~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
引っ張ったんでもなんでもないぞ。これだけのことを発表するには、あれだけの前置きが絶対に必要だったんだよ。第1篇では、実際の事件を取り上げて、裁判員不参加(拒絶)の現状を知ってもらった。第2篇では、裁判員選任の一般的な手順に即して、裁判員不参加(拒絶)の具体的な行動方針を提案させていただく。
参考資料として、最高裁事務総局が2012年12月に発表した「裁判員裁判実施状況の検証報告書」の添付資料「図表4 裁判員選任手続きの流れ」(下図)も紹介させてもらう。図中、選任決定への流れを示す下向きの矢印表示は、実際には手続きが進むと幅が極端に細くなる(「辞退等」に流れる方がずっと太くなる)のだが、そんなに細く描かないところはあざといなぁ。それにしても先に行くに従って色がどんどん濃くなってゆくのは「やりたいと強く思う人」が増えていくってことか。ワインの底にたまる澱を思ってしまうよ。
なお、以下の説明の中で「最高裁が……と言っている」という時は、特に断らない限りこの検証報告書の中でそのように解説されているということ。よろしく。
はじめに一言。インコは「辞退」という言葉が非常に気になる。はっきり言ってこの言葉を使いたくない。裁判員法にもこの図表の中にも「辞退」が頻繁に登場するが、「辞退」とは「へりくだって引き下がること」(広辞苑)だ。「勲位受章を辞退する」などと使ったりする。下々(しもじも)の者が上位の者にへつらい、恐れ入りますが遠慮させていただきますという時の言葉。裁判員制度は参政権に類似する主権者の権利のようなものなどという解説の嘘っぽさを強く感じさせるね。という訳で、以下は、特に「辞退」と言わなければならない場合以外は、主権者らしく「拒絶」という表現にさせてもらう。
本論に戻ろう。候補者就任の拒絶は実際には次のように行われている。
① 裁判員候補者名簿に名前が載ったという通知が最高裁から届いた時に返送する「調査票への回答」の中で多くの人たちが拒絶すると回答して候補者から除外されている。尼崎事件で言えば、118人中のおそらく大多数の皆さんがそれだ。この後も尼崎事件の数字を紹介してゆく。〔最高裁作成図表4で言えば、「調査票により辞退等が認められた人」にあたる〕
② 具体的な裁判日程が決まり、地裁が候補者を呼び出す。赤紙召集令状だ。その時に候補者が地裁に返送する「質問票への回答」の中で多くの人たちが拒絶を通知し、候補者から除外されている。呼出取消の通知をゲットして勝利の鐘がカランカランと鳴り響く。尼崎事件で言えば、282人中190人の仲間に入る。〔図表4中の「質問票により辞退等が認められた人」〕
③ 「転居先不明者ら」の判定に入るように工夫を凝らす人もいる。これも大事なところ。92人中の16人に勝利の女神がにっこりほほえむ。〔図表4中には「転居先不明者ら」に対する措置の説明がない〕
④ 拒絶回答をしないと当日裁判所に連行されるのか? 「裁判員 出頭しなけりゃ 被告人」なんてことは絶対にない。制度開始以来、不出頭で処罰された者は1人もいない。残った76人中に無視黙殺を決め込んだ人が17人もいるのだ。〔図表4中には無視黙殺者に関する説明がない〕そりゃ、書けんわな。
⑤ 選任期日が来た~。一応は裁判所に出かけて行き、決意を込めて裁判長に「自分は絶対にやりたくない」と言おうと思う人もいるだろう。この場でももちろん拒絶できる。実際、少なくない候補者が拒絶に成功している。尼崎で言えば59人中の11人。女神はんは、「あんた、ようがんばりなはった」ってウィンクしてくれるかも知れない。
⑥ これで結局、不選任率は400分の352、比率で言えば88%に達する。不選任の中には職業上選任されない人もいるが、大半は拒絶だぁ、そう拒絶の嵐、怒濤の進撃。
ここで話は大きく変わる。ボロボロこぼれるように抜けているというか、抜けていける構造になっていることに驚く皆さん。実は、最高裁は、我が選任期日の出席率は諸外国の陪審裁判の選任期日の出席率に比べてかなり高いと自慢していることを知っているだろうか。
こんなこと言ってるのだ。「(裁判員選任期日の出席率が高い理由は)裁判員候補者の負担が過重とならないように、書面による辞退という制度を設け、その運用を柔軟に行うこととした点にある」と。やりたくない人を期日前に除外している我が国は、当日の「勝手欠席」が外国よりはるかに少ないと言う訳だ。そら結構なことでんなぁテラダはん。
尼崎事件で言えば、もともとの400人から、純米大吟醸並に削りに削って76人まで絞っておいた結果、選任期日にはなんと59人もの「たくさんの人たち」(!)が裁判所に来てくれた。76人中の59人だから出席率は77.6%だァなんて解説するんだよ。
そういえば、最高裁も裁判員制度合憲判決(2011年11月16日)の中で、「辞退を広範に認めているから苦役の禁止にあたらない」ように言ってたし、福島地裁の外傷性ストレス障害判決(2014年9月30日)も同じような言い方をしていた。「苦役の強制」と批判されている手前、広く辞退を認めざるを得なくなっているんだ。
もともと裁判員法は辞退できる場合を厳しく制限していたが、制度実施の準備段階以来、この制度は国民から徹底的に批判された。そして、時の経過とともに嫌われ度がどんどん高まった。その経過の中で、政府・最高裁は、「嫌がる者は来なくてよい、やってもいいと思う者にこの制度を支えさせるしかない」というサバイバル方針を打ち出した。それは追い詰められ断崖絶壁に立たされた末の窮余の策だった。
