~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
下記は「弁護士 猪野亨のブログ」11月15日の記事です。
猪野弁護士のご了解の下、転載しております。
裁判員裁判では時折、疑問符の付くような判決が出てくることがありますが、これもその1つではないでしょうか。
「不倫に激高、妻を死亡させた夫に判決」(MBSニュース2017年11月13日)
「13日の判決で大阪地裁は「抵抗しなかった被害者に対し、暴行を繰り返したことは厳しい非難を免れない」とした一方で、「被告人が激しい怒りを覚えたのは理解ができ、重大な傷害を負わせる意図はなかった」として、本間被告に対し懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡しました。」
不倫をした妻に繰り返し暴行を加え、その結果、急性硬膜下血腫などの傷害を負わせ死亡させたという事件ですが、不倫をした配偶者であろうと暴力が許されるはずもなく、その責任は重大なのですが、「被告人が激しい怒りを覚えたのは理解ができ、重大な傷害を負わせる意図はなかった」から執行猶予に結びつくのかが理解不能です。怒りを覚えることと暴力行為を結び付けるには飛躍があるからです。
「理解でき」できようができまいが暴力行為自体を正当化することはできないのですから、それが執行猶予の理由(根拠)として挙げられていることになります。
この判決を意訳すると、こんな感じになります。
「不倫に対して殴ってしまったのはよくなかったけれど、不倫したやつがわるいんだしね、結果として死んでしまったのは残念だったけれど、まっ、死ぬとは思っていなかったんだから仕方ないよね」
暴力行為から死の結果が生じることは当然に予期できることであり、だから傷害致死罪という犯罪類型が規定されています。
本来であれば、頭部や腹部に繰り返し暴行を加えれば死の危険があることは明らかであり、死ぬとは思わなかったという主張(言い分)でさえ、疑問符のつくところであり、殺人という故意の有無、その立証の問題に行き着くことから、検察は傷害致死での起訴ということになるわけです(その辺りがかなり定型的に処理されていると思います。被害者側が納得できないのは、これが何故、殺人ではなく傷害致死なんですかという思いです)。
「虐待する親に親としての資格なし 幼児の頭を殴って死亡させても傷害致死にしかならない怪」
この事件でも同じ何故、傷害致死どまりなのかという疑問が沸きます。殴り殺したという感じなのですが。
参照
「I容疑者の詳細情報!19歳の与島稜菜さんを殴打し殺害した動機とは?新橋ホステス傷害致死事件まとめ」
今回の裁判員裁判の判決は、これら傷害致死を適用はしているものの、死亡の結果が生じた、しかし殺人の故意は立証できないということを前提としたものよりもさらに軽く扱うものです。
裁判員が関与しからの判決なのか、裁判官だけでも同じような判決になったのか、その裁判員の顔ぶれがわからないので断言はできませんが、裁判官だけの判決ではこうはならなかったのではないでしょうか。
インコおまけの一言
どうも「女性差別の匂いがする判決」なんだよね。不倫も浮気も法律では「不貞行為」。
夫(男)が他の女と情を通じたって? 男が浮気するのは仕方ない、よくある話だ。
妻(女)が他の男と情を通じたって? 不倫するような女はけしからん。夫をこけにしたんだから殴られて当然。
そんな意識が根底にないか?
投稿:2017年11月18日