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PTSD訴訟、裁判員制度は合憲、賠償請求を棄却

 弁護士 猪野 亨

下記は「弁護士 猪野亨のブログ」10月06日の記事です。
猪野弁護士のご了解の下、転載しております。

福島地方裁判所は、裁判員になり、遺体の写真を見ることによってPTSDを発症したとする60代女性の国賠請求を棄却しました。 

の訴訟は、裁判員制度そのものが憲法に違反していること、その憲法違反である裁判員制度によってPTSDが発症したのであるから、慰謝料を求めるというものです。
その意味では、元裁判員の側から裁判員制度の合憲性を争った初めての裁判ということがいえます。
被告人側が争ったものについては、最高裁は、ほとんど屁理屈をもって違憲の主張を退け、「合憲」としました。
裁判員制度 最高裁合憲判決

 最初から結論ありきの不当判決です。最高裁は裁判員制度の制度設計にも深く関わり、最初から当事者化していましたし、広報にも関与していました。
本来的に司法が政治化するとどのような問題が生じるのかを如実に示したものと言えます。
(当時の最高裁長官は、司法の判断と司法行政は別だと強弁していましたが、別ではなかったのです。)
裁判員側からみた場合、そもそも一律に国民を動員しようというのが裁判員制度ですから、私に言わせれば、制度そのものが憲法違反です。

 苦役の禁止(憲法18条)とは、国民に義務を負わせ、みたくもないむごたらしい遺体の写真を見せつけられる、このようなものは「立派」な苦役です。

 人を裁くことを強制されることは自体も思想良心の自由(憲法19条)を侵害するものであり、本来的に個別事情によって変わるというものではありません。

 このような国民の人権を侵害する制度を国家が創設することの是非が問われているということです。

 これは徴兵制と同じです。個々の国民が徴兵制による徴兵に応じるかどうかの問題ではなく、国がそのような制度を設けることの是非が問われているということなのです。

 もちろん国賠訴訟で損害賠償を請求する場合、この訴訟のように正面から制度の憲法適合性を争う場合によりも、その請求が認められる可能性が出てきます。

 個別に当該裁判員にとって苦役だったのかどうか、思想良心の自由を侵害していないのかという観点からその責任を問うことが可能になるからです。

 とはいえ、このような争い方をしたとしても、今の裁判所が元裁判員の請求を認容する可能性はゼロです。
国賠では、権力側に幅広い裁量を認めるものであり、その裁量権を明らかに逸脱するようなものでなければ、違法を認めないからです。

 その意味では、この元裁判員が裁判員制度の合憲性そのものを争ったことには大きな意味があったと言えます。

 この憲法違反の裁判員制度については、今後も廃止に向け、がんばりましょう。

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投稿:2014年10月17日