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オウムの控訴審逆転無罪判決で今年のおさらいを

001177良い年でも悪い年でも年の瀬がきます。今年も奈落に向けてひた走り感の裁判員制度でしたが、それを象徴する事件がいくつもありました。おさらいの年末といきましょう。

1-e1397901276348そうそう、寺田長官ご下命の「出前講義」の失敗もそうだったし、長官の候補者名簿登載通知への片思いラブレター同封もそうだった…。

006311000うろうろ市民につきまとうのはストーカーのようなものではないかとも言われました。

1-e1397901276348凋落度を加速させた裁判と言えば、オウムK被告の1審有罪を逆転させた高裁判決があげられるだろう。

00117720年前にオウム真理教の信者たちが起こしたとされる東京都庁郵便物爆発事件。殺人未遂ほう助罪などに問われ、1審東京地裁の裁判員裁判で懲役5年を言い渡された元信者K被告(43)の控訴審判決が11月27日に東京高裁で開かれ、大島隆明裁判長は1審判決を破棄して無罪を言い渡したんでしたね。

006311000大島裁判長は1審が有罪の根拠とした元教団幹部I死刑囚(45)の証言を「信用できない」と指摘しました。

001177爆薬原料の運び役として起訴されたK被告が、原料の薬品が事件に使われることを認識していたか否かが争点になっていて、弁護側は無罪を主張していましたが、これを受け入れたのでした。

1-e13979012763481審判決によると、K被告は1995年4月、山梨県内の教団施設から東京都内のアジトまで爆薬原料の薬品を運んでいる。翌月、元幹部らが爆弾を仕掛けた小包が都庁の知事秘書室で爆発し、職員が重傷を負った。この事件は教団に対する捜査のかく乱を目的としていたという。K被告が薬品を運んだのは地下鉄サリン事件の約1か月後。教団に対する捜査が連日報道されていたことなどから、1審判決は菊地は危険な薬品と知って運んだはずだという結論を導いた。

0011771審裁判員裁判は爆発物取締罰則違反は無罪にしましたが、殺人未遂のほう助罪が成立するとして懲役5年を言渡し、一方控訴審は殺人未遂ほう助についても1審判決をひっくり返して無罪を言い渡しました。

1-e1397901276348裁判員たちの有罪判断を逆転させたことでまたまた大騒ぎ。『読売』は「高裁『市民感覚』覆す」とどでかい横見出しを打ち、「主要事件の有罪揺るがず」などと素っ頓狂な縦見出しも打った。

001177ついでに言えば、12月にも千葉地裁の裁判員裁判で有罪とされていた覚せい剤密輸事件で東京高裁が1審判断をひっくり返して無罪にしています。

1-e1397901276348そうだ。そういう裁判が続くと裁判員裁判はボディーブローを受けたように力を失い、制度が自壊してゆく。
力はとうに失い自壊もしているから、正確に言えば、水に落ちた犬が叩かれていると言った方が正しい。

001177さて、オウムK事件。高裁逆転無罪で騒がしくなれば、「有識者」の皆々さまがそろい踏みでおしゃべりを始める。さっそく『読売』は、12月10日、論点スペシャル「オウムK被告 高裁無罪の是非」という全面特集記事を組みました。
それにしても「是非」というタイトルには、受けとめられないという気分がにじみ出ていますね。

1-e13979012763484人の論者は全員弁護士。鈴木和宏氏は一連の教団事件で主任検事を務めた元検事。山室恵氏は教団元幹部に死刑を言い渡した元裁判官。渡邉修氏は刑事訴訟法の学者で刑事弁護もするという人。そして四宮啓氏は裁判員制度を作った責任者の1人。

006311000なんだかなーという人たちがやっぱり出てくるんですね。

001177控訴審判決は言いました。「危険な薬品という認識と、爆弾を作って人を殺傷するという認識は質が違う。17年も前のことが記憶に残っているというI死刑囚の証言は不自然で信用できない。根拠不十分な推認を積み重ねと論理飛躍の1審判決」。

1-e1397901276348この控訴審判決を皆さんはどう評価したか。簡単に紹介する。
鈴木氏はさすが元検事だ。「木を見て森を見ない控訴審判決。爆弾の材料とまで認識していなくても、何らかの危険な化合物を作ってテロ行為に使うことは認識していたと判断した1審判決の方が常識的で論理的」。

山室元裁判官の評価は逆だ。「K許すまじで強引に起訴したという印象がぬぐえない。爆薬の認識がなかったとして爆発物取締罰則違反を無罪にしながら殺人未遂のほう助を認めた1審判決はちぐはぐ。全国手配の『犯人』なら爆弾のことを知っていた筈だと思われたのだろう。社会を揺るがす重大事件の裁判員裁判には『世間の感情』に影響される危険性が潜む」。

渡邉センセイは「裁判員裁判の判決をプロの裁判官が書面を読んだだけで覆したのには強い違和感がある。裁判員制度の根幹を揺るがしかねない。他人に危害を加えるような犯罪行為を手助けするという認識があればほう助犯になる。高裁は硝酸がテロ行為に使われるとまで認識するのは容易ではないと言うが、幹部らが何らか違法なことをするのではないかと思うのがふつう」。刑事訴訟法の学者って、三審制のことや刑事基本権のことがあまりわかってなくてもいいのかしら。これでどんな弁護活動をしているのかね。

さて、裁判員制度を作った有責当事者の四宮氏はのたまう。「1審より控訴審の方が常識的で具体的で説得力がある。控訴審が有罪に疑問をいだけば無罪に戻るのであり、控訴審の無罪判決は司法制度が機能したことの表われとも言える。しかし、裁判員参加で国民にわかる公正透明な裁判が実現され、裁判員が真剣に評議したことには重要な意義がある。誇りに思ってほしい」。

150504-03なんじゃこの話は。キミは「控訴審で司法制度が機能した」なんて涼しげに言ってるが、「1審裁判員裁判で司法制度が機能しなかった」ことをどうして論じないのか。山室氏はそこに踏み込んでいるじゃないか。キミは、控訴審は常識的で具体的で説得力があったと言った。それは言い換えれば「1審裁判員判決の方が控訴審判決より常識的でなく具体性に欠け説得力がない」ということだ。どうしてそれが「裁判員参加で国民にわかる公正透明な裁判が実現されてよかったね」という話につながるのか。物を言う時には起承転結がしっかりしないと支離滅裂と言われるのだよ。

001178まね0裁判員裁判が崩れる過程をまざまざと見る思いがします。感情裁判のどうしようもない限界。そこに依拠しようとする検察や御用学者の法律破壊。裁判に責任を感じる裁判官のホンネ。何が起きても起こっても「私の可愛い裁判員ちゃん」と唱え続けるしょうもない人。読めば読むほど味の出てくる特集でした。

001177最後に一言。この控訴審判決に対し東京高検は上告しました。最高裁がどう応えるのか。見物聞き物腫れ物がこれから始まります。最高裁は自分が撒いた種から生まれた異様な植物の成長を重視するのか、国民参加は国民重視とはまるきり違うと言い切ってしまうのか。

むふふどちらに向かっても、裁判員に参加する気運がさらにさらに下がる話になることだけは間違いないね。ホントとほほの世界だよ、テラダ君。来年はどうするのさ。

投稿:2015年12月31日