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裁判員制度の現状を日弁連はどう捉えているか-その2

1-e1397901276348『自由と正義』その1の内容があんまりひどいんで続く論考を読む気も聞く気がしなくならはったって? あかん、あかん。やってみなはれ、読みなはれ。艱難辛苦ナンジの玉は傷だらけって言いますやろ。言わん? 言わんの馬鹿。

001178まね0…………

1-e1397901276348トザイトーザイ、一同松下きみまろ感にひたされながら、今日は「裁判員制度の現状を日弁連はどう捉えているか-その2」にゆるり進みまひょか。

0011780…………(かなりハイ。今度は『自由と正義』を結構読み込んだ風なんだけど、そのせいかしら。先行き心配…)

1-e1397901276348今回のタイトルは「我々の弁護活動は、裁判員の心をつかんでいるか? ~裁判員アンケートから見た弁護活動の評価と弁護士会の取組み~」。千葉県弁護士会の菅野亮氏と東京弁護士会の前田領氏。前回は西の大阪なら、今回は東日本勢。お二人とも経験7、8年くらいの会員のようだ。20160415maedasugeno1

00631100「裁判員アンケート」って、あの裁判員裁判を経験した裁判員や補充裁判員たちに経験の感想を聞いた調査結果ですか。

1-e1397901276348そうだ。どの地方裁判所も実施している。今回のテーマはそのアンケート結果から自分たちの弁護活動を見直そうということなんだな。

0063118謙虚じゃないですか。

1-e1397901276348さぁどうだろう。制度批判に謙虚なら評価してもいいが、こういう時の謙虚には食わせ物の疑いがある。

0063118食わせ物?

1-e1397901276348我々の弁護活動は裁判員制度に反対する人たちの心をつかんでいるか?」なんていうタイトルなら、もう少し素直に聞く気になるということさ。

0063118なるほど。

1-e1397901276348のっけから言ってしまうが、レポートの出だしで「ん?」と思ってしまったな。「弁護人は説得的で共感されるケースセオリーを確立してわかりやすく伝える必要がある、その手かがりをアンケートに求める」という話から始まっている。

0063118ケースセオリーってそれ何ですか。

1-e1397901276348ケースは事件、セオリーは理論。その事件の弁護人の筋立て方針ってところかな。ケースセオリーとはそもそも何かなんて嬉しそうに論じている連中が多い。推進派がやたらに好む鹿鳴館風の言葉だ。これについては「その3」で詳しくしゃべろうと思っているので、そこはお楽しみだ。

0063118で、そういうことを考えるのって、いけないんですか?

1-e1397901276348はっきり言っていけないね。

0063118それはまたどうして。

1-e1397901276348この国の裁判官のほとんどは現場を知らないし人の心もわかっていない。それなのに何となくわかっているような気持ちでいる。刑事弁護人の仕事というのはそういう裁判官たちに本当のところをわからせるためにどう闘うかというのがAでありZなんだ。そこにあるのは裁判官たちとの火花を散らす闘いだ。「説得的で共感されるケースセオリー」というこの引けた姿勢はそもそも何だってことよ。

00631100へらへらすり寄るな、意を決して決起せよってことですか。きびしい!

150504-03当たり前だ。えん罪の被告人を死刑台に送り込んでも、再審で無罪になって死刑台から生還しても、この国のほとんどの裁判官は他人事のようにのほほんとしている。「我が国の裁判は正統に行われてきた」なんて平気で言い張る。そういう連中が裁判員制度を考案した。

00631100そこに市民の裁判官が入ってきて新しい風を裁判所に流しているということは………。

1-e1397901276348ないね。裁判員たちは裁判官以上に暴走している。規則も基準もだから何なんだっていう連中が裁判所の中を我が物顔に歩いている。高裁で自分たちの判断がひっくり返されたら不満たらたらだ。キミも見てるだろ。

0063118いうことは。

1-e1397901276348「説得的で共感されるセオリーの確立」とか「わかりやすく伝える必要がある」なんて甘っちょろいこと言ってんじゃないよってことだ。こういう物の言い方では弁護人に求められる戦闘精神がどこにも感じられないってことさ。

 0063118そうか、そこに先輩は怒っているのか。

1-e1397901276348裁判員アンケートの結果はこうだ。「弁護人の法廷での説明等のわかりやすさ」は年とともに評価が落ち、2012年には「わかりにくい」が45.5%まで増えた(最高裁発表同年報告)。一方、検察官の説明の方はけっこうわかりやすいと評価されている。14年アンケでは「検察官の説明がわかりにくい」という回答は27.7%しかいなかった。

00631100弁護人は涙ボロボロですね。

1-e139790127634814年アンケでは、「話し方に問題あり」が28%、「説明が詳しすぎる」が7%、「わかりにくい」が21%、「質問の意図内容がわかりにくい」が30%とある。どうにもこうにもという数字だ。

00631100ホッ。全然だめじゃん。で、スゲノ君とマエダ君はこれについてどう言ってるんですか。

1-e1397901276348これは弁護活動以前の問題だ、ビデオクリティークなどを活用しようって言っている。

00631100なんですか、そのビデオクリティークって。

1-e1397901276348ビデオはキミの知ってるビデオ。クリティークは講評ってことだ。

00631100なんでそんな横文字を使うんですか。

1-e1397901276348「裁判員制度は陪審制の日本版だ、みんなで一日も早く陪審制を実現しよう」なんて言いまくった日弁連が「法廷指導の専門家」とか言われている人をアメリカから呼んできて講義させたもんだから、横文字がまかり通るようになったんだ。

