~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
世間は3連休というのに、相変わらず3羽は鸚哥大学の研究室に集まっている。よほど学問が好きなのか、行くところがないのか、まあ先立つものがないのだろうけれども・・・。
さてさて、「裁判員候補者名簿登載通知」の「寺田親書」見ましたか。
見ました、見ましたよ。別名「裁判員制度」の「解体新書」ですよね。感動の涙にむせんでルンルンでした。
冗談は休み休み言ってくれないか。だいたい世の中には言ってよい冗談と書いてよい冗談がある。
アホ、世の中には言ってよいことと言っちゃいけないことがあるのだぞ。
えーと。見出しは「最高裁判所長官からのごあいさつ」です。本文の冒頭は「このたび、法令の手順に従った抽選の結果、あなたが裁判員候補者に選ばれたことを御連絡いたします。来年一年間に、具体的な事件で裁判官とともに裁判をする裁判員に選任される可能性があることを御承知おきいただきたいのです」とありますね。で、寺田長官の顔写真と。
文章論として言えばだ。こんなくそ面白くもない文章を真剣に読む市民はいないということだ。読まれる文章と言うのは、例えば「10席あまりのちいさなちいさなビストロ。猫の絵画に囲まれながら食べ応えのあるビストロ料理とおいしいワインでおくつろぎください」ってなメッセージカードだね。これに可愛い猫の写真なんか入れて店の前にそっと並べてご覧。正当な理由のない入店拒絶は処罰の対象なんて言わなくてもお客さんはどんどん入ってくれるのよ。それも自分からお金を払って。そこんところちょっと考え直したら、隼町の再考裁長官さん。
先輩は鳥なのに猫好きだったんすか。オ・ド・ロ・キ。で、これが学術的と。
いやいや、ここまでは話の入り口よ。噺家ならここで羽織をちょいと外すところさ。
うん。今日は、裁判員候補者名簿がどのように作られ、どのように候補者に知らせる仕組みになっているのかという、ま、「裁判員候補者名簿」原論とでも言えばいいかな、それを講義する。案外知られていないところだろうと思ってね。
そう言えば、ボクには「最高裁判所」っていう大きな字がドーンと載っている仰々しい封筒っていうイメージしかないな。
裁判員候補者名簿が作られるまでを説明しよう。まず、各地の地裁は、毎年9月1日までに、翌年に必要になると見込む候補者の数を管轄区域内の市町村に割り当て、その数字をその市町村の選挙管理委員会に通知せよということになっている。こういう決まりはすべて裁判員法に書かれている。
地裁も大変ですね。翌年の「収益見通し」を立てなければならない商店主のようなもの。
そういうこと。出頭率のさらなる低下をこのくらいと見込んで、その分かさ上げもしなければいけない。
そしてここに選挙管理委員会が登場するんですね。だから、裁判員になるのは参政権に似たようなものだなんていうのかしら。
地裁から通知を受けた選管は、保管している選挙人名簿に登録されている者の中から地裁指定の員数をくじで選ぶ。
へーっ。クジっておみくじみたいなヤツですか、それともこよりなんか使うのか…。大吉なんて書いてあったりしたらどうするんかな。
クジのやり方までは裁判員法に書かれていない。実際には最高裁と総務省が相談してクジの方式を全国的に統一しているに違いない。大吉も小吉もあるわけがないだろ、トンチキめが。
はーい、このクジは、大吉と凶しかなくってですね。選挙人名簿に番号振って、大吉は何番と何番、当たりの凶は何番と・・・。
(無視して)選管は、くじ引きの結果に基づいて、候補者の氏名、住所、生年月日の一覧表を作る。これを「裁判員候補者予定者名簿」という。裁判員候補者になる者を決めるのは地裁で、選管はその前段階だから、候補者に「予定者」がくっつく訳だ。
で、選管は10月15日までにこの「予定者名簿」を管轄の地裁に送らなければならない。
そりゃ大変だよ。それにその作業の過程で情報漏れを起こしたりしたら、重大な責任問題になるし。
それで、各地の選管は、いつ、どこで、どのようにその予定者っていうのを選んでるんですか。
すべて霧の中。よらしむべし、知らしむべからずっていう感じなのでしょう。
さて、地裁は、選管から予定者名簿を受け取ったら、これに基づいて「裁判員候補者名簿」を作らなければならない。基本的には予定者名簿がそのまま候補者名簿になる。
けれど、予定者名簿に載っている者がもう死んでいるとか、衆議院議員の選挙権を持たないとか、欠格事由(義務教育未終了、禁錮以上の刑を受けた、心神故障者)があるとか、就職禁止事由(国会議員、裁判官、弁護士など)があるとか、そういうことがわかったら、地裁は、裁判員候補者名簿から外さなければならない。
わからん。これも霧の中。国会議員や裁判官ならすぐわかるだろうが、ほとんどは直ちにはわからない人たちだ。でも統計表などを見るとここでばっさり大量に削られている。どうしてこんなにたくさん削れるのかわからないね。
