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司法改革の死を告げるベルは2度鳴る

admin-ajax[1]インコは昨年9月、弁護士激増や法科大学院政策の破綻について、ふくろう教授(現在は鸚哥大学名誉教授)からしっかり指導を受けました。今日は改めてその話をしたいと思います。21-‚Ó‚­‚낤

001181おやおや、今日も張り切っていること。

1-e1397901276348ふくろう教授が何を論じられていたのかダイジェストでお伝えすれば、だいたい以下のとおりです。今年(つまり昨年)の司法試験合格者は2049人。受験者数はまた減って合格率約26%。合格者は50人以上の9校で全合格者の半数を占める一方、合格者一桁が35校、ゼロが3校も出た。

006311000のー、法科大学院の卒業者の7~8割が司法試験に合格するはずだったのでは。

1-e1397901276348そうだよ。それが完全破綻した。政治も行政も経済も社会秩序も危なくなると司法がしゃしゃり出る。審議会の答申は「今般の司法制度改革は、政治改革、行政改革、地方分権推進、規制緩和等の経済構造改革等の諸々の改革の『最後のかなめ』と位置づけられる」なんて言ってたと。

006311000最後の金目…。

1-e1397901276348(無視して)「司法制度改革」が国を挙げての大政策になり、その柱が弁護士人口激増と裁判員制度だった。弁護士激増は、弁護士をべらぼうに増やして弁護士を貧困に追い込んで人権擁護どころじゃなくさせる政策。裁判員制度は1人ひとりの国民に犯人を処罰させることを通して秩序や国を守る気概を持たせる権力的司法教育。

006311000で、弁護士人口政策も破綻なんすか。

1-e1397901276348そう。「10年ころには合格者数の年間3000人達成を目標とすべき」なんて言ってたのが2000人程度でストップ。合格率も3割を大きく割り込んでこれも目標の3分の1。年々法科大学院離れが進み、今や受験者数はピーク時の5分の1。法曹の魅力も法学部進学の意欲も薄れて、今年(つまり昨年)の東大法学部の人気は史上最低になった。13年9月1日の『読売』の社説は「法曹養成の中核法科大学院が危機に陥っている」というものだった。

001181弁護士激増政策の破綻はマスコミも否定しようがなくなりましたね。

1-e1397901276348そのとおりです。さてここまでが昨年のお話。今回は最新の状況をご紹介した上で、このテーマをもう少し深掘りしようかと。

006311000かりました、お願いします。

1-e1397901276348今年の合格者は昨年よりさらに240人近く減らして1810人にした。法科大学院も30%近くが店じまいすることになったが、それでも合格率は上がらないどころかさらに下がってわずか21%。法科大学院離れは大学の法科離れに大きく進んで、大学法学部の志望者が全体に激減する状態になってしまった。

001178まね0う墜落状態ってことでしょうか。裁判員制度の破綻も悲惨な状態ですが、お隣はさらにすさまじい状況なんですね。

1-e1397901276348そうなんです。他方で、経済的理由などで法科大学院に通えない人のために用意されている予備試験制度は大人気。力のある人たちは、何もわざわざ法科大学院に行かなくったってと、ここにどんどん流れ込んでいます。

006311000なるほど、ボクみたいな前途有望青年の話ですね。

焦るどさくさ紛れに…(インコさんにますます似てきたわ)。

1-e1397901276348今年、予備試験に合格して司法試験に合格した人の数は163人。彼らの司法試験合格率は極めて高い。受験者のだいたい3分の2が合格している。法科大学院卒業生の司法試験合格率として当初予定されていた7~8割合格に迫る勢いだ。特に若い人たちの合格率が高い。20~24歳ではちょうど100人が受験して全員が短答式試験に合格、最終合格者が96人という超高率だった。

006311009ひぇーっ。

1-e1397901276348大学の法学部生が予備試験を通り超若年で法曹として出発し、若い法科大学院生も在学中に予備試験に合格して大学院を中退して法曹になる傾向が一気に強まっています。危機感を募らせた一部法科大学院は予備試験の合格者を減らせと文科省にねじ込んだりしているが、法科大学院の崩壊傾向には歯止めがかからない。

001176これはもう「きりもみ真っ逆さま墜落」ですね。

1-e1397901276348今年9月の全国紙の社説を見ると、『読売』(11日)の見出しは「法科大学院の不振は深刻だ」。内容は「身近な司法の実現は大事」とか「潜在的法的ニーズの考慮を」とか、増員大号令時代以来のさび付いた古い言葉を繰り返すだけ。一方『朝日』(12日)の見出しは「質を高め理念の実現を」。内容は「法科大学院から見ると逆風続き」とか「大学院の真価がこれから問われる」とか、それこそ徹底的他人事路線。法科大学院推進で突き進んだ過去はすっかり忘れた風情。

