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重罰裁判員を蹴っとばして最高裁はどこにとんでゆく

にゃんこ先生が海外出張から戻り、
これでトピックス再開と活気づく鸚哥大学研究室です・・・

001177にゃんこ先生が1カ月以上、ご不在の間に裁判員制度をめぐる情勢は大きく動きました。

1-e1397901276348そうです、そうです。今年2月には裁判員裁判が出した死刑判決を最高裁が否定しました。そのニュースでメディアは大騒ぎ。特に新聞各紙は政治面、社会面、解説、社説と、各頁がこの話で埋まったんです。

0249090私がいない間にどうしてそのニュースを深掘りしてアップしなかったのかね。君たちにできないことじゃないだろうに。

へ?まあその~それはですね。あの~その~。

読書うさぎ鳥会えず、各紙の見出しを紹介します。「裁判員の『死刑』破棄確定へ。最高裁、無期判決を支持。死刑判断の『公平』重視。『裁判員裁判 何のため』」、これは『朝日』。「裁判員死刑判決 破棄確定へ 最高裁決定 過去の量刑重視」、これは『読売』です。「裁判員『死刑』破棄確定へ。最高裁 2事件『無期』。裁判員の『死刑』破棄 『市民参加 何のため』、『涙も出ない』遺族、強い憤り」というのは『毎日』。みんな2月5日の朝刊。

1-e1397901276348(フゥー)こちら社説です。翌6日の『朝日』のタイトルは「裁判員と死刑 市民参加の責任と意義」と。翌々日7日の『読売』は「最高裁死刑破棄 裁判員に公平と慎重さ求めた」。「責任と意義」?「公平と慎重さ」? どちらも社の主張はまるで見えない。何を言いたいのかさっぱりわからない…。

0249090まぁ、ゆっくり読ませて貰おう。

001177では、問題の事件と裁判を雑ぱくながら紹介させていただきます。1つは東京・南青山の飲食店店長を殺害し、強盗殺人罪などの刑事責任が問題になった事件。もう1つは千葉・松戸で女子大学生を殺害し、やはり強盗殺人罪などに問われた事件。両方とも被害者は1人。東京高裁はこの千葉と東京の一審死刑判決を破棄して無期懲役を言い渡し、検察が高裁判決を不服として最高裁に上告していたのです。
どちらも一審裁判員裁判が死刑を言い渡し、東京高裁がこれを無期懲役に変更。この2つの高裁判決について、最高裁第二小法廷(千葉勝美裁判長)は2月3日、高裁判決のとおりでよいという決定を出した。最高裁は判断を判決で言い渡す場合と決定で言い渡す場合があり、今回は後者です。

1-e1397901276348「裁判員裁判であっても先例から外れた判断をすることは認められない」と言い切る最高裁の決定に、制度推進に走ったメディアは狼狽を隠せないです。『朝日』社説は「市民が悩み抜いた末の死刑判決がプロの裁判官に覆されることは、関係者ならずとも複雑な思いを抱くかもしれない。何のための市民参加なのか、と」と来ました。複雑な思いを抱いたのはほかでもない『朝日』さんじゃないのかいとインコは言いたい。

001181『読売』社説は「事件と裁判の説明に徹したが、『国民の視点や社会常識を判決に反映させることが、裁判員制度の趣旨だ。最高裁も過去の判決で、裁判員の判断を尊重すべきだとの見解を示している』と指摘。また、「無論、極刑を選択せざるを得ない事件はある。…凶悪犯罪を抑止するためにも、酌量の余地のないケースでは、毅然とした対処が必要である」と注文を付けることを忘れなかった。これで本当によいのかといかにも悔しそう。

0249091最高裁は、決定の中で、基本的な考え方として、「過去の裁判例を検討して得られた共通認識を議論の出発点にすべきであり、その原則は裁判官裁判と裁判員裁判とで変わるものではない」と言っているね。「過去の裁判例による共通認識」というのは、明治以来の刑事裁判を通して作り上げられた常識ということ、つまり裁判官の伝統的判断ということになる。

