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「憲法と裁判員制度を考える」 集会を開催しました

弁護士 猪野亨

下記は「弁護士 猪野亨のブログ」11月6日の記事です。
猪野弁護士のご了解の下、転載しております。

北海道裁判員制度を考える会では11月5日、日体大の清水雅彦先生をお招きし、集会を開催しました。
雪まじりの雨という悪天候の中、30名もの人たちに集まって頂きました。
ありがとうございました。判員に対する声掛けを行った工藤会組員が起訴され、その裁判が始まりました。

  清水先生には、「憲法改悪の動向と緊急事態条項など自民党改憲案の問題点」と題して講演して頂きました。
自民党憲法改正草案を元に、本来の意味で憲法の意義から遡っての解説であり、憲法は国家を縛るためのものであるというものです。
健康にまで国家が介入してくる健康増進法なども考えさせられる問題です。
タバコ問題も例に挙がりました。タバコに対する国家による規制の問題です。
しかし、他方で清水先生は、他者の人権に対する尊重ということについても、本当に理解しているのかという問いかけをされていました。
本来、自分がタバコを吸いたい自由と、それを嫌う人の自由との調和です。迷惑を掛けるような吸い方はもっての他なのですが、こういった集会が終わった後で、みんなで飲みに行ったりすると途端にタバコを吸う人がいるが、これは問題だと。
少なくともその場に集まっている人たちの意向を確認することもなく吸い出すというのは他者の人権を考えていない点で護憲と言っている人でも本当の意味での憲法を理解していない。
灰皿があるからだというように言う人もいるが、「パブロフの犬」だそうです。
名言です。非常に感銘を受けました。
私自身は、分煙については罰則付きで進めるべきと考えてはいますが、憲法の考え方の例えとして非常にわかりやすかったです。

 私は、当会事務局として「新共謀罪など一連の治安立法と裁判員制度」として報告を行いました。
さて、裁判員制度と憲法改悪は関係があるのかと言われそうですが、大いに関係があります。
裁判員制度が陪審のための一里塚とか、えん罪防止のためになるのか、などという狭い発想でしか理解できないようであれば、憲法改悪との関係は理解できないでしょう。しかし、それは発想そのものが誤りです。
もともとの裁判員制度の目的は、国民に対して統治に責任を持て、そのためには裁判官と一緒になって刑事被告人を裁けということにあります。
制度を提言した司法制度改革審議会意見書(2001年6月)にはそのように書いてあります。
国政モニターからの裁判員制度に対する疑問 疑問に正面から答えない法務省

 自民党憲法改正草案では、国民に対して義務を課し、国家のための憲法となっています。この思想は裁判員制度の思想と全く同じなのです。というよりも裁判員制度がそのように制度設計がなされているということです。
捜査機関の捜査手段も拡充されたり、国家が国民を取り締まるための共謀罪であったりとこの間の一連の刑事司法の改悪は治安政策そのものです。
このような制度は廃止するしかありません。

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投稿:2016年11月12日