~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
「市民のための刑事弁護を共に追求する会」は、9月6日、福岡市のふくふくプラザにおいて、学習会を開催。インコ事務局からはマネージャーが出席し、「裁判員制度の現状」について簡単に報告しました。
その内容をご紹介。
1 減る出頭率とやりたい人たち
裁判員制度を推進している人たちはどういう人たちか
=死刑を存置し、この国の裁判は「正統」に行われてきたと主張する人たち
最高裁、法務省、検察庁そして日弁連執行部
「日本の司法は正統に行われてきた」といい、「裁判員を経験すれば子どもの教育やしつけにも生きている」と宣う。この人たちにはえん罪・誤判に対する反省はない
減る出頭率…裁判員候補者として呼び出されても拒否
出頭者18人、うち9人が固辞、残り9人が裁判員6人と補充裁判員3人という例も
裁判員として参加したい…16%(本年7月11日『読売新聞』)
最高裁調査もほぼ同様の数値
8割がやりたくないといっている中でやりたい人はどういう人か?
リサーチパネル調査結果 回答者数3万7110人…やりたい19.3%
やりたい人の主な意見を集約すると
「人を裁くチャンス、宝くじに当たったようなもの」
「お金がほしい、アルバイトの気持ち」
「裁判員に選ばれたら『死刑でいい。こんなクズ生きてても仕方ない』と言ってやる」
「何が何でも死刑判決を出したい」
2 裁判員裁判の判決
進む重罰化
裁判官裁判の判決(制度施行前3年)と裁判員裁判の3年比較
(最高裁「裁判員裁判実施状況の検証報告書)
06~08年 被告人7522人 有罪 7224人 96.0%
09~12年 被告人3885人 有罪 3769人 97.0%
(どちらも一部無罪を除く)
強盗致傷 94.2→97.2 殺人 97.4→97.7
厳重建造物等放火 96.4→97.2 傷害致死 97.6→97.9
強制わいせつ致傷と準強制わいせつ致傷 97.2→99.5
強盗強姦 90.5→91.4 強盗致死(強盗殺人) 95.8→98.2
覚せい剤事件だけは事件件数が増加、有罪率は97.2%→94.6%と下がっているが、最高裁は「背後に組織が関与している場合は『覚せい剤とは知らなかった』という言い訳は通用しない。有罪」という判例を示したので、今後どうなるかは?
求刑超え判決が相次いでいる。最高裁によると、制度施行から今年3月末までで求刑越えは43件。大阪の求刑1.5倍判決などの重罰も。
死刑判決は激減などしていない→『週刊文春』スクープのウソ
終局人員のうち、死刑判決が出ている殺人と強盗致傷を引き出して比較すると、終局人員が激減しているので死刑判決も減っているだけ
死刑判決が出ている殺人と強盗致傷の終局人員に占める死刑判決の割合(平均)
05~08年 0.71
10~15年 0.72
*09年は制度施行年、裁判官裁判での死刑判決のみのため排除
05年 殺人 836人 強盗致傷 1086人 死刑14人 0.68%
15年 殺人 332人 強盗致傷 357人 死刑 7人 0.73%
死刑判決・求刑超えに対し「裁判員の判断を尊重せよ」の大合唱
裁判員裁判の結論を尊重せよということは、3審制の否定。
法務省幹部「市民が死刑判決を出しているのに、大臣が執行をためらってはならない」
市民は裁判員制度に動員され、重罰・死刑に利用されている。
3 裁判員経験者の声
「よい経験をした」と言いながら大多数が沈黙を守るのはなぜか。
アンケートの取り方にからくりがある。
アンケートは判決直後にとられ、膨大な質問項目の一つ。
めったにできない経験だったから「よい経験」という項目に○をつけるだけ。
後日、落ち着いてからのアンケートなら果たして結果はどうなるか。
裁判員経験者は「裁判員には裁かれたくない」と(静岡地裁での裁判官との懇談)
8割が拒否し、経験者が沈黙を守る中で、積極的に推進を言い募る極少数の人たち
『裁判員のあたまの中』という本を読む。
「人を裁くことに対する恐れの気持ち」の欠如
好奇心やゲーム感覚で裁く
人の人生を左右することを楽しんでいるような発言
死刑事件でもタダでもやりたい
お金を払ってもやりたい
選ばれて心中「ふふふっ」と笑った
「国が決めたこと」にひたすら従い、自ら傷つきながら制度を受け入れる
なぜ、自分たちがこんなことをしなければならないのか疑問に思わない不思議
「事件がフラッシュバックして調子が悪い。死を直視することに慣れておく教育が必要。そうしないとPTSDになってしまう」
死刑判決の裁判員=被告人に黙秘権を認めることに疑問、自分たちの判断に不満を言ったり控訴したりすることを批判する人もいる
自分たちの判断が疑いの目で見られたり、不服を主張されたくないという不遜な思いがある。
この中で、急性ストレス障害で国賠訴訟が起きている。
4 死刑の全員一致を求めても…
「いま、裁判員になりたい人はどんな人か」を見ればどうなるかわかる
他の裁判員から「こんな悪い人を庇うのか」と詰め寄られたら…
宮崎地裁における死刑判決直後の裁判員による記者会見
「いろいろな意見があったが努力の結果、最後は全員が一致」
裁判長が死刑判決を出すと決めていたら…
裁判長は裁判員を解任することができ、解任の理由を明らかにする必要はない
「不公平な裁判をするおそれがあるとき」
「公判廷において、裁判長が命じた事項に従わず又は暴言その他不穏当な言動をすることによって公判手続きの進行を妨げたとき」
最後に「裁判員には辞任の自由はなく、解任の申し立てができるだけ。裁判所が認めたら解任さえる」
戦場で「こんなはずじゃなかった。帰る」と言っても許されないのと同じ
*インコの後日談
9月19日、東京地裁で出された死刑判決
田辺三保子裁判長の発言「裁判官・裁判員一同の意見」
投稿:2014年9月28日