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制裁ゼロ 死ぬ苦しみは寝たふりして隠す

1-e1397901276348ジャーン。こういう条文を知っているか。      

次の各号のいずれかに当たる場合には、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。

一 呼出しを受けた裁判員候補者が、第二十九条第一項(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、正当な理由がなく出頭しないとき。

二 呼出しを受けた選任予定裁判員が、第九十七条第五項の規定により読み替えて適用する第二十九条第一項の規定に違反して、正当な理由がなく出頭しないとき。

三 裁判員又は補充裁判員が、正当な理由がなく第三十九条第二項の宣誓を拒んだとき。

四 裁判員又は補充裁判員が、第五十二条の規定に違反して、正当な理由がなく、公判期日又は公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問若しくは検証の日時及び場所に出頭しないとき。

五 裁判員が、第六十三条第一項(第七十八条第五項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、正当な理由がなく、公判期日に出頭しないとき。

006311000シリマシェーン。

1-e1397901276348ふむふむ。わからないのにわかると言う方が見苦しい。おのれの無知を恥じるな。考えてご覧、私の知性の出番がなくなるのはそもそも世の損失だ。

001178まね0(インコさんに話させてあげようと、わからない振りをしてあげているのにそれがわからないんだよねぇ。話すとちょうつがいがどこか外れる…)

1-e1397901276348裁判員法第112条のことよ。あんまり関係がないところは省略してわかりやす~く説明してあげよう。最初の「次の各号のいずれかに当たる場合には、裁判所は、決定で、10万円以下の過料に処する」。これはいくら何でもわかるよな。

006311000はい、大丈夫です。

1-e1397901276348次は「一」だ。この「一」はこれだけで「いちごう」と読む。「二」は「にごう」。ちなみに算用数字で「1」とくるとこれは「いっこう」、「2」なら「にこう」。これは「ごう」よりランクが上。っていうか、「ごう」はこの場合とかあの場合とか、いろんなことを並べて掲げる場合に多く使われる。弟子一、弟子二、弟子三っていう具合にだな。

006311000ま、いいです。内容に入って下さい。

1-e1397901276348うん、まず呼び出しを受けた裁判員候補者が、裁判員等選任手続の期日に正当な理由がなく出頭しないときなどにこのペナルティーを受けるっていう訳だ。出頭義務は裁判員法第29条に規定されている。「一」はそう言っている。

006311000なるほど。

1-e1397901276348「二」は区分事件の審判に関することであんまり使われない規定だから、この際無視しよう。で、「三」。これは宣誓などに関する規定だ。裁判員法の39条2項は、裁判員たちは、「法令に従い公平誠実にその職務を行うことを誓う」という宣誓をしなければならないことになっている。

006311000へっ、宣誓…ですか。

1-e1397901276348そうだ。正当な理由なしに宣誓を拒むと最高10万円のペナルティーが科される。

006311000正当な理由がある宣誓拒否ってどんな場合ですか。後学のために教えて下さい。

お茶戦国時代以来の我が家の家訓として宣誓だけはするなってことになっている。先祖代々高校野球でも入社式でも宣誓だけは死んでもやるなと言われているというような場合だ。

焦る(ホントかしら)

1-e1397901276348ま、その程度の話と聞いておいてよろしい。そういう心配が基本的に無用だっていう話をこれから話すからね。四号は読んで字の如し。裁判員たちが正当な理由もなく公判期日などに出頭しないときにもやっぱり最高10万円のペナルティーが科される。

006311000これはわかりますよ、しっかりと。

1-e1397901276348では「五」にいこう。これは、審理が終わっても簡単に解放しない、判決言渡しなどに出頭してこないとこれも格好つかないから最高10万円のペナルティーだぞっていう規定だ。

006311000「制裁は続く~よ、ど~こまでもっ♪」ってわけっすね。

1-e1397901276348そう、まとめて言えば、裁判員法112条には「正当な理由もないのに裁判員等選任手続の期日に出頭してこなかったり、宣誓を拒んだり、判決言渡しの日にサボったりすると最高10万円の過料が科されるぞ」って書かれているのさ。

006311009ひょえー。だけどみんな出頭してないじゃないすか。新聞だってテレビだって宣誓を拒んで過料を払わされたとか判決日に裁判所に行かなかったのでペナルティーを取られたとか報道してないし…。そうか、日本中が家訓だらけだったのか…。

1-e1397901276348そこ、そこ、そこだぜ兄弟。インコは人間界の知り合いに頼んで、最高裁に過去のデータを開示せよと迫って貰ったね。

001177ほっほっほっ。で、どういう結果でした。

お茶きたいか、やっぱり聞きたいか。

006311000もったいぶらないで話して下さいよ。

1-e1397901276348次のそれぞれの質問にそれぞれの回答があったね。実際は質問も回答ももう少し詳しいのだが、意味が変わらない範囲で私が要約した。読んでくれ給え。ちなみに黒字が質問、最高裁の回答が赤字だ。

