~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
猪野亨弁護士ウェブ連続講座
「マスコミが伝えない裁判員制度の真相」第9回
それまで、最高裁は、「裁判員のご機嫌を取れ」みたいなことを言ってきた訳です。お客様扱いしてやってきた。マスコミもお客様扱いです。そのような流れの中で、裁判員がガンとして首を縦に振ってくれないとなれば、これはもう、諦めるしかないとなっちゃう訳ですね。
高裁判決も「重すぎて不当とは言えない」として、控訴を棄却する。これも最高裁の意向をおもんばかって、そういう判断を下したんだと思うんですけれども。それが、最高裁で、ひっくり返されちゃうものだから、右に倣えの司法官僚たちは、右往左往するということに繋がっていく。
「裁判員の発想を尊重せえ」なんてことが、最初に広められてしまっていたものだから、こういった裁判員たちが、「重罰だ」というような意見を述べたときに、裁判官が適切に言えないということなんですね。
この問題で一番驚いたのは、裁判員制度の創設に関わった京都大学の酒巻匡教授が、「裁判官が現場できちんと指導しているのか」みたいなことを言ったことです。あんたたちが、作った制度でしょうと思う訳です。そういう制度設計にしたのは誰ですか。その人が、こういう判決が出たことに危機感を持つというのは、本末転倒でしょう。ほら、見たことか、という結論になっちゃった訳です。
ここまで裁判員を煽て上げ、批判をしないまま来て、結局、どういうところに行き着いたかというと、死刑判決を下さなくても良い者に死刑判決を下した、求刑の.5倍もの重罰化にしてしまった。
それが高裁、最高裁でひっくり返されてしまった、これはいきなりですよ。今まで抑えに抑えて黙認してきたことが、ついに黙認できないところまで来てしまった。最高裁をして、黙認できないところまで来てしまったために、いきなり、破棄と、あるいは、死刑判決破棄を踏襲というところまで、いってしまった訳です。いきなりだったから、元裁判員たちが、承伏できないと怒る。
そうすると、国民の間では、マスコミも含めて、「何のための裁判員だ」となるんです。
2ちゃんねるは酷かったですね。この判決が出た後、「何のための裁判員だ、こんな制度いらない」。結論だけは一致します(笑)。
本当に、黙認状態が続いてしまったがために、どんどん、暴走し始め、限界を超えてしまったというところが、今回、問題点として噴出してしまった。
だから、どちらの側に立っても矛盾ということになってしまった訳です。
ですから、裁判員裁判の判決が、最高裁にまで危機感を決定的にもたらしめるということは、制度の矛盾としてはっきりしてしまったということです。
国賠訴訟で慌てふためく
それに拍車をかけたのが、PTSD発症による国賠訴訟ということです。この訴訟を契機に、マスコミは、配慮みたいなことを言い出したのですが、率先して裁判所が変わってしまいました。
生写真のようなものは見せない。イラスト化する、白黒にする。これが証拠と言えるのだろうかというようなものを裁判に出す。率先して裁判所が変えてきた。
国賠訴訟が起こされるなんてことは、想定外だっただろうし、こういうことが行われることによって、なおいっそう裁判員離れということが進んでしまった訳です。
悲惨な遺体写真を、誰も見たいなんて言う人たちはいない。逆に、裁判員制度が本当に国民の側から求めたものであったら、そういうものをきちんと見た上で判断すべきものとなる訳です。その覚悟がないのは当たり前でしょう。自分たちが求めた制度ではないのですから。
その中で、ああいう問題が起きてしまったがために、どんどん、刑事裁判が粗雑になっていくことになる訳です。
PTSDを発症したということでは、途端にマスコミは大騒ぎをしました。しかし、それ以前から、同じような事件というのは沢山あったんです。そういう意味では、報道もきちんとされているんです。
2010年の『読売新聞』ですけれど、「遺体写真から目を逸らし涙」と記事があり、また、「裁判員女性、遺体写真を見て体調不良」とか。これは福岡の事件ですね。体調を崩して仕事も辞めたとか。しかし、大きく報道されなかった。こういう人たちにどう配慮するのということが、まったくないままに、みんな、見て見ぬ振りをしてやってきて、今回、国賠訴訟を提起されてしまったから、慌てふためいた訳です。
マスコミは、これまで、そういう写真を見ても裁判員は頑張って来たと報道してきました。「涙を拭いながら、頑張って来た」というように持ち上げてきた。そういったことの反省はないままに、国賠訴訟に至って、それまでのことについては一切黙殺で、慌てふためいたのは裁判所だけということなんです。
インコ一言:国賠訴訟の判決は、「裁判員を務めて病気になったことは認める。しかし、辞退できたのに辞退しなかったあんたが悪い」と。それでも裁判員、やりたいですか?
投稿:2016年2月4日