~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
『毎日朝辛深読新聞』15年4月1日号外
長野県南東部の南アルプス山中で3月10日に墜落したジャパンライトウィングスのヘリコプターを巡り、大野恒太郎検事総長は3月30日、東京霞ヶ関で記者会見し、乗客の今崎幸彦最高裁刑事局長がヘリの操縦席に突然近寄り、操縦士の操作を力ずくで妨害し、機体の安定を意図的に失わせて墜落させたとの見方を明らかにした。
伊那市内の病院に収容された生存乗員の回復を待って詳しく聴取した結果、確認された。機長を含む3人の乗員を死亡させ自らも死亡したこの事件。検事総長は、最高裁刑事局長について被疑者死亡のまま殺人容疑で捜査することになると、苦渋の表情で語った。この日、最高裁事務総局と刑事局長の官舎の家宅捜索が行われ、関係証拠が押収された。最高裁や刑事局長の官舎の捜索は初めて。
写真:苦渋の表情で記者会見に応じる大野検事総長
今崎刑事局長は、長野地裁松本支部で今年1月に行われていた裁判員裁判で、裁判員と補充裁判員全員が辞任を申し出て裁判が暗礁に乗り上げたことを重く見て自ら現地調査に赴き、その際不慮の事故に遭遇したとされていた。ネット上では「三宅坂某重大事件」の名で騒がれていたこの事件。国土交通省運輸安全委員会は、昨日全容解明に向け全力を挙げるとし、政府は今日午前9時、緊急閣議を開催した。
事件は偶発的な事故ではなかった。
最高裁・法務省は昨年4月、制度の廃止を検討していると表明したが、現場からは制度実施の責任を問う声がいっせいに上がった。その中で、昨夏以来、評議の時間が極端に減り、書記官や事務官の間では裁判官だけの合議がさかんに行われるようになったことが話題になり、裁判員裁判が極端に形骸化したという噂が全国の裁判所に広がっていた。
そこで本紙は、昨秋「特別取材班」を設置、裁判員裁判の形骸化問題について集中的に取材を進めたところ、驚くべきことが判明した。当面、裁判員裁判を外観だけ実施するという「外観処理方針」、別名「生きてるふり方針」が打ち出され、これが全国の裁判官に極秘指令されていたというのである。
この話を取材班が掴んだのは今年1月。大阪地裁の裁判員裁判で左陪席を務めた未特例女性裁判官が、これでは裁判員裁判はないも同然だと思い詰め、地裁所長に涙の抗議をしているところをたまたま書記官に目撃されたのがきっかけだった。
方針の具体的な内容は次のとおり。裁判員たちには法壇に坐らせ被告人や証人の供述を聞いているふりをさせ、判決言渡しの際にも法壇に並んで裁判員たちの結論というふりをさせる。裁判員たちにはそれで十分意味があると指導する。証拠調べの間、裁判員たちは証人や被告人の供述を聞く必要はない。もちろん衝撃的な写真を見る必要もない。すべて裁判官がやるので静かに見ていてくれればよいと言う。守秘義務を厳重に告知し、ただし、裁判が終わったら「とてもよい経験をした」とアンケートに答えてもらう。これだけはきちんとやってくれないと手当を払いにくいと言う。
裁判員制度の廃止検討が公表されたのは昨年3月末。誰にでもできるなどと言われたところで、実施後も制度を学習する空気は国民の間にまったく広がらなかったが、この極秘指令はその国民総非学習状態を逆用した「終戦処理策」だった。黙って坐っているだけで意味があるという説明に、ほとんどの市民は刑事裁判はそういうものと受けとめていたようだ。ともあれ裁判員裁判の実態が昨年4月以来純然たる裁判官裁判になり、裁判員はこの1年間、文字どおりお飾りであった。今回の松本支部の「そして誰もいなくなった」裁判は、これでは市民参加の意味がないと裁判員たちがそろって異議を申立てたことによるということだ。
この極秘指令を出したのが今回死亡した今崎刑事局長だったというのである。関係者によると、良い評判のうちに誰も傷つかず制度の幕を引けると考えたと言っていたいう。取材班は刑事局長本人にも取材を申し込んでいたが、回答がないまま今回の事件が起きてしまった。
写真:今崎刑事局長
途方もない司法擬装策が「国の司法政策の誤り」への批判に発展することを恐れた刑事局長が自ら命を絶って真相を闇に葬ろうとしたと見られる今回の事件。かえって裁判所ぐるみ、最高裁ぐるみの「暗黒の司法犯罪」を浮き彫りにしたといえる。
この間、最高裁が裁判員裁判の死刑判断を是正するなど、伝統的な裁判所の判断を徹底する傾向を強めていたこともあり、最高検関係者は、この「終戦処理策」には、最高裁判事も関与しているのではないかと語った。
31日に記者会見した村越進日弁連会長は、「無念の極み。それにしても刑事局長はなぜヘリなど利用したのか」などと語った。取材陣からは、何を指して無念と言っているのかとか、ヘリ利用を問題にするのはピントがずれていないか、などと追及されたが、会長は「じゃぁ、あなたたちは残念ではないんですか」と逆ギレし、「盗聴拡大や司法取引を認める法改正を一日も早く実現してほしい」と泣き叫んで会見を打ち切った。写真:泣き叫ぶ村越会長
刑事局長の墜落死事件は国外にも大きく報じられた。各国首脳がこの問題に論及し、オバマ米国大統領は「墜落死とは語るに落ちる」と語り(『ニューヨークタイムス』電子版3月31日)、オランドフランス大統領は、「ウソは恋愛問題に限った方がよいのでは」と述べ(『ル・モンド』同日)、プーチンロシア大統領は「やり方が拙劣だ」と漏らした(『ロシースカヤ・ガゼータ』同日)。裁判員制度は歴史的失敗司法として世界に知られることになった。
投稿:2015年4月1日