~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
裁判員制度5年。多くのメディアが社説や特集記事を打ち出し、テレビでもニュース報道などが展開された。今、マスコミは裁判員制度について何を言うのか、どう言うのか。主な新聞の社説を取り上げて、観察してみました。
最終回は、『東京新聞』と『徳島新聞』の地方紙です。この2紙を選んだ理由ですか? 『東京』はインコが読者で、『徳島』はこのホームページの読者の方が送って下さったからですが、まあ東西から1紙を取り上げたと思って下さい。
□ 義務を権利と読み替える最高裁のお先棒を担ぐなっ『東京』(5月24日)
見出しは「民主主義を磨くために」ときた。制度が民主主義を鍛えるらしい。冒頭に「アンケートをとると80%超の人が参加したくないという(本当は85.2%だ。正確に言え)のに、経験者の95.2%が肯定的な回答をした(こちらの数字だけ細かく紹介するな)。このココロは『経験すれば考えは一変する』だ」という文章に始まる。
トホホだね。
まったくもって何にもわかっちゃいない。「こちら特報部」に御社社説の批判特報を書かせたいと思うのはインコだけじゃないだろう。この制度への「好悪」は裁判員経験の有無で真反対、いやそれ以上に転換すると断定し、この乖離は「守秘義務」がもたらしたものだと言い切る。どういう根拠に基づくとそんな大胆な結論が導かれるのか、御社の論説委員の浅薄さはまっこと言語に絶するね。
憶測だけはたくましい。「よい経験をしたと感じる人が年々1万人ずつ増えていく。守秘義務をなくせば制度はさらに国民に近づく」と。よし、じゃぁ言ってやろうか。「よい経験」派が100万人になるのには100年かかるけど、「やりたくない」派は毎年1%、つまり100万人ずつ増えてるんだぜ。
それから、この「よい経験95.2%」のカラクリだ。「特報部」に聞いてみな。インコはこれまで何度も解説している(例えば【「参上」から「惨状」へ-インコ、最高裁データを読む】)けれど、こんなデータには全然価値がないんだよ。勉強が足りなさすぎるね。多少とも探求心のあるジャーナリストだったら、極端に嫌われている制度なのに極端に好きこのむように見える数字が出てきたら、「こりゃなんじゃ」って少しは疑問に思うもんだよ。守秘義務要因? 守秘義務のおかげで嫌われ度がまだこの辺にいるってことも少しは考えておきなよ。
「参政権に等しい」って言ってる最高裁の裁判員制度合憲判決(2011年)を引用して、「新しい権利を得ているのに国民が無関心であっていいはずがない」とのたまう。ウソだね。参政権なら投票しなくても処罰されない。権利には行使・不行使の自由がある。義務だから不行使が処罰される。義務を権利と言いなす欺瞞を批判するのが本当のマスコミじゃないか。だいたい国民は無関心だって誰が決めたの? みんな関心があるよ、寒心って言った方がいいか。みんなよく知った上でイヤだと言ってるんだ。ホント何もわかってない。
『東京』はここから米国の陪審制に学べという長弁舌に移る。だけどねぇ、陪審制と裁判員制度は仕組みも違えば歴史や思想の背景もまるっきり違うっていうことを少しは踏まえた解説をしろよ。「裁判員制度が成長すると民主主義は成熟する」。誰がこの制度を推進してきたと思ってるんだ。制度の現実を見もせず、ひたすら夢想に走るというのは無知を通り越して罪悪だとインコは思うね。
□ 月並み淺堀りでは何も見えないぜっ『徳島新聞』(5月23日)
こちらのタイトルは「たゆまぬ改善で育てよう」。「大きな混乱はなかったが、制度が抱える課題は鮮明になってきた」と。
「大きな混乱なし」? 正当な理由のない不出頭は処罰するなんて息巻いて発足したのに圧倒的多数の国民からひじ鉄くらってしまった。それでも1人も処罰できない。こういう事態を混乱と言わないのなら、世の中に混乱というものは存在しません。100人の「連」から85人が消えたら、阿波踊りは「大混乱」でしょうが。
