~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
なになに、ああ7月11日、『読売新聞』は「裁判員制度 本社全国世論調査」の結果を発表のこと。
そう。6月28、29日に全国の有権者3000人に戸別訪問をして裁判員制度について聴取した(回収率51%)ものですって。
終焉を彩る壮絶なデータを紹介すると。
□ 裁判員制度の仕組みを知っているか。
・知っている54%…10年3月調査より5ポイント下がった
□ 始まってからの印象は。
・裁判の内容が分りやすくなったと思う…20ポイント下がって22%になった
・裁判が身近に感じられるようになったと思う…19ポイント下がって36%になった
・国民の感覚が反映されるようになったと思う…12ポイント下がって39%になった
□ 裁判員として参加したいか。
・参加したい…4ポイント下がって16%になった
・参加したくない…3ポイント上がって79%になった
□ 制度は今後どうすべきか。-これは今回初めて登場した質問
・今のまま続けるべき18%
・見直した上で続けるべき56%
・廃止すべき17%
『読売』さんよありがとう。この調査に対する『読売』自身の評価をインコの鋭く可愛い目で再調査する。この手の報告によく顔を出してしゃべるいつもの学者さんの言説をインコの鋭い大きな声で切って捨てようぞ。
(インコさんは声が大きく爪が鋭いもんね)。これで読者の皆さんは裁判員制度と国民意識の対決状況をしっかり掴めるって訳ね。
『読売』記事の見出しを眺めるとですね。冒頭は「裁判員制度『継続を』74%」そして「『参加したくない』8割」そして「国民感覚の反映を重視」。意味分かりません。
そりゃ分らんだろうね。大半の国民が制度を続けることに賛成し、しかしそれよりも多くの人がやりたくないと言い、それが国民感覚の反映だってんだから、こりゃ分る方がおかしいわい。この調査結果について、インコに聞こえてくるいちばん多い意見は『読売』誤導説だ。
制度を今後どうすべきと思うかって聞くのに、「現状でGO」と「止めちまえ」を並べ、その中間に「見直して行け」を置いたら、たいていの人は真ん中をとる。分っていない人や思い悩む人ほど真ん中だ。回答がそうなるように『読売』が質問を仕組んだっていう見方さ。
「見直して行け」ったって何を見直すのかまったく触れない。制度の仕組みをあまり知らないと言ってる人に聞けば、たいがいはこんな回答になるものよ。誤導説には確かに説得力がある。
だがしかし、だがしかしだ。「現状でGO」論や「見直して行け」論を単に間違いだとか誤導だとか言って否定し去るだけでは、この調査結果を正しく見たことにはならない。
透徹した目で見れば、この調査は私たちに事柄の真実を熱く伝えていることに気がつくはずってことね。
そうです。今や国民の多くがこの国の司法を信用していない。この国の裁判はどうもおかしいと思っている。そのことを「裁判員制度の維持に賛成する」という形で表現しているのだ。それは監視の役目を少しでも果たさせたいという「司法不信の言い換え言葉」さ。現実の制度がそんな機能を果たしていないことは明らかだけどね。
だから、「国民の多くが裁判員になりたくない」と言っていることと「国民の多くがこの制度の維持に賛意を表明している」ということは、矛盾していないどころかしっかりつながっている。
つまりこれまでの裁判への不信感が制度維持への賛意という形をとっているってことですか。
そういうことさ。この国の司法の正統性を国民に教えるなどと言い募る最高裁や法務省の言動に、ほとんどの国民が惑わされていない。騙されていないと言ったほうがより適切だ。最高裁も法務省もおかしいぞ、信用できないぞという批判を「制度の維持」という言葉に込めて突っ返している。だから制度の維持を言いながら自分は裁判員をやりたくないと同時に言うことができる。それだけのこと。
この国の裁判官は長きにわたって無実の者を死刑台に送ってきた。無実の者をたくさん刑務所に送り込んできた。有罪に疑問が出ていた死刑囚に急ぎ死刑を執行することも厭わない。ようやく再審開始決定が出た袴田事件にも今検察は不服申立てをしているし。警察も検察も証拠を隠し、ねつ造し、うそを言う。法務省はそのことを反省するどころか、新しい人権侵害司法の構築に必死になっているだろ。
インコさん、お怒りモードスイッチが入ったようだけど、落ち着いて。
裁判員制度が始まって2年になろうとしたところで3.11が起きた。これまで最高裁を先頭にほとんどの裁判所が原発の稼働を推進する立場に立ち、国の責任を追及する原発周辺の住民に政府代理人の検事が対決して電力会社をかばった。
結果、絶望の司法が国民の眼前に一気に広がった。2億4000万の不信の瞳。
そう、今や深い深い疑惑の視線で国民は裁判員制度を見ているのだ。
うむ、普通の国民の中にこの制度を支持する人はもう暁天の星くらいしかおらんだろうよ。
