~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
そのこと自体を論じる必要があるが、流れている報道をよりどころに考えてみよう。
そういうことでしたら、まず5月19日の『読売』があります。大見出しが「裁判員判決 2審の壁」。そして「開始から8年 死刑破棄5件」「遺族『制度の意味どこに』」「最高裁 過去の量刑重視」と見出しの砲列。表やグラフや写真入りの大容量です。
私も読みましたが、「壁」がテーマですから、ハッピーな話題ではありませんね。
そう、私たちにはハッピーです。制度開始8年で言い渡された30件の死刑判決中、高裁で5件が破棄されて無期に変わっている。最高裁は死刑に慎重な姿勢を示すが、被害者遺族は無念の思いを抱いているという話です。
今年3月に大阪高裁が逆転無期懲役にした大阪心斎橋の通り魔事件。1審大阪地裁の裁判員死刑判決の被害者遺族を追う記事ですね。
被害者は2人ですが、高裁は計画性が低いことや精神障害の影響も否定できないことを理由に破棄しました。
記事中では「お父さんを殺した人がなんで生きているの」という娘さんたちの声や法廷でのご遺族の言葉などを詳しく紹介する一方、被告人に精神障害があることについては記事中でまったく触れないなど、基本的に被害者の視点から見た記事でした。
最高裁は、15年2月に、死刑の適用には慎重さと公平性が求められるという判決を出している。高裁は多くこの考え方に従って裁判員判決をチェックする。
最高裁は、できるだけ裁判員の判断を尊重せよと言う一方、その行き過ぎをたしなめるという二元政策を採っていますね。
前者に傾く地裁の裁判員裁判と、後者に傾く高裁の裁判官裁判の対立構造ですかね。
うむ。矛盾政策と言った方が近い。2つの方針の「調和」は難しい。「できるだけ」と言うのも、「行き過ぎ」というのもどだい基準なんてないからな。
抽象的な言い方をされると現場は混乱するだけではないでしょうか。
「一般基準」を言われても、裁判員たちには使える物差しにはならない。
無理なことを言い募ることで混乱や反発が生まれている、その基本的な責任は本音とリップサービスを混ぜて使った最高裁にある。
勝手な解釈で大騒ぎしたマスコミ・野党・弁護士会などにも責任がありますね。
5月21日の『読売』も大きなアンハッピー記事を載せました。『裁判員辞退止まらず 制度開始8年』という大見出し。上から下まで8段です。
中見出しは「昨年64% 審理長期化が負担」「非正規雇用増も影響」とあります。
最高裁が裁判員候補者の辞退率上昇の原因を分析した報告書を公表したという記事ですね。09年の辞退率53.1%が16年には64.7%に増えたと。
辞退率というのは、裁判員候補者に撰ばれた者のうち自ら辞退を申し入れて認められた人の割合のことだ。
でも、やりたくないというだけでは本当は辞められないんですよね。
そういう建前なのだが、実際には辞めることは許さぬなんて言ったら大変なことになる。やりたくないと言えば今はすべて辞めさせる。
16年には100人のうち64.7人が資格がないとかやりたくないと答えたということですよね。
手元にある今年3月末のデータではその数字はさらに上がって65.6%になっている。
裁判員の辞退の実際はもっと深刻だ。何にも答えず呼出当日に黙って欠席する徹底無断不出頭者がどんどん増えている。
今年3月末、断りを入れなかったために選任手続き期日に呼び出された者のうち、当日無断欠席した者の比率は40.1%に達している。
断りを入れなければ出席する予定なのだろうと裁判所は一応みなすでしょうね。
現実は、断らず黙って欠席する強者(つわもの)が4割もいるということだ。
辞退の流れが強まる一方だということはわかりましたが、最高裁はどうしようというのですか。
方針の立てようがない。長期拘束は裁判員の負担が大きすぎるという声があるとして、最高裁は短期結審を強く要求している。
でも、裁判員からは、裁判にはもっと時間をかけねばという声も上がっていますよね。しかし、そんなに長い時間お付き合いはできないというのも裁判員の偽らざる心情です。
最高裁は、審理期間が長いからやりたくなくなるという理屈を作っている。でも現場には「そう言ったって」という冷たい空気が流れている。
今回の調査報告では、非正規雇用の増加が辞退増加の原因になっているのではないかとされているとか。
「参加の可能性があるのは正規の40.2%、非正規の30%位」「審理期間が長くなると参加不可能者がどっと増える」。これが民間の調査会社のアンケ調査結果だそうです。
そうかも知れん。でも、非正規とか正規とかの別なく、この不景気状態で裁判員裁判どころじゃないのが現実だろう。正規・非正規の参加比較をするのなら、実際に裁判員をやった者について調べなければ意味がないし。
まさか非正規にも参加できるようにという口実を作って裁判を1、2日で終わりにすると言うんじゃないでしょうね。
8年報道と言えば、神戸新聞も流していますね。通信社配信記事ならほかの県紙にも出ている可能性があります。
控訴審裁判の一審逆転が年々増えているという経年変化の詳細ですね。通常裁判に比べても裁判員裁判の方が破棄率が高くなっているという分析をしています。
控訴審に行ってひっくり返される例が多く、出頭率も年々大きく下がったというのが8年目の現実だ。
仲間由紀恵とか上戸彩とか長谷川京子なんかを並べて、「私たち市民が物言う時代が来た」なんて言う雰囲気を広げた下手人は最高裁です。
「事実認定は市民にも簡単にできる」なんて、市民の感覚をいかにも尊重するような言い方をしたのが最高裁なのだ。
この現実を破綻と言わず何というか。最高裁には非正規対策を考える能力も資格もない。あるのは廃止を言う責任だけだ。
投稿:2017年5月24日