ま、簡単に言えばそういう経過がある。そこで、インコは提案する。やりたくない者は早い時期からやりたくないと裁判所に拒絶意思を伝え(ここは丁寧に「お伝えし」と言ってあげよう)、早期に裁判員候補者から外させ(「外すことに協力し」)、嫌がる人を選任期日までに徹底的に振り落とす(「出席率を高めることに協力する」)のだ。
選任期日以降の手間も何かと省かせることにもなる。やりたい人ばっかり集まるから感謝状など出す必要もなくなる。そう、感謝状はインコがもらうことになるかも知れない。とにかく出席率は今よりずっと上がり、諸外国よりさらに高くなる。これで最高裁事務総局の鼻も高くなることは請け合いだ。
インコの具体的な提案の第1は、自分の住所地の地裁に「裁判員候補者名簿から自分の名前を削除してくれ」と要請することだ。
裁判員候補者から最高裁に返信されてきた「調査票」は、毎年11月末頃までに民間業者(昨年は共同印刷)の手にわたり、そこで辞任理由の区分けなどが行われ、年末頃までに全国の地裁に送られる。地裁はその名簿をもとに2月以降の裁判員裁判をにらんだ候補者選定準備に入る。
あなたが候補者名簿記載の通知を受け取ったのなら、名簿から自分の名前を削除してほしいと地裁に要請しよう。「調査票」に回答しなかったって? それでもよい。どんどん削除を求めよう。
だいたい、「調査票」は辞退できる場合を裁判員法の規定以上に絞り込んでいる。「裁判員を務める考えがない」などと書き込む欄も用意していない。それでもどこかの隙間に書き込むつわものもいるんだなぁ。実際、尼崎事件では、この「調査票」への回答を見ただけで29.5パーセントの候補者が外されていることを前に述べた。10人中3人がここで外されるんだ。
「調査票」の回答欄には、「重い病気又はケガ」という欄がある。ここに印を付けて返す人が驚くほどたくさんいる。その多くは本当は裁判員を務めたくない人たちなんだろうね。この際、裁判員を務める考えがないと正面から訴えよう。思いの丈を書き綴ろう。この人は絶対にやる考えがないなと思われれば、地裁の職員は静かにあなたの名前を候補者から外す。なんてったって、外傷性ストレス国賠訴訟で、現場は「無理強い厳禁」でぴりぴりしているんだ。
これだけ厭だと言われているのに無理強いして裁判員をやらせれば、その人の身体や生活にたいへんな苦痛・苦労を生じさせ、その全責任を裁判所が負なければならなくなるかも知れない。そう思えば、裁判所としては「これは外しておいた方がよさそうだ」と考えるようになる。
裁判員裁判が始まることになり、地裁から選任期日への出頭を求める呼出状が来た時には、ただちに、自分は裁判員を務める考えがないことを伝え、呼出の取消を求めよう。あなたが候補者名簿からの除外を要請していたとしても、その要請をしていなかったとしても、この行動をとろう(前者だったら怒りを倍返しにして取消を要求するだけのことだ)
送られてくるのは、選任期日の年月日と呼出時刻が書かれた赤紙召集令状だ。「正当な理由がなくこの呼出に応じないときは、10万円以下の過料に処せられることがあります」なんて書かれている。同封の「質問票」にも「裁判員を務める考えがない」などと書き込む欄がない。しかし、やりたくない人はやりたくないとはっきり書く必要がある。
この提案は、呼出状に対して拒絶の意思を明確に示そうということ。欄がないなら自分が欄を作るのだと言ってもよい。尼崎事件の例をまた引くが、282人中190人について拒絶意思が受け入れられていることを思い起こそう。やりたくないという意思を明確に示すことは、その後のあなたの思いと行動を青空のようにすっきりさせる。
やりたくない理由もできるだけ書こう。登録除外の要請を出していたのに呼出状が届いた場合には(そのような場合は極めて少ないと思われるが)、なぜ除外しなかったのかと厳しく批判しよう。
呼出を取り消すと「呼出取消通知」が送られてくる。送られてきたらすべては終了。送られてこなかったら? その時は出頭すると決める必要はない。尼崎には無視黙殺組が76人中17人もいたでしょ。よくよく考えるにしくはない。
やることや注意することはまだまだある。
「転居先不明」の応答の中には、呼び出されて困り切っている家族を思いやり、「あいつはここんとこ、どこに行っちまったかわかんねぇ」なんていう「親心いっぱいの弁明」を編み出す家族もあるだろう。にわか病人やにわかケガ人も出そうだ。調査票と違って、質問票は嘘を書くと処罰されることがある。「嘘を書いて処罰された人がいた」と聞いたことはないが、ここは正面突破の正攻法をお勧めしたい。
大切なことは、やりたくなければ裁判所には出頭しないということだ。正当な理由がないと処罰かもと言われるが、そもそも正当な理由ってなんなんだというところをもう一度考えよう。「当日、出頭しようとしたら寒気がした。風邪を引いたのかも知れない。他の人にはともかく、裁判所のみなさんにうつしては大変だと思い欠席した」っていうのも正当な理由だしね。なんてったって「命あっての物種」。ストレス障害になりたい人はあまりいないだろう。そして何度も言うように、不出頭で処罰された人はこの国に1人もいないのだ。
どうしても裁判所に出かけてゆき、そこで拒絶を訴えたいというのなら、その腹をしっかりと固め、何と何を言うか、きちんと頭を整理しておきたいね。と言うわけで、どちらもどっちも、すみからすみまでずずいーっと、グッドラック!
えっえっえっ!? 削除や取消の要請書って言っても書き方がわからないって?
へっへっへっ。そこよそこ。それが第3篇なのよ。さぁ、読む気になったでしょ A^◇^;)
投稿:2015年1月3日