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ふくろう教授解説 全部破綻ものがたり

―弁護士激増・法科大学院・裁判員制度-

 合格者の皆さんにはまず合格おめでとうと言っておきます。9月10日、法務省は今年の司法試験の合格者を発表。2049人、合格率は去年とあまり変わらず約26%。受験者数はまた減っちゃいました。法科大学院の総数は74校、合格最多校は201人の慶応大学。50人以上の9校だけで全合格者の半数を占める一方で、合格者一桁校が35校、0校も3つという超寡占・超偏り。
  激増政策や法科大学院方式の破綻が大問題になってこりゃたいへんですね。インコはにわか勉強で弁護士人口や法科大学院と裁判員制度の関係を分析することに。

 話は12年さかのぼります。2001年に司法制度改革審議会が内閣に提出した答申によって、弁護士人口激増(法科大学院)と裁判員制度は、司法制度改革の2本柱でした。えっと、「司法制度改革」って何だったっけ?
そう、そこから勉強しなけりゃいけない。
 ということで、ふくろう教授にお出ましを願った。21-‚Ó‚­‚낤

背景な~1先生、今日はよろしくお願いいたます。

21-‚Ó‚­‚낤 司法制度改革問題じゃな。この国の政治や行政や経済などの屋台骨がガタガタになったのはあのバブル崩壊、20年少し前の時代じゃ。もっと前からとの見方もあるようじゃが、とりあえずその辺からと考えることにしよう。政治も行政も経済も社会の秩序も危なくなってきた時には「司法が最後のかなめ」ということになって司法をしゃしゃり出させたのじゃ。

 司法制度改革審議会が2001年に政府に出した意見書の中にはこんなセリフがあるんじゃ。
「今般の司法制度改革は、政治改革、行政改革、地方分権推進、規制緩和等の経済構造改革等の諸々の改革の『最後のかなめ』と位置づけられる」
こんな言葉もある。
「本意見は、内閣に対する意見であると同時に、国民各位に対して当審議会が発するメッセージでもある」
インコ君、覚えているかな。
 

へ?えっ? (知らないよそんなこと)

 21-‚Ó‚­‚낤ふぉほっほほ。インコが豆鉄砲を食らったような顔じゃな。無理もなかろうて。専門家でもなければ12年前にちゃんと聞いたという人はほとんどいないと思うのじゃが、ともかくじゃな、そういうことになって最後の国家破綻対策として、司法制度改革が国を挙げての大政策になった。そしてその柱が弁護士人口激増と裁判員制度だったっていう訳じゃ。

 弁護士激増は、弁護士をべらぼうに増やして、どなたかの人権よりも自分の生活を先に考えるしかなくさせる政策。毎年何千人も合格させるとなると、司法修習なんてまともにやれるはずがない。これは法科大学院に丸投げする。「質・量ともに豊かな法曹を育てる」なんて言っておったがな。別官庁の文科省が介入してくるのは致し方ないのじゃ。

 さて、裁判員制度じゃが、インコ君、これは説明できるじゃろうな。

 な~1はい、先生。裁判員制度とは、一人ひとりの国民に被告人を処罰させることを通して秩序や国を守る気概を国民に持たせる司法公民教育のことです。ナマの事件でホントに判決を言い渡させるんだから、百の説法よりもはるかに有効です。倒れたり吐いたりするっていうことは、それだけ深く心に刻ませることに成功したということだと思います。
こういうのを効果てきめんといいます。

 21-‚Ó‚­‚낤説明はあっておるが、最後の部分は日本語の使い方をちょっと間違えておるようじゃな。
まあそういう訳で始まった司法制度改革だったんじゃが…。やはり「天網恢々疎にして漏らさず」だったんじゃ。インコ君、この意味は分かるかね。

 な~1(しばらくして)はい、天の張る網は、広くて一見目が粗いようでも、悪人を網の目から漏らすことはない。悪事を行えば必ず捕らえられ、天罰をこうむるという意味です。

 21-‚Ó‚­‚낤こっそりと電子辞書を引いておったようだが、まぁよしとしよう。国民の目は粗いなんて、バカにしていた天罰がいま下っておるのじゃ。

 「2010年頃には合格者数の年間3000人達成を目標とすべきである」と言っておったんじゃ。しかし、2010年なんて3年前に通り過ぎてしまったわい。それがいまだに2000人あたりで上がったり下がったりの足踏み状態じゃ。つまり激増計画は完全破綻。法科大学院を出れば約7~8割は司法試験に合格するようになんて言っておったのに、実情は3割を大きく割り込んでこれも破綻。激増政策は国民をハッピーになんか絶対にしないってことを、多くの人たちが感じとったっていうことじゃ。

 実際、年々司法試験の受験者が激減し、法科大学院離れがすさまじい勢いで進んでおるのじゃよ。今や受験者数はピーク時の5分の1。法曹の魅力も法学部進学の意欲もどんどん薄れておるのじゃ。無理が通れば道理が引っ込む。今年の東大法学部の人気が史上最低になったと騒がれていたのは知っておるの? 思惑外れは極限まで進んだのじゃ。

 9月1日の『読売新聞』の社説を見たかの? タイトルは「優秀な人材をどう集めるか」。本文の冒頭は「法曹養成の中核である法科大学院が、危機的な状況に陥っている」。弁護士激増に大賛成したマスコミからも言われる有り様じゃ。

 な~1はい、先生。『朝日新聞』なんか、耳を覆うは、目はつぶるは、口は開かないの三猿新聞で、インコは「言葉もない」です。

 裁判員制度の破綻は、インコがいつもつついておりますが、事件処理はまともに進まず長期化し、最高裁長官が顔つき変わるまでイライラしている(一部には元々こういう顔つきだったという説もあるけど。)。国民の不人気と批判は、制度が始まる前のひどさからさらにさらに強まっています。増員大賛成だったマスコミの面目も丸つぶれ、最高裁長官の面子も丸つぶれ。

 その21-‚Ó‚­‚낤とおりじゃ。司法制度改革はどっちを見ても破綻なのじゃ。最後の歯止め、もとい最後のかなめが破綻したということは、国民の総反発に遭ってこの国の仕組みの根本的な改変策がつぶされかかっているというめでたい話なのじゃ。インコ君、わかったかね。

 はーいはーい。よくわかりました。

 21-‚Ó‚­‚낤よろしい。これだけちゃんとマスターしたのなら、インコ山立大学の司法改革破綻学士と認定しよう。合格おめでとう!

21-‚Ó‚­‚낤

 

 

 

 

 

投稿:2013年9月24日