~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
11月に入って一週間も過ぎたし、もうそろそろね。今週か来週か…。
「裁判員候補者名簿登載通知」の発送よ。最高裁が毎年11月に、裁判員候補者に候補者名簿にあなたの名前が載ったと知らせる通知。
実際の発送作業は民間業者がやるんだけどね。その通知の中にはDVDやマンガパンフ『よくわかる! 裁判員制度Q&A』なんてのも入っている。
パンフの中から「裁判所への出頭」を俎上に乗せて、何がよくわかるのか、それこそわかりやすく説明してあげよう。
その前に、裁判員法(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)が裁判員候補者や裁判員たちの出頭などの義務について、どのように規定しているのか正しく理解しておきましょう
□ まず、(裁判員の義務)に関する規定です。
第九条 裁判員は、法令に従い公平誠実にその職務を行わなければならない。
2 裁判員は、…評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。
3 裁判員は、裁判の公正さに対する信頼を損なうおそれのある行為をしてはならない。
4 裁判員は、その品位を害するような行為をしてはならない。
□ 次に、(裁判員等による秘密漏示罪)です。
第百八条 裁判員又は補充裁判員が、評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 裁判員又は補充裁判員の職にあった者が次の各号のいずれかに該当するときも、前項と同様とする。
一 職務上知り得た秘密(評議の秘密を除く。)を漏らしたとき。
二 評議の秘密のうち構成裁判官及び裁判員が行う評議又は構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたもののそれぞれの裁判官若しくは裁判員の意見又はその多少の数を漏らしたとき。
三 財産上の利益その他の利益を得る目的で、評議の秘密(前号に規定するものを除く。)を漏らしたとき。
3 前項第三号の場合を除き、裁判員又は補充裁判員の職にあった者が、評議の秘密(同項第二号に規定するものを除く。)を漏らしたときは、五十万円以下の罰金に処する。
4~7 (略)
□ 次に、(裁判員候補者による虚偽記載罪等)。
第百十条 裁判員候補者が、…質問票に虚偽の記載をして裁判所に提出し、又は裁判員等選任手続における質問に対して虚偽の陳述をしたときは、五十万円以下の罰金に処する。
□ 次に、(裁判員候補者の虚偽記載等に対する過料)。
第百十一条 裁判員候補者が、…質問票に虚偽の記載をし、又は裁判員等選任手続における質問に対して正当な理由なく陳述を拒み、若しくは虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、三十万円以下の過料に処する。
□ そして、最後に(裁判員候補者の不出頭等に対する過料)。
第百十二条 次の各号のいずれかに当たる場合には、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
一 呼出しを受けた裁判員候補者が、…正当な理由がなく出頭しないとき。
二 呼出しを受けた選任予定裁判員が、…正当な理由がなく出頭しないとき。
三 裁判員又は補充裁判員が、正当な理由がなく…宣誓を拒んだとき。
四 裁判員又は補充裁判員が、…正当な理由がなく、公判期日又は公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問若しくは検証の日時及び場所に出頭しないとき。
五 裁判員が、…正当な理由がなく、公判期日に出頭しないとき。
裁判員候補者や裁判員たちの重要な義務を並べました。裁判員法は厳重な処罰の展覧会場と言って差し支えないでしよう。
裁判員候補者や裁判員たちが裁判所に出向くことを裁判員法が「出頭」と表現しているのはご覧のとおり。これが法律上の正確な言葉です。しかし、「マンガパンフ」に目を移すと、こちらは「出頭」という言葉をいっさい使っていません。「来ていただく」に大化けするんだな、これが。
○「裁判員候補者名簿に登録されても、くじで選ばれず、裁判所に来ていただかないことがあります」
○「過去1年以内に裁判員候補者として裁判所に来ていただいた方(辞退が認められた方は除く。)などは、裁判員になることを辞退することができます」
○「基本的に地元の地方裁判所に来ていただくことになります」
○「裁判員候補者のお住まいの場所を管轄する裁判所に来ていただくことになります」
○「このお知らせには裁判員に選ばれた場合に…実際に来ていただく日はいつかを記載します」
○「裁判員候補者や裁判員等になって裁判所に来ていただいた方には、日当や交通費が支払われ…ます」
○「実際に裁判員として裁判所に来ていただく日数は、それぞれの事件の内容により異なりますので、一概にはいえません」
○「裁判所に来ていただいた場合には、昼食代などの費用を補償するため日当が支払われます」
正当な理由のない不出頭には重いペナルティーを科すぞ、という脅しが陰に潜んでいるとはとても思えない「気味の悪いような優しい言葉づかい」。 閻魔大王がピンクの薄衣をまとってにっこりほほえんでいる雰囲気ね。
はい。裁判員制度が国民の義務として規定されていることを、表現方法の工夫であいまいにするという腐った魂胆を感じさせて十分です。
いくら人気がない制度だからと言って、こんなところで市民の顔色をうかがうっていうのは、根本的におかしいのでは…。
まさにその通りだよ。裁判員としての出頭は参政権に近いものだなんて最高裁は言っているけれど、参政の権利だって選挙管理委員会は「投票にきていただきたい」なんて言っていない。こっちは義務だよ。納税の義務だって労働の義務だって教育を受けさせる義務だってわざわざ「していただく」って言いますか。処罰を伴う義務について敬語を使うというのが基本的にヘンなんだよ。
義務だから義務、義務で何が悪いとはっきり言い切らないいやらしさ、後ろめたさね。
この調子をそのまま延長して行くと、被告人に死刑を言い渡すときに「死刑台でお首を絞めさせていただきます」と言ったり、無期懲役を言い渡すときに「少し狭い部屋で一生暮らしていただきます」と言えというようになるのかな。
あら~それは違うわよ。最高裁は裁判員向けの専用語を被告人に使う必要なんかまったくないって言うでしょうよ。
最高裁は裁判員にだけ、「出頭」を「来ていただく」なんて言葉でお茶を濁しているんですね。
はいはい、お山では、立つインコ跡を濁さずって言います。お茶の話がでたところで、ちょっとだけお手前を披露させていただきましょうか。
投稿:2014年11月9日