もちろん。インコの読解の正しさは、どんどん明らかになるね。裁判員制度の仕組みを知っているかと聞いたら、知っていると答えた人が10年3月調査より5ポイント下がって54%になってしまった。知っている人が減るとはどういうことよ。
違う。そんな訳あるか。新聞やテレビが毎月、毎週裁判員裁判を報道しているのに、またどのメディアもしつこいくらい頻繁に裁判員制度の仕組みについて解説を展開しているのに、どうして仕組みを知る人が「減ってしまう」のか。「意外に増えない」のならまだしも、「前には知っていた人たちが時の経過とともに次第に知らない人たちになってゆく」のだから、これはもう現代の七不思議というほかない。
知っていたのに次第に知らない人になってゆくってやはり健忘症…
(無視して)最高裁の調査(14年1~2月実施)には「裁判員制度が実施されていることを知っているか」との問いがあり、これには回答者の98.8%が「知っている」と答えている。『読売』の「制度の仕組みを知っているか」という質問には54%しか「知っている」と答えていない。
つまり、実施していることは知っているが、仕組みは知らないという国民がこれほど多いところに、国民と制度の間の深い溝があるってことね。
そのココロは明らか。多くの人たちがいやになってしまったのだ。知っているかと聞かれても知らないと言いたくなってしまった。知っているかどうかを厳密に言えば、以前よりずっと知るようになった。ただし知った結果、知っていると言いたくなくなった。
今や宣伝すればするほど「仕組みを知らない」人が増えるという悲しくも哀れな構造になっているってことね。
考えてごらん。この4年間、裁判の内容が分りやすくなったと言う人が20ポイントも下がり、裁判が身近に感じられるようになったと言う人が19ポイントも下がり、国民の感覚が裁判に反映されるようになったと言う人が12ポイントも下がったら、それを異常事態と言わずしていったい何を異常と言うかね。
別の面から見ればだ。制度は今後どうすべきかと問われて、今のまま続けるべきだという人が18%しかいない、見直そうという回答を用意しても、誘導されず敢然廃止すべきと回答する人たちが17%もいる。そういうことだよ。
わかってきたじゃないか。『読売』は裁判員制度が真実暗礁に乗り上げていることを最高度のリアルさで説明してくれた。だがしかし、それはそのように読み取るのが正解だというインコの説明を聞いた皆さんがそう思ってくれるという話だ。『読売』自身は記事中でどのような説明をしているのかというと、もうそれはめちゃくちゃ。
えーっと。「国民感覚を反映した裁判員裁判の判決を重視する意見が多数に上るなど、国民の多くが制度に対する前向きな評価を抱いていることが分った」が、「制度開始当初に比べ、裁判員裁判への関心が低下している様子も読み取れる」。
何が「分った」だ。こういうのを現代の大本営発表という。国民が制度に前向きの評価を持っているのならどうして参加意欲がどんどん下がるか、その説明をしなさい。この4年間の国民の離反模様は「関心が低下している」などという甘っちょろい表現が当てはまるものでは全然ない。奈落に落ちるように見放されてきていると言うのが正確な説明だ。
マスコミが必死に制度を宣伝しても、いや宣伝すればするほど国民は離れて行く。守秘義務の緩和をどう思うかと聞かれたら、賛成が35%なのに反対がその1.5倍の53%だった。守秘義務の緩和が支持拡大の鍵だなどと考えている国民は実は少ない。裁判員裁判の対象を広げた方がよいかと問うたところ、今の程度でよいという答えが46%もいた。対象を拡大せよなんて考えている国民も決して多くない。政府・最高裁の提灯を担ぐマスコミや日弁連の思惑を国民は冷たい視線で眺めているだけなのだ。
ここにいそいそと登場するのは、裁判員裁判推進でいつも出てくる(人がいないのねぇ)後藤昭青山学院大学教授。
制度継続を言う人が7割を超えるのに裁判員になりたくない人が79パーセントに上ることを「矛盾した調査結果」と断じたね。やっぱり何もわかっちゃいない。
学者なら「矛盾」の解明をちゃんとしてみなさいよ、後藤クン。「やりたい人がやるのではなく、誰もがやるという制度の根幹がまだ十分に理解されていない」だって、なんのこっちゃ、えらいこっちゃだぜ。「まだ十分に理解されていない」どころか、だんだん理解の程度が下がっている。
それはなぜかというところをちゃんと説明できなければ、大学教授の看板が泣きます。
センセは、国民の参加意識の妨げになっているのが厳格な守秘義務だとのたまう。でもさぁ、その国民の多くが守秘義務を緩和してほしいなんて言っていないって、インコがさっき紹介しただろ。それがこの調査報告なんだよ。この調査報告の合理的な解説はボクにはできませんということか。それではお先真っ暗じゃござんせんか。
投稿:2014年7月23日