~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
外は激しい雷雨の午後、鸚哥大学の研究室の中はさらに騒がしいようで…
先輩、あの最高裁が求刑1.5倍の下級審判決を見直しそうだという話。今年5月6日のトピックス「『いま、最高裁は語りはじめます』ってか?!」でも教えてもらいましたが、6月26日に弁論が開かれたようですね。
うん、6月26日に最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)で弁論が行われたので、今日はもう少し踏み込んで説明しようか。
ちょっと待って。その前にもう一度、事件のおさらいを。これは、裁判員裁判開始翌年の2010年、大阪・寝屋川市で、3女(1歳)に暴行を加えて死亡させたとして、傷害致死の疑いで両親が逮捕・起訴。30歳の父親と31歳の母親が3女に暴行をくりかえし、父親が娘さんの頭を叩くなどして死亡させた、実行行為に加わっていない母親も同罪だとされた事件ね。
うん。1審大阪地裁は、「3女は食事もきちんと与えられず発育も不良になった。暴行は殺人と傷害致死の境界線に近い」と認定し、「虐待事件に今まで以上に厳しい罰を科すことが、児童の生命を尊重しようとする社会情勢に適合する」と量刑の理由を説明して、父親・母親の2人に、検察官の求刑懲役10年を5割超える懲役15年の判決を言い渡したんだ。
判決後の裁判員の共同記者会見の場では、「親にしかすがれない子どものことを考えると殺人罪より重い」と述べた男性裁判員がいたそうね。「殺人罪より重い」ってどういうことかって話題になったけど、うちもどういう意味かと思ったわ。たぶん、ひとおもいに殺されるよりも残虐って言いたかったのかもしれないけどね。
そうだね。そして、 父親・母親は最高裁に上告し、その結果、6 月26日に弁論が行われたって訳だ。
いよいよ裁判員裁判に関する最高裁の判断が問題になるわね。 裁判員の判断を尊重しなければならない制度推進側の姿勢としては、「重い判決を求める」裁判員たちの要求を無碍(むげ)に切って捨てる訳にはいかない。しかしそうかと言って裁判員たちの言うことを天の声とあがめ奉る訳にもいかない。
そうさ。裁判所はいま、制度推進の建前でやたら使った誉めあげ言葉と、先例との均衡を重視する伝統的基準のはざまで、ぐられぐらりと揺れているからね。最高裁自身、2012年3月には「よほど不合理でない限り、裁判員裁判の判断を尊重すべし」と言ったかと思うと、その年12月にまとめた裁判員制度実施状況検証報告書では「裁判の結果は総体としてみればこれまでの裁判と極端に異なっているわけでもない」と評価したりしていて、最高裁自身、本当のところどう考えているのかと全国の裁判官から見守られている。
最高裁は、原則として、裁判の途中で法廷を開きませんから。審理はすべて調査官の調査と裁判官の合議によって密室で進めます。
あのね。「開かずの門」というのは、最高裁は上告受理事件総数の9割以上が上告不受理決定になっていることや再審がほとんど行われないから言われていることなの。ともかくこの話はまた今度ね。
さっき、法廷が開かれないと言ったけど、死刑に関わる事件では、事柄の性質上慎重を期し法廷を開く長い慣行があるの。下級審判断の見直しは、下級審判断が逆転される可能性が出て来た場合ね。
だから見直しを求める当事者、今回の件で言えば被告人である父親・母親にとっては自分たちの言い分が認められるかも知れないことになったことを意味するんだ。 被告人側は、暴行の意思がなかったとして無罪を主張したほか、量刑不当の主張として「同種事件の過去の量刑傾向を著しく逸脱している」「裁判官は裁判員の極端な意見にブレーキをかける責任を怠った」と主張し、検察は「裁判員の参加で量刑の幅が広くなるのは当然」「社会情勢を重視する市民感覚を反映させるのは裁判員制度の趣旨にかなう」と反論したんだ。
でも、自身の求刑を5割も超えられたということは、検察の求刑は市民感覚をまるっきり反映していないって裁判所から宣告されたっていうことでしょ。検察としては形無し・赤恥・顔色なしの話で、「量刑の幅が広くなるのは当然」なんてすましていられる話じゃないんじゃない。
まぁ、一朝事ある時は(?)証拠のねつ造も厭わない検察だからねぇ、なんでもありっていうことかもね。
そうか、そう言えばあの事件も大阪だったよなぁ。
大阪地裁の裁判員裁判の結果が最高裁によって覆されれば、その結果はどうなるんでしょうか。
そうでなくても裁判員裁判に嫌気がさしている国民が激増している状況だからね。裁判員の出頭率がどんどん落ち込んでいるこのときに、裁判員の言うことに従ってばかりはいられないなんていう判断が出たら、それこそ生命維持装置を外された上そのアタマをトンカチでぶっ叩かれるくらいのダメージを受けることになるだろうね。
判決言渡しの日にちは後日決めるということになったようですので、判決の時には詳しく説明してくださいね。
もちろん。インコさん、大丈夫よね。求刑超えの判決は裁判員制度が始まってから急増しているし。裁判官裁判の10倍とも言われてるから。そのことについても機会を変えて詳しく説明してもらいましょ。
誰かに盗られるくらいなら殺してもいいかとか、刺さったまんまの割れ硝子とか、穏やかでない何とか超えの唄もあるけれど、求刑超えというのも穏やかさに欠けること甚だしいものがあるからね。インコ、羽をふるって皆さまのご期待をそれこそ超えるご報告をいたしまするぞ。
つったく…おだてりゃすぐ調子に乗るんだから…。
でもまあそれでちゃんとレポートを出してくれるならそれでいいけどね…
投稿:2014年6月30日