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隠されていた「似顔絵」

裁判員制度を推進する弁護士の中には、「証拠開示請求が充実して今まで出なかったものが出るようになったのは裁判員制度の成果だ」と盛んに言う人がいる。
しかし、証拠開示と裁判員制度をセットで考えること自体がおかしい話。 証拠開示は当然のことであり、検察官が隠しておけること自体が問題だとどうして言わない(言えない)のか。

裁判員裁判を経験した弁護士の話
「最初はこれまでと変わらないものを証拠として出してくる。『ほかにもこういう証拠があるはずだ』と言えばそれを出すだけ。検察が出したくない証拠が出たなんていう経験はしたことがない。
防犯カメラの映像があるはずだと言ったときには『防犯カメラはあったが、作動していなかった』と言われた。
検察官の調書提出要請に弁護側が同意すると、検察官は出した証拠を撤回して抄本で出し、それに同意するとそれも撤回し、いくつかの証拠をまとめて統合捜査報告書という形にして出す。
私も医者のカルテを証拠にしようとしたら、報告書にまとめろと裁判所から言われた。
どちらも証拠の変造に等しい。
裁判員裁判で法廷に出てくるのは要約された薄い証拠でしかない。 検察は隠したい証拠は最後まで隠すだろうし、そもそもそんな証拠はなかったことにされてしまうこともあるだろう」

7月2日、東京高裁が逆転無罪を言い渡した詐欺未遂事件(1審・千葉地裁は懲役2年6カ月の実刑判決。
実行犯の供述をもとに作成された被告人の似顔絵が、被告人と似ていない(描かれた当時の被告人の髪形や髭の生え方の特徴が違う)ことが決め手となったが、この似顔絵の存在は控訴審ではじめて明らかになった。
千葉県警は似顔絵とは別人を逮捕し、千葉地検も「似顔絵の存在は被告人が無罪であることの有力な証拠となる」と隠していたということだ。

詐欺未遂事件は裁判員裁判の対象ではない。HPさあどっち
しかし、裁判員裁判であろうとなかろうと、検察は被告人にとって有利な証拠は隠し続けるだろう。
そして、公判前整理手続きによって要約された薄っぺらい「証拠」で行われる裁判員裁判。 これでは冤罪は防ぐことはできない。そして「再審」を求めることはこれまで以上に困難を極めるだろう。「証拠」という名の「要約された資料」しか残らないからだ。

 

投稿:2013年7月4日