~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
裁判員裁判の対象事件なのに裁判官が裁判するケースが増えているんですね。
2010年と13年に福岡地裁小倉支部で始まり、15年になって福岡本庁でも裁判員裁判が避けられ,16年には福岡地裁管内で一気に7件に広がった。
この動きは福井地裁や岡山地裁にも広がった。17年には福井・福岡地裁で計3件。結局17年までに全国で16件に拡大している。
裁判員裁判への動員に反発する動きが強まる中で、暴力団事件には皆さんを関わらせませんのでご安心を、というメッセージを発信しているのだ。
昨年5月、特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)系の元組員らが、小倉支部の初公判の後に、「あんたらの顔は覚えとるけんね」とか「よろしくね」などと裁判員に声をかけた事件が発生しましたね。
裁判員6人のうち4人が辞任し、元組員たちは裁判員法違反(請託、威迫)の疑いで逮捕された。
裁判所は、公判途中で裁判員裁判から外すことを決定し、その後は裁判官だけで裁判が行われました。
そうだ。福井地裁の2ケースは神戸山口組系正木組(敦賀市)の事件だ。福岡地裁小倉支部の声かけ事件以来、西日本を中心に全国の地方裁判所は緊張状態に入っている。
効果を発揮しているとはとても言えないだろう。この1年じりじりと拒絶率が高まっているところを見ても、裁判員裁判には近づきたくないという気分を強めているだけではないか。
裁判員裁判の対象事件の審理を裁判官だけでやるという仕組みはどうして生まれたんですか。
良いことを聞いてくれた。それこそ裁判員裁判の構造的破綻を示すものなのだ。
裁判員の身を守る上で他に方法がないと思われるケースについては、極例外的に裁判員裁判から外すことが裁判員法によって認められているのだ。
「地方裁判所は、前条第1項各号に掲げる事件(死刑又は無期の懲役禁錮に当たる罪に係る事件等)について、被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により、裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり、そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、これを裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならない」。
1つの文章にいろんなことがてんこ盛りに書かれてやたら長ったらしいし、「若しくは若しくは」って意味不明に言葉がつながっていて、何を言っているのか善良な市民にはわかりませーん。
解剖すると次のようになる。
1 地方裁判所は、死刑又は無期の懲役禁錮に当たる罪に係る事件等について、次の場合に限り、検察官・被告人・弁護人の請求か職権で、裁判官の合議体で取り扱う決定をする。
2 ①被告人の言動、②被告人が構成員である団体の主張、③当該団体の他の構成員の言動、④現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたこと、⑤その他の事情によって次のことが認められる時。
3 裁判員候補者、裁判員、裁判員であった者、その親族やこれに準ずる者の生命、身体、財産に危害が加えられるおそれがあったり、これらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあったりし、次の条件を満たす時。
4 裁判員候補者や裁判員が畏怖し、①裁判員候補者の出頭を確保することが困難か、②裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難な時。
どうだ、これで少しは理解できたか。
やっぱりひどく難しいな。よほどの事情がなければ裁判員裁判でやらなければならないらしいことはわかりましたが。
そこまでわかれば十分だ。つまり、並大抵のことでは、裁判員裁判で審理する事件を裁判官だけで審理してはいけないということになっているのだ。
当たり前だ。殺人などの事件は、区分すれば文字どおり凶悪な事件になる。
凶悪な事件を審理するために作った制度について、事件が凶悪だということで裁判員裁判の対象から外してしまったら何のための制度かということになります。
なるほど。暴力団による殺人事件などは凶悪事件中の凶悪事件ですね。
同じ殺人事件でも、一家心中のケースなどと比べてご覧。動機に汲むべきものがあるなんていうやくざの殺人事件はありますか。
そうですよね。かねて狙っていた相手を拳銃で撃ち殺したことについて、無理もない事情があったという判決なんて聞いたことがありません。
本来そういう凶悪事件のために裁判員裁判が予定されていると言ってもいいのでしょうね。市民生活の平穏を害すると言えば、まず問題になるのは暴力団などでしょうから、その制圧の先頭に市民が立つのは当たり前かもしれません。
そのとおりだ。だから、例外規定のハードルは極めて高い。「裁判員等に危害が及ぶ具体的な危険がある場合には、非法律家である裁判員またはその候補者に対し、その危険を冒して審理に加わり公正な判断をするよう求めるのは過大な負担を強いることになる」という理屈で説明されている。
この除外措置については、司法制度改革審議会の場でも裁判員法制定の場でも例外を認めるべきか否かとか、どういう時に除外できるかをめぐって大議論になったようですね。
当然だ。被告が暴れるかもしれないとか、裁判員に危害が加えられるかもしれないから、止めようということ自体、司法が暴力に屈したと言っているのと同じことになる。
「凶悪事件の審理に国民を参加させる」という裁判員制度の趣旨からして、裁判員に裁判をさせないという選択肢は本来はあり得ないと。
そうだ。「司法の敗北宣言」に等しいということになりかねないからな。
そうすると、現在の問題は、現実の運用がそのような基準で厳しく制限されているかどうかですね。
このところ急に回避事例が増えているのはうさんくさいというか、厳格な適用でなくなっていることを疑わせます。
福岡地裁小倉支部の声かけ事件の1年ほど前から回避事例が急増している。その背景には、裁判員の参加が最悪になっていることが当然絡んでいると見なければならない。
いくら暴力団の分裂が進んでいると言ったって、除外事件増に直結はしない。暴力団事件即除外事件という訳ではない。
この除外措置がなければ、声かけ事件後、4人に辞退された小倉支部は新たな裁判員を選出しなければなりませんでした。「組員に声かけられる事件」の裁判をやりたいという物好きは少ないでしょうから、もしかしたら未だに公判を開けないでいたりして……。
裁判員裁判の中で暴力団絡みの凶悪事件など数が知れている。そんな所に期待をかけるということ自体が苦し紛れの対策というか、もう対策はないという自白みたいなものだろう。
元々、市民に出頭してもらわなければ成り立たないという、心許ない制度だからね。
♪
民が冷たい 心が寒い
綱渡りかよ 制度の行方
粗雑司法の 恥さらし
民よ変われと テラダは願う
振起願掛け 写真を載せて
嘆くやつらの たよりなさ
廃止まつなら 出頭おやめ
とかく司法は 苦労の種よ
故意も刃傷も うわの空
投稿:2017年7月20日