□ 各地方裁判所は、裁判員候補者が裁判員等選任手続期日に正当な理由なく出頭しないとか、裁判員が公判期日等に正当な理由なく出頭しないとかの実情についてどのように把握しているのか。また、最高裁判所はどのように把握しているのか。
 各事件の審理を担当する裁判所が書面とか電話とか直接とか、それぞれの方法で違反になるかどうか検討することになると思うが、個別に判断することなので一概には言えない。最高裁は過料に科した事件の報告を求めて把握しているだけ。

□ 「違反はあるが過料は科していない」のか、それとも「違反がないので過料を科していない」のか。前者なら把握しているはずの「違反と認めた件数」を明らかにされたい。また、前者については過料を科さなかった理由をどのように把握しているのか明らかにされたい。
違反はあるが過料は科していないのかとか、違反がないので過料を科していないのかとか、そういう点について最高裁は把握していない。

□ 最高裁判所は、各地裁の裁判所(裁判体)に、裁判員法第112条違反の有無や実情などについて、どのように把握せよと指示し、実際、最高裁としてどのように集約しているのか。
把握や判断は各地の裁判体の判断事項なので指示を出す立場にない。最高裁が行っているのは、実際に過料を科した事件の報告を求めることだけ。

□ 裁判員法は、「最高裁判所は、毎年、裁判員裁判の実施状況の資料を公表する」と定めている(103条)。不出頭理由の資料は公表しているか。していなければそれは定めに反することにならないか。
毎年、「裁判員裁判の実施状況等に関する資料」の「第4.その他」の中で「裁判員候補者及び裁判員等に対する制裁を行ったとして報告がされた事件はなかった」ことを公表している。具体的にどのような資料を公表するかは、大学教授やジャーナリスト等を含む幅広い分野の有識者が参加する「裁判員裁判の運用等に関する有識者懇談会」の助言を受けて定めている。

1-e1397901276348どう思うかね。ひよこくん、この回答を。

006311009うーん、ヘンだ、なんともヘンです。

1-e1397901276348どうヘンなのか、解説してみて下さい。

006311000なんと言っても過料が1件も科されていないっていうおかしさです。4人のうち3人が出頭してこなくてもみんな正当。裁判員たちがどんどん辞めて、誰もいなくなってもみんな正当。どうなっちゃってんのっていう話ですよね。

001177いくら何でもこれはおかしいぞって世界ですよね。

006311000それから、この回答がウソでないとすると、にも関わらず最高裁が信じられないくらいのほほんと構えてるっていうことです。

001177本当にそうですね。違反したら制裁が科されるという規定がある以上、その決まりがどのように運用されているのか、それとも運用されていないのかについて、現状を調べて適切に指導するのは最高裁の当然の責任のはずです。

1-e1397901276348人をバカにしたような不出頭通告をした人とか、ほかの裁判員や補充裁判員にたいへんな迷惑をかけた脱走裁判員とか、「メチャクチャ話」が現場にたくさん発生しているはず。最高裁としてはなにからなにまでしつこいくらい指導をしているはずだ。

006311000この報告は112条をめぐる現場の本当の姿を隠しているという印象がどうしてもぬぐえません。

001177最高裁刑事局の不処罰方針の現場指導が少しもうかがえないようにカーテンが引かれているっていうことでしょうかしら。

006311000「裁判員裁判の運用等に関する有識者懇談会」っていうのは何ですか。最高裁が隠れ蓑にしているように見えますが。

1-e1397901276348裁判員裁判実施の直前の時期に、制度の運用などについて助言を受けるために立ち上げた最高裁の諮問組織さ。大学教授やジャーナリストなんて言っているけれど、制度推進の先頭に立ってきた実務家が中心の組織。制度の延命に汲々としている最高裁に不都合なことなど言う訳がない。

006311009うーん。

1-e1397901276348最近の出席者の名前を紹介しておこう。法律実務家として、刑事法学者の坂巻匡や椎橋隆幸、弁護士の竹之内明、元裁判官の龍岡資晃、最高検公判部長の三浦守など。それに元読売新聞論説委員桝井成夫、労働政策の研究家今田幸子、心理学の内田伸子などという顔ぶれさ。

006311000制裁をしたかどうか以前に、正当な理由のない不出頭などがなかったかどうかについて、現場の実情がどうなっているのか気にする人たちなんていないのですか。

1-e1397901276348いるわけないさ。そんなことを言いそうな人は最高裁が選ばないからね。そういうのを最高裁は「有識者」と言わないのだよ。

006311000そうか、こんなところにも断末魔を隠蔽しようとあがく最高裁の姿が透けて見えるんですね。

1-e1397901276348そうさ、彼らは常にちょうつがいが外れているんだ。

1505013なるほどねぇ

 

 

 

 

投稿:2015年7月10日