そのとおりです。さて、この段階で、今回の騒ぎの「裁判員候補者への通知の段」に入る。
「裁判員候補者名簿登載通知」ですね。
そう、そのことについて、裁判員法第25条は次のように規定している。「地方裁判所は、…裁判員候補者名簿の調製をしたときは、当該裁判員候補者名簿に記載をされた者にその旨を通知しなければならない」。今回はこの通知をした訳だ。さぁ、ここまでの話で候補者名簿登載通知をめぐる説明は理解できたかね。ヒヨコ君。
いや、ちょっと待って下さい、先輩。理解できないところがあります。
これまでの一連の先輩の話はすべて裁判員裁判を実施する地裁の話でした。どうしてここに、最高裁判所や最高裁長官の話が出てくるのでしょうか。
いやはや、はやいや。いや何を言っているのか、自分でもよくわからんが、キミはよくそのことに気がついてくれた。そこを話すのが今日の学術講演の中心だったのだ。
ボク、そんな凄いことを言ってるんですか。自分じゃ全然気がついていませんけれど。
気がつかずにそれだけのことを言えるのは、天才かもしれない。いや天災かな。説明しよう。候補者名簿登載通知までのすべての作業は地裁の仕事なのだ。法律の条文はすべて「地裁は……をしなければならない」という規定ぶりになっている。
ここには終始一貫、最高裁の出番はない。何から何まで地裁が執り行うように法が義務づけている。考えてみれば、裁判員裁判をやるのは地裁だし、裁判員を選び出して裁判を実際にやるのも地裁の仕事だ。そこに他から口出しをしたら裁判の独立に対する侵害になりかねないね。
そこがインチキなのだ。通知書面の表紙にどでかい字で「最高裁判所」と印刷されている。でも内容をよく読むと、通知文書の発信人は各地の地裁になっている。つまり、建前は本文にあり、表紙はインチキということだ。
それは、最高裁の「威光」を前面に押し出したいという権力臭ふんぷんの手口なのさ。汚らしい奴らよ。
日本中で誰よりも法律を守れと言わなければならない最高裁が、法を犯してまで地裁の仕事を最高裁の仕事のように見せかけることについて、いったいどう弁明しているのでしょうか。
釈明らしい釈明は何もしていない。したくてもできないだろうね。忙しい地裁の仕事をお手伝いしているのだというような説明もあるが、それは到底説明にならない。「ぶっちゃけ、最高裁の権威で国民を恫喝しようとしているのです」と言えば正直なのだがね。
さぁ、そこに寺田最高裁長官のご登場と来たのですね。さっきヒヨコ君が読んでくれた冒頭の一文にもう一度目を通してご覧なさい。
「このたび、法令の手順に従った抽選の結果、あなたが裁判員候補者に選ばれたことを御連絡いたします」。
法令の手順に従った抽選が行われたことだとか、その結果あなたが裁判員に選ばれたことだとかの事実は、地裁が超高度の守秘義務をもって情報を独占しなければならないことで、最高裁といえどもその実情を知っていてはいけないはずなのに、その情報をもう手にしましたよと公然と言い切ったことになる。
それだけじゃない。「御連絡いたします」と来た。裁判員法の定めによって「ご連絡する」のは厳格に地裁と決められている。最高裁ではない。いわんや最高裁長官などでは断じてない。
もともとこの通知封筒の表紙に最高裁判所と印刷されていること自体に問題がある。インコはこれまでもそう言ってきたけれど、今回の最高裁長官の連絡挨拶を見て、この違法状態は極限に達したと思ったね。
インコさんは、今日は触れなかったですが、実際の発送作業をやっていのは民間業者で、その業者は最高裁が入札で決めているんですよね。そして、その業者に各地裁・支部がデータを送り込んでいるはずです。
そう。インコは「地裁」と一括りにいってきたけれど、それは裁判員裁判を開く地裁本庁と地裁支部をまとめて言っていたもので、実際には本庁や支部が別々に準備をすることになる。
それにしても、どうしてここまで最高裁は暴走するんでしょう。また、これから先どこまでこの長官は暴走するんでしょうか。
それは何度も言っているように、裁判員制度がもうどうしようもないところまで来ていることに関係します。背に腹は代えられないということです。長官にすれば、文句あるヤツはもう一度出前講義に行ってから言えなんていう気分なんでしょう。
出頭率はこれからもどんどん下がりそうです。また芸能人を出すか、またまた天皇を引っ張り出すか。
売れ行き最悪に落ちた商品に応援を買って出るタレントがいるとすれば、それは人気落ち目の人たちだけでしょう。
ここで、インコは一句。そう、最近は皆さんが短歌や狂歌をよくするので、インコは都々逸で迫ります。
口語による定型詩のことで、七・七・七・五の音数律に従うのが基本です。
インコさん、都々逸はやはり恋歌でなければ。
出前座敷(講義)は お呼びがなくて 送りし文も 袖にされ
さすが、いかにもお茶を挽いてる売れない芸妓って感じが出てますね。千客万来の夢見てもダメってことだよ、テラダ君。
儚い夢に 威信かけても 終い時だよ ダメ制度
投稿:2015年11月23日