1-e1397901276348店長殺害事件については、被告人には以前に妻子2人を殺害して服役した経歴があるが、無理心中を図った前科の事件と今回の事件は関連が薄く、前科を重視し過ぎた一審判決は量刑が不当と断定しました。

001178まね0また、後者の事件については、殺害に計画性がなく、今回の事件に前後して起こした強盗強姦事件などは人の命を奪おうとした犯行ではないから、これを理由に死刑を選択するのは困難と言い切りました。

006311000要するに、「被害者1人は原則無期」という伝統墨守の大号令ですね。

0249091さてさて、「私の視点、私の感覚、私の言葉で参加します」のキャッチコピーを思い起こそう。「市民感覚の裁判」を売りにした裁判員制度だったはずだ。それがメディアや弁護士会を引きつける格好の材料に使われた。それはたいそうな撒き餌だった。

001178まね0ところが、この間、どんどん「ひどい奴には重い刑を」「被害者が一人でも死刑でいい」「求刑を超える判決を」「私たちの声こそ天の声」っていうことになってきました。そして現場の裁判官たちの中には時流に乗ってその勢いに調子を合わせる連中がけっこう出てきましたし。

1-e1397901276348それはそうですよね。裁判長が「それは違います」と言えば、たいていの裁判員はそれで静かに黙るのに、裁判長がそれを言わないんだから。

001177説教垂れやゲーセン気分などのごく少ない市民しか裁判所に出てこなくなる一方、「私はやりたくない」と言って出頭を拒絶するフツーの市民がめっぽう増えました。「市民」の大分裂です。

006311009そして制度は破綻のステージに突入した…。

0249091元を言えば、裁判員制度は「衣の下の鎧」だったのだ。飾りと本体の関係と言ってもよい。裁判員制度の立案者は、「この制度でこの国の司法の正統性を国民に学習してもらう」と言っていたくらいだからね。

1-e1397901276348つまり、「アンタの好きなようにやっていいよ」なんて本当は一度も言ってなかったってことです。

0249091にゃんこ先生:今回の最高裁決定の半分は本音。だが半分は「最高裁はまともな市民を求めています」というメッセージだ。最高裁がまともになったのではない、自身が国民から見放されていることを自覚し、言い換えると国民から見放されていることを認めない訳にいかなくなり、少しばかり衣替えをして国民のご機嫌をうかがっている、という図だ。

1-e1397901276348「死刑は究極の刑罰だから公平性の確保も大事」だって? 「死刑に処すべき具体的、説得的な根拠に欠ける」だって? カッコいいじゃん。でも、これでみんなは最高裁に惚れ直すかなぁ。裁判員やってもなんて考え直すかなぁ。

001177とてもそうは思えないわね。そりゃ無理筋ってものよ。

むふふますます、裁判員なんてやりたくなくなるだけでしょ。みんなイヤになっちゃうだけでしょ。辛くも残っていた厳罰大好き裁判員たちまで裁判所におさらばし始めたら、もう救いようがないんだよ寺田クン、てことですね。

0249091まっ、そういうことだ。現在の状況を一言で言えば次のようになる。一般の市民は、最高裁の言葉でますます裁判員裁判をやりたくなくなる。現場の裁判官は、ダメだダメだと最高裁から叱られてますますやる気を失う。

1-e1397901276348ホントにそうですね。実にすっきりしたお話です。

0249090よし、そう言ってくれたなら、君たちにもすっきりと一言言おう。

1234i(嬉しそうに)何でしょう。

0249090イヤ、簡単な話さ。これくらい君たちでちゃっちゃとまとめてアップできなかったのかねっていうことよ。

へ?うっ!

006311009えーっと。お茶入りました。

お茶そうそう、先生、これどこの国のお菓子です? 美味しそうですねぇ~

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投稿:2015年3月8日