようか。評議室は有罪にしろっていう声に包まれるだろうよ。もう、そんな連中しか裁判員をやらない状態なんだからね。とんでもない仕組みなのに、そうでもなさそうに装う手口っていうのは本当にけしからんよ。それこそ犯罪的と言ってもいい。

004175③ 死刑判決の例を取り上げている。何を言うかと思ったら何も言っていない。多数決ではなく死刑は全員一致にせよという声があるなんて紹介しているけれど、我が社はそう考えるとも言っていない。つまり、てーへんだてーへんだって騒いでいるだけ。アホちゃうか。

④ 「制度はいまだ完全なしくみとはいえない」と来た。「完全」に近づいてはいると言いたさそうだ。でも「裁判官と裁判員が対等でなければ、市民は『お飾り』になりかねない。だが十分な検証はされていない」とも言うんだよね。「お飾り」かも知れないのなら、そんな大事なこと、シロクロつけなければこの制度が順調かどうかなんて言えたもんじゃないだろうが。
ここで急に「急性ストレス障害」が登場した。終了後の心理面の支援にも考慮をとか、医療の専門家も加えて制度の改善を考えるべしなんて言っている。具体的にどうしろとか言うのかと思ったら何一つ言わない。そりゃ何も言えないよね。うろたえる制度推進メディアの無様な姿が浮き彫りになるだけ。制度をやめれば「急性ストレス障害」はなくなる、とただそれだけを言えばいいのよ。

⑤ 出ターッ。最後の最後に「裁判員参加しても可」が僅か14%に落ち込んだことや「辞退率」が63%に達したことに触れたね。そして「制度が定着とは逆行しているように見えるのはなぜか」と来たもんだ。「逆行しているように見える」とはどういうことかいな。「私の見ている光景は幻覚なのか」って聞いているみたいだね。いえ論説委員様、幻覚ではありませぬ、それが現実なのです。定着していないどころか崩れかかっている現実があなたの眼前にある。何を置いてもこの数字の意味を真剣に考えるしかないんだよ、キミは。
打開策は「守秘義務」の見直しだって。あのねぇ、死刑判決にぜひ関わりたかったなんて言ってる人たちが「とてもいい体験をした」ってしゃべくりまくったって、みんなついて行かんのよ。そういう話は「社会で蓄える経験」になんて絶対にならないの。それとも、『朝日』はそういう声が高まることを「健全な民主社会が形作られた」って喜ぶんですか?!

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投稿:2014年6月1日