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静かな怒りに満ちた記者会見

あっという間の判決後、場所を弁護士会館に移して記者会見。 001178まね0

会見席に佐久間敬子弁護士、原告のAさんと夫、織田信夫弁護士が座り、最前列席に高山俊吉弁護士が着席した。用意された席は満席、座りきれない記者も出る。

 会見は、織田弁護士の「判決が言い渡された直後であり、判決文を読み込んでおらず内容を精査していない。今後、原告と相談して控訴するかどうかの検討を行うので、説明がまだできない部分もあるかもしれないが了承してもらいたい」とのあいさつで始まり、記者からは主に原告のAさんに対する質問が多く出されたが、判決の問題については織田弁護士から話を振られた高山弁護士も発言するなどした。

 記者会見での発言要旨(重複した質問と回答は整理しています)

Q:判決を受けた今の気持ちは。
Aさん「腹も立たない。なるほど、これが国のやり方かと。自分の気持ちは伝わっていない。ストレスになろうが、病気になろうが、裁判員に参加した以上は我慢しろということ。国は信じられない。病気を認めても、具合が悪くなっても仕方がないということ」

Q:青木さんが裁判を起こしたことで各地の裁判所の対応が変わってきたことについてどう思うか。
Aさん「証拠写真をカラーから白黒にしろなどと頼んでいない。事件はきちんとした証拠で裁くべき。裁判は本当のことを見せなければならない。裁判員制度がなくなればこんな問題は起きない」

Q:裁判員の負担軽減よりも制度自体を問題にするということか。
Aさん「制度がなければそのようなことを考える必要もない」

Aさん夫「先ほどから証拠やメンタルヘルスの話が出ているが、中途半端。裁判を起こされて慌てて作ったものだ。それは調べてもらったら分かる。一言で言えば言葉にならないということ」

織田弁護士「裁判員裁判だからと証拠を変更すべきではない。訴訟指揮や立証方法に落ち度、不法行為があったと訴えていない。制度そのものが悪いと主張している」

佐久間弁護士「残酷な証拠だからとカラーを白黒にするだけでなく、イラストにしたりアニメにするという話まで出ているが、これでは証拠を変な形に歪めることを許容する制度である。裁判員制度は、日本の刑事裁判を歪めている。裁判員に苦役を課すだけでなく、刑事被告人の権利も侵害する」

Q:裁判ではAさんの負担に対する議論が深まらなかったと思うが
Aさん「国は聞かなかった。聞いてくれないので、半分も伝えられなかった。国には裁判員の負担について聞いてほしかったが、知らないと言った。これが国のやり方。病気になっても我慢しろということ」

Q:判決の問題について
織田弁護士「最高裁大法廷をなぞったような判決である。国民の権利を破壊している。声をあげていかなければならない。判決文には病気との因果関係を認めている。つまり個人よりも制度維持に邁進する裁判所である。今回の裁判は、国民一人ひとりの生命、安全を守るのか、国の都合を優先させるか、そのどちらを優先させるかを問うた。結果は、国のためなら命も差し出せという判決だった。“裁判員制度はいらないインコ”は判決の影響についてホームページに書いている。勝ったらもちろん、負けたら病気になっても賠償してくれないということで裁判員になる人がいなくなるのではと言っている。影響というのはそういうところに出てくると思っている」

高山弁護士「今回の判決には2つの問題がある。1つは、ストレス障害になっても我慢しろという。これは非常に残酷な話。裁判員はどんなに大変なことがあっても我慢しなければならない存在だと国はいった。もう1つは、最高裁の裁判員制度合憲判決の話だ。この判決は、上告理由として『裁判員を強いられることは憲法が禁止する苦役の強制にあたる』と明確に言っていなくても、全体としてその趣旨が上告理由に含まれていると考えてよいと言っている。それは刑事司法の死滅や自殺を意味するめちゃくちゃな論議である」

さん夫「負けたとは思っていない。国の命令なら病気になっても当然、その覚悟で参加しろという判決である。召集制度で死んだということと変わらない」

Q:Aさんは何が一番辛かったか
Aさん「選任手続きから強引で縛り付けるようなもので、この制度はおかしい。縛り付けたのは『赤紙』だけじゃない。選任手続きのときから罰金を払ったことがあるかとか親族のことまで聞かれる。辛かったのは(急性ストレス障害で)何もできなくなったこと。日常生活ができなくなったことが悔しい。包丁も使えない、洗濯もできない、掃除もできない。日常生活が出来ない。出来ていたことが出来なくなったことが悔しい。夫に迷惑をかけ死にたいと思ったこともある。死にたいとは何度も思った。私が居なくなればいいんだと。泣き寝入りしている人もたくさんいるんじゃないか」

Aさん夫「悲しいとか辛いとかでなく、なんと言ったらいいのか、憤懣やるかたない。その気持ちを自分の中で閉じ込めておかなければならない。どこかで限界がくるかと思った。でも妻の方がもっと辛い」

織田弁護士「それでも裁判所は苦役でないという。裁判所がダメなら、国会議員がもう一度考え直してほしい。裁判員制度を考える議員連盟のようなものをもう一度立ち上げ、制度廃止への立法措置をとってほしい」 

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投稿:2014年10月2日