「市民とプロの意識はいまだに乖離している」「市民感覚の反映と刑の公平性のバランスをとる必要がある」。「市民」と「プロ」の対比で考えたってしょうがない。そんな対比は問題の実相にまるで符合しない。「厳重処罰を求める市民」と「突出した異変判決を嫌うプロ」の対決構造と言えば少し正確になる。しかも、「いまだに乖離している」のではなく、「いまどんどん乖離が進んでいる」のです。高裁の逆転判決は最近の例だし、求刑超え判決の最高裁見直しはこれからのことですよ、『徳島』さん。
だから、「バランスをとる必要がある」なんていう結論もヘン。「厳重処罰要求」をどう考えるのかとか、「異変判決嫌忌」をどう考えるのかということをまずしっかり論じなければいけない。そこをさっと通り越しちゃうから、この社説はどうしようもなく陳腐・月並みなんだ。
県内の(補充)裁判員の経験者は277人、『徳島』が行った聞き取り調査では半数以上が改善すべき点があると答えたという。そしてその多くは残酷な証拠写真を見せられることや長期間の拘束などによる精神的負担の重さだったとある。このデータは貴重な資料だね。
「残酷な証拠写真を見ないで結論を出す」ということはそもそもおかしい。あってはならない。事実を子細に知らないまま判決を言い渡してもよいというそんな裁判は本当の裁判ではないからね。裁判や判決という仕組みは本質的に過酷な内容を含んでいるものです。裁判官も検察官も弁護士も自身の職業人生でそのような経験をすることを覚悟している。一方、そんなつもりのない一般市民が嫌がるのはあまりにも当然の話だ。でも、だから簡略にしてよいとか、印象の薄いものにしてよいというような議論が登場してよい訳がない。そういう考えをする法曹がいるとすれば「司法の自殺を画策する法曹」になる。
聞き取り調査では「長期間の拘束などによる精神的負担の重さ」を言う経験者が多かったという。では4日を3日にしようとか、3日を2日にしようとかいう議論にはならないだろう。なってはいけない。そもそも4日なんてめちゃくちゃ短い、短すぎるっていう弁護人経験者が少なくない。現状でも「長期間の拘束」と感じ、精神的な負担を感じるとすれば、それは「もっと短くせよ」ではなく「私たちにやらせるな」という答えしかもうないはずだ。
『徳島』の聞き取り調査では、「あなたはまた呼び出されたら裁判員をやりたいか」とか「あなたがもし被告人になったら裁判員に裁かれたいか」とか「この制度は今後も続けるべきと思うか」とかの質問をしたのだろうか。そのような質問をしているのなら、その回答を俎上に載せてきちんと論じるべきだ。少なくともその結論は、裁判員裁判の終了直後に裁判所職員監視のもとで書かされるアンケートよりははるかに客観的なものだろうからね、ねぇ『徳島』さん。
徳島は「徳島ラジオ商殺し事件」でえん罪がそそがれたのがご本人の死後になってしまったところ。悔やみきれない「司法犯罪」のご当地です。その犯罪に関わった人たちの継承者たちが、この国の司法の正しい歴史と伝統を国民に教え知らすために裁判員制度を推進していると言っている。もう少し眉につばを付けて見てもいいんじゃないかな、ねぇ『徳島』さん。
□ あっ、またしても何か聞こえてくるような
何だか、マネージャーがうなってるぞ。いゃ、うなってるだけじゃない、1人で踊ってる。
ハァ 踊りおーどるなーあーらー チョイト 東京おーんーどっ ヨイヨイ♪
花のみーやーこーおーのっ 花の都の まんなかでっ サテ♪
ヤーットナー ソレ ヨイヨイヨイ♪
ヤーットナー ソレ ヨイヨイヨイ♪
ハァ とうきょよいとーこ チョイト にっぽんてらすっ ヨイヨイ♪
君が御陵威(みいつ)ーはっ 君が御陵威は天照らすっ サテ♪
ヤーットナー ソレ ヨイヨイヨイ♪
ヤーットナー ソレ ヨイヨイヨイ♪
ハァ 君と臣とーおーのー チョイト 司法のちーぎーりっ ヨイヨイ♪
結ぶみーやーこーおーのっ 結ぶ都の 三宅坂っ サテ♪
ヤーットナー ソレ ヨイヨイヨイ♪
ヤーットナー ソレ ヨイヨイヨイ♪
なに言いたいんだかなぁ、マネージャーは。
東京ってとこの奥深さかなぁ。御陵威(みいつ)って何だ?
どっかの新聞の論説委員に聞いてみよっと。
投稿:2014年6月10日