0063118なるほど。で、そのなんたらティークを使うとうまくいくんですか。

20160201うまくゆく訳がない。裁判員がどうして話し方に問題があると思ったのかとか、説明がどうして詳しすぎると思ったのかとか、どこがわかりにくいと思ったのかとか、どういうところで質問の意図内容がわかりにくいと思ったのかとか、そういうことが何一つ明らかにされていない。そんな状況下でどんな横文字を使われたって、だから何なんだってことにしかならない。

0063118裁判員たちは弁護人の活動について具体的に意見を公表することは許されないんですか。

1-e1397901276348そのことを直接禁止する規定はないが、心証形成の過程や評議の秘密を暴露することにつながりかねないから、みんな口をつぐんでいる。

00631100そうか。黙っているのか。

1-e1397901276348だから、こんなアンケートの結論を通告されるだけでは弁護人としては対策の立てようがないし、現実抜きの講評を聞かされても何の役にも立たない。

0063118横文字を使う前にやるべきことがあるっていう訳ですね。

1-e1397901276348そのとおり。今日の君はいつにもまして物わかりがいいぞ。

0063118それほどでもありません。お話を進めてください。

1-e1397901276348インコがもっと言いたいのはその先のことだ。

0063118その先とは。

1-e1397901276348裁判員たちの意識状況を明確にしない調査には基本的な信頼性がないということだ。

0063118というと…。

1-e1397901276348自民党の国会議員を対象にした安保法案に関するアンケート結果を一般の世論調査の結果とは言わないだろう。今、裁判所に集まってくる裁判員就任希望者たちがどんな人たちかということを抜きにして論議しても一般市民の意識分析にはならない。

0063118議論の前提を欠いている。

1-e1397901276348当たり前だ。変な連中の共感を得るようにしようと敢えて言うのなら別だがね。

00631100この弁護士さんたちにはそういう問題意識はないんですか。

1-e1397901276348ない。考える気もなさそうだ。アンケの答えは天の声といった雰囲気だ。脳天気なもんだ。

0063118何を考えているのかわからない人に共感される筋道を考えるというのは確かに難しいですよね。

1-e1397901276348その難しさを突破する秘策を言ってみろっていうことだ。書いている本人がわからないことを他人にわかれというのは無責任の極みだろう。

00631100でもなんか整理してますよ。「弁護人の態度」「声の大きさ・言葉遣い」「資料の配り方」「尋問内容」等々。

1-e1397901276348何を言うか。声が小さいとか、居眠りをしているとか、ジーパンをはいていたとか、Yシャツのボタンが外れていたとか、資料の字が小さすぎるとか、誤字脱字が多いとか、弁論要旨の内容や書き方が連続して長いとか、いちいち紹介するまでもない与太話ばかりじゃないか。

00631100裁判員の関心の在り方がわかるということですね。

1-e1397901276348こんな話に振り回されて、「裁判員の心をつかんでいるか」なんてもっともらしい議論をする気が知れん。もっと大事なことがあるだろう、キミたちはそういうことには関心がないのか、ということだ。

0063118で、皆さんの結論は。

1-e1397901276348「終わりに」に書かれている文章を紹介しよう。これが全文だ。「弁護人の求める結論が結果として裁判官及び裁判員に受け入れられない場合はある。しかし、早口で何を言っているのかわからない、あるいは声が小さくて聞こえないということでは、主張が共感されるとかされない以前の問題である。長く書いた弁論要旨をそのまま提出し、後で読んでおいてもらえばよいという発想は通じない。また、弁護人は、裁判員に共感されるケース・セオリーを構築し、一貫した訴訟活動を行う必要がある。弁護人が裁判員の心をつかむために、法廷でのコミュニケーションの在り方及び共感されるケース・セオリーに基づく一貫した弁護活動の重要性を見直す必要がある」

0063118ふーん。こういうことしか言うことがないんですかね。

1-e1397901276348今日は、ほんと鋭いね。で、「終わりに」について少しだけ指摘してあげよう。第1、全国の弁護士に、裁判員の心をつかめなんて言う前に、君たち自身が裁判員アンケートを正面から評価・批判せよ。第2、こんなことではダメだと言う前にこうせよと指摘しろ。第3、自分でこの文章を読み返してみよ。いつもこんな風に同じことを繰り返すような弁論をしているのか。

0063118うーん。

1-e1397901276348第4、言葉の重要性に触れながら「ケースセオリー」と言ったり「ケース・セオリー」と言ったりするな。どっちでもいいことだけど、一つの論文の中で表現が変わると、弁護人の表現が統一されていないなんて裁判員たちから酷評されるのだよ。言葉は神経を使って用いるものだ。

00631100きびしいっ。

1-e1397901276348いやいや大甘な批評だ。裁判員裁判の弁護活動を本気でやるなんてことは本来あり得ないというのが私の考えだ。インチキ刑事裁判制度のもとに本気の刑事弁護は存在しない。もっともらしく言えば言うほど話はウソっぽくなる。それがインコの本当の感想なのだ。では、諸君、インコは次の準備があるので、これで失礼する。

001177ふぅ~。今日は出だしでけっこう心配したけれど、結論はきみまろ風とはずいぶん離れて、大演説になって安心したわ。

0063118確かに。でも、このずれ加減というかはずれ加減は先輩の真骨頂だから、まぁしようがないかなとボクは思います、はい。

 

 

投稿:2016年4月15日