006311000きりもみ真っ逆さまををどうするのかっていう緊張感は感じられませんね。

1-e1397901276348『毎日』は、オピニオン欄で「法律家養成 望ましい姿は」というタイトルの特集を組んで「有識者」に話させているけれど、「経済的負担の軽減を」とか「法学未修者の教育充実を」とか「短期の資格取得を」とか、それこそ焦点の定まらないばらばら意見。ともあれ「弁護士絶対増員論」の呪縛から解放されない人たちの論議の限界を感じさせます。

001177この話に続いて、文科省の交付金配分の報道が走りましたね。

1-e1397901276348そう、それがまた法科大学院の世界に激震を走らせた。9月19日、文科省は法科大学院52校に支給する来年度の交付金などを5段階に傾斜配分する一覧を公表したのです。司法試験の合格率などを基準に段階的に交付金を減額し、最高で従来の90%、最下位グループは50%にするとしいます。東大・京大など13校は前者。北海学園・國學院・駒澤・専修・桐蔭横浜・愛知学院・京都産業の7校はかわいそうに50%組。下位の法科大学院の「退場」を通して法科大学院の生き残りを図ろうという国策ですね。

001181でも、これがきりもみ墜落からの起死回生策になるのかしら。法律家になることに魅力を感じなくなったり、法学部に進むことも敬遠する空気が世間にまん延しているっていうんでしょ。小手先の対策でそのすう勢が変わるようには思えませんけど。

1-e1397901276348インコもそう思います。だいたい「司法改革」が功を奏した歴史はないと言ってよいと教わりました。ふくろう教授によると、第2次大戦の前にもこの国には「司法改革」があったそうです。1920年代には陪審制が導入され、30年代にかけて弁護士増員の国策が進められました。しかし、陪審制は被告人の選択を認めたことで僅か3年ほどで破綻しました。ほとんどの被告人が選択しなかったからです。増員は法律の改正などを特にせずひたすら合格者を増やしたので弁護士の生活は窮乏し、国に生活の支えを求める空気が弁護士の世界に広がり、憲兵隊からは「弁護士業は正業ではない。国家重大事局において、泥棒の弁護をするのはヤクザの商売だ」と言われるようになる。そして戦争。

001177ついでですから、弁護士会の戦争協力についてもう少し歴史をひもといてみましょう。
1933年(昭和8年)3月27日、日本は国際連盟を脱退しましたが、日本弁護士協会会誌『正義』3月号の時評は「断固脱退せよ」でした。同年4月には、帝国弁護士会が通常総会で「治安維持法違反が通常の刑事手続きで処罰されていることを遺憾」とする決議を採択。1934年、日満法曹協会設立され、軍に兵器を「献納」する寄付金を弁護士会は募ります。1937年7月、中国侵略戦争が開始。1939年4月には「司法新体制運動」が始まり、帝国弁護士会は総会で「東亜新秩序の建設に万違算なからしめんことを期す」と決議し、7月には東弁・日弁・日満は「大日本弁護士皇軍慰問団」の派遣を決定します。1940年は大政翼賛会ができ、東亜法曹協会も設立されました。

006311009ひょえー

0011771941年12月8日太平洋戦争突入。日本弁護士協会は「畏やしくも宣戦の大詔を拝す洵に感激に絶えず聖旨を奉載し総力を挙げて東亜興隆の天業を翼賛せむことを誓ふ」の聖詔を、帝国弁護士会は「宣戦の大詔渙発せらる洵に恐懼感激の至りに堪えず我等法曹は益々奉公の誠を尽し司法権の発揚治安の維持に協力を以て聖戦の完遂に翼賛し奉らん」と決議します。11

006311009弁護士も全面的に戦争協力をしたんですね。

001177そうよ。弁護士会は会員に向けて戦争標語を募集したり、戦闘機を献納したり、さらには各司令官あてに感謝状を贈ったりしたの。でも、戦争協力の話はこれくらいにして、「司法改革」に話を戻しましょう。

1-e1397901276348今回の「司法改革」は、2001年の司法制度改革審議会の答申に始まると一応言えますが、弁護士人口の激増はそのテコの役目を果たさせようとした法科大学院の破綻を含めて激増策そのものが完全に破綻しました。一方、裁判員制度の方は、被告人に義務づけた(被告人に選択を認めないことにした)ことで戦前の陪審制のように3年で潰れるまでには至っていないものの、崩壊状態にあるのは法科大学院と同じです。

001181「司法改革」が登場するのは国の危機の時だと、ふくろう教授は仰っていたけれども、今回の「司法改革」も同じなんですね。

1-e1397901276348もちろんそのとおりです。政治の世界の最近のいろいろな状況を見てもわかるでしょ。ねぇ、ひよこクン。

006311000わかります、わかります。わかりすぎるくらい。それから言わせて貰えば、先輩がもうコーヒータイムにしたいって思ってることもわかります。はいっ。

投稿:2014年10月31日