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制度の墓穴を掘った出前講義-その近況報告

1-e1397901276348出前講義がまるきりうまくいっていない。

006311009何でしたっけ、出前講義って。

1-e1397901276348出前講義をもう忘れたか、キミは。

006311009なんだかんだといろいろ出てくるもんですから。

1-e1397901276348出前講義については-最高裁は出前講義「まいど!裁判所です」で何を訴える-をみてよ。去年4月、テラダ長官が登場して始まった出し物だ。

001177出前というのは料理などを注文した人の家などにそれを届けるサービスですね。食べたきゃお店に来いとは言わないよ、お宅にお持ちいたします、お宅にうかがい裁判員裁判のお話しを喜んでさせていただきます、っていうことでしたね。

1-e1397901276348そう、裁判員裁判にかかわっている裁判官が懇願、拝み倒し、泣き笑いの風情で一般の会社の会議室なんかに訪ねてくる。平生法壇でふんぞり返っている人たちにはストレスのたまる仕事さ。

001177裁判員になりたいと言う人はもともとあまりいませんでした。それがこの間さらに激減しています。今ごろになって制度を知りたいなんていう人もほとんどいません。この状況を何とか打開しようと最高裁が編み出したのが出前講義でした。全国の地方裁判所のホームページに「出前、始めました」なんて広告がいっせいに登場しました。

1-e1397901276348用があれば出てこいという役所が自分から出て行くと言えば、こりゃ少しは受けるんじゃないかといういかにも役人らしい発想だったが、それがやっぱり破産しているっていうことさ。

006311000うまく言っていないって、どういうことですか。

1-e1397901276348鳴り物入りのパフォーマンスが実際にはほとんど開かれていないのさ。いくら出し物といってもちんどんやさんのように町を練り歩くわけじゃない。お呼びがかかったところに出向いて行く仕組みだ。だから要請がなければ出かけていけない。そのお呼びがほとんどかからない。

006311009実際にはどんな風になってるんですか。

001177年の6月1日から今年4月30日までの11か月で全国で実施されたのは全部で127箇所だけ。東京7箇所、大阪12箇所、千葉4箇所、名古屋8箇所。長野、新潟、大分、那覇、仙台、盛岡、函館、旭川、釧路に至っては実にゼロ。

006311009東京でたった7箇所。

1-e1397901276348そう、たったそれだけ。大山鳴動出前7箇所。首都東京で月に1箇所も開かれなかったという計算さ。いやなものはどうやったところでいやなのだ。

001177「税金はお届けにならなくても結構です、いただきに上がります」って言われてもっていう感じですよね。

1-e1397901276348もう一つ大事なことがある。出前講義のポイントは「裁判員経験者の参加」だった。裁判員になった人たちのほとんどが「よい経験をした」と言っている。その言葉を出前講義の場で披露して貰えば、食わず嫌いの人たちもそんなにいいものならひとつやってみるかと言い出すのではないかという狙いがあった。

006311009最高裁は「感動派95%超」を本気で考えていたということになりますか。

1-e1397901276348本気でそう思っていたのか、追い込まれてそれしかないと考えたのかはわからん。

006311000で、裁判員経験者の参加は実際どうだったのですか。

1-e1397901276348それが見事に失敗した。裁判員経験者はほとんど参加しなかった。参加したのは全部でわずか27人。

006311009全部で27人? 一つの裁判員裁判の裁判員が正6人、補充2人程度ですから、27人と言えば3人か4人の被告人の裁判員がすべてだったということになりますね。

1-e1397901276348そうだ。裁判員裁判6年で裁判員を経験した人の数は5万8000人を超える。被告人の数で7600人を超えている。出前講義に参加したのはそのうちのたった27人、それも延べ勘定の可能性もある。

006311000延べ勘定って?

1-e1397901276348あっちの出前にもこっちの出前にも顔を出す妙な出たがり屋がいたんじゃないかっていうことさ。実人数かどうかわからんという話よ。

006311000「よい経験をした」と言っているという例の話はどうしちゃったんですか。

1-e1397901276348そうそう、いい勘してるな。ほとんどの裁判員経験者が「よい経験をした」と言っているという話そのものがインチキくさいということが、これではしなくも暴露しちゃったということだ。

006311000そうですよね。大半の経験者が本当によい経験をしたと思っているのなら、こういう機会にどんどん出てきて自分の思いを皆さんに紹介したらよいのにと思います。いくらなんでも27人では、最高裁も地裁も恰好がつかず窮地に陥っているのではないでしょうか。

001177前講義が明らかにしたのは、裁判員制度がこれほどまで市民に嫌われているということと、裁判員経験者が「よい経験をした」と言っているという例の話がとんでもない作り話じゃないかということを、あらためてみなさんに知らせたということです。

1-e1397901276348出前講義は、断末魔の裁判員制度の姿を全国の地裁の裁判官を通して国民に知らせる一大イベントになった。ま、裁判員裁判にかかわっている現場の裁判官には、そのことを肌で感じる貴重な機会にはなっただろう。そぞろ店じまいの時が来たなと感じただろうね。

006311000だから、最高裁はこのことを公表していないんですね。

1-e1397901276348うまくいってたら、憲法記念日に行う最高裁長官の記者会見でも大々的に発表しただろうさ。

001177今日の説明が根拠のない説明ではない証拠に、最高裁事務総局がまとめた「出前講義の実施状況」を最後に掲げて、私たちはさぁ飲みにいきましょうか。

006311000それはよいことです。制度の不幸は私の幸せっていう言葉もあります。

1505012それは初耳ですが、ま、いいでしょう。浴衣を着てどこかのホテルのバーなんかに行っちゃってもね。出前をとろうなんて言いませんよ私たちは。

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投稿:2015年6月27日