~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
10月10日の『読売新聞』(茨城版)は、「地裁主導 証拠加工に反発」との見出しで、証拠の加工を提案する裁判所の姿勢に反発する各方面の意見を紹介、概要以下のような記事を掲載しました。
「裁判官主導の証拠加工について、関係者は『正確な事実認定や量刑判断ができなくなる』などと反発している。
水戸地裁で5月に判決があった傷害致死事件では、地検と弁護側の双方に、証拠映像の短縮を打診、倒れてうめく被害者に被告の少年らが暴行を繰り返す映像を約15分から5分半ほどに短縮させた。地検側は『何十時間語っても表せない事実を映像は短時間で示せる』と不快感を表明、弁護人も「数分間あった主犯格の暴行場面が数十秒に減った」と振り返った。
6月の殺人事件公判でも、『遺体写真はイラストや白黒写真で』と要請。
8月判決の殺人未遂事件では、血痕の付いたシャツのカラー写真を証拠採用せず、色彩をぼかし血の色を薄めた写真にして認められた。
模擬裁判を経験した公務員女性(27)は『感受性が強い人は映像によるショックが心に残り続ける。私も冷静に判断するのは無理。辞退を認めてもよいのでは』と。過去に裁判員を務めた男性(30代)は「写真や映像なら暴行の強度や現場の雰囲気がわかる。加工されたら正確な判断は難しい」と述べる。
四宮啓国学院大法科大学院教授は『凄惨な画像や映像は有罪の立証に必要な証拠とは言えず、有罪への予断を与える危険性もある。裁判員の心情に配慮した証拠調べを工夫すべき』。
船山泰範日大教授は『遺体や殺害現場を明示する必要がなくなれば、捜査機関は綿密な証拠収集を行わなくなり、誤判を招く』と。元裁判官の西野喜一新潟大法科大学院教授は『遺体や血痕の加工は証拠の改ざん。イラストで事実認定するならもはや裁判とは言えない』と。」
裁判の崩壊もいよいよここまで来たかの感を深くします。
刑事裁判というのは、本来、被告人の人権保障を十分配慮しながら真実を究明し、被告人には法的な責任があるのかどうかを解明して、責任があることになればどれほどの責任をとらせるかを慎重の上にも慎重を期して検討するシステムです。
判決が確定すれば、その結論によっては当の被告人は、刑罰という「苦役」を科されます(日本国憲法第18条)。刑罰は、お金の支払いだったり、懲役や禁錮などの身体の拘束だったりしますが、最も重い刑罰は言うまでもなく死刑。
市民に金銭の支払いや束縛や最悪「生命」を断つことを強制する刑事裁判が「ええから加減」と言うか、「このくらいでいいじゃん」という程度の判断で行われたら、それは裁判の自殺というほかありません。極論すれば、王様の独断や占いで「判決」が言い渡されていた時代と大差ないところに歴史の歯車を逆転させるものです。
少なくとも、真相究明によけいな手間をかけるなという姿勢には近代刑法に挑戦するふらちな態度が露骨に見えます。最大の問題は、「手間をかけない」理由が、裁判員の困惑や負担をできるだけ少なくするためだということ。
「何が何でも市民を動員する」ことと「裁判員の負担をできるだけ少なくする」ことは、本来方向が反対向きの話。「何が何でも動員する」のなら「負担をかけるのも仕方がない」と普通は考える。「負担を少なくする」ことを真剣に追求するなら「市民の動員」を考え直すのが筋。絶対動員と負担軽減が一緒に並ぶところに最大のうさんくささが潜んでいるのです。
この2つの目標を同時追求する犠牲として、実態の解明は後回しにしてもよいというリクツが登場しています。いかに最高裁でも、もともとイラストでよかったのにどうして写真を使ったのかとか、モノクロ写真でよかったのにカラー写真にしたのかとか言わないでしょう。なぜこれまで血の色を薄くしていなかったのかとも言いますまい。リアルな実態をリアルに説明するのが本来の姿だという原則を正面から否定するはずもない(と思いたい)。だから敢えてその大切な価値を「犠牲にして」と言うのです。
水戸地裁の裁判長の「ご乱心」を一言で説明すれば、「福島ストレス訴訟」でショックを受けた最高裁が、裁判員制度の崩壊を回避するためには致し方なしと、急場しのぎの号令を全国に飛ばしたら、驚いた水戸地裁のヒラメ代官裁判長が印籠にひれ伏すように「へへーっ」と従い、あきれた検察・弁護の双方から異議や違和感を表明されたという図ということですね。
四宮教授は「凄惨な画像や映像は有罪の立証に必要な証拠とは言えない。有罪への予断の危険性もある。裁判員の心情に配慮せよ」と。ご冗談をというか、ここにもご乱心のお方が…。リアルな立証を避けることこそ有罪への直結道路だということをこのセンセイは知らないのでしょうか。こういう脳天気な人のアタマでは、「上半身をひどく切られて死んだ」というメモ程度のものがあれば、それで殺人を認定してもよいということになるのでしょうね。
投稿:2013年10月11日