~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
裁判員裁判で検索をかけていたら、『しんぶん赤旗』の記事がヒットしましたわ。なんでも裁判員法の改正案が審議されている衆院法務委員会で、2人の共産党議員が裁判員制度に関する質問をしたとか。
衆院法務委員会のビデオオンデマンドを視聴する3羽。
質問しているのは共産党だけじゃなかった。でも折角のご案内だから、この党の議員の質問を追いかけてみる。4月22日に清水忠史議員が、4月24日の畑野君枝議員が質問している。答弁に立ったのは上川陽子法務大臣、最高裁の平木正洋刑事局長、法務省の林真琴刑事局長。
という訳で今回は共産党がどのような質問をしたのかに絞って報告。
清水議員の質問の中心は「裁判員制度に関する検討会」の報告書です。
ここで簡単に「検討会」の説明をしておきましょう。裁判員法の附則は、施行後3年が経過したら制度の施行状況を検討して必要な見直しをすると定めていた。そして裁判員裁判が始まった直後の2009年の9月から13年6月まで4年近くにわたり、裁判員制度を作った関係者が中心になってその「見直し」問題とやらを検討してきたのです。
検討会座長の井上正仁東大大学院教授(当時)は、裁判員制度の構想を政府に答申した「司法制度改革審議会」(1999~2001年)の委員。その後、政府に設けられた「司法制度改革推進本部」の中で「裁判員制度・刑事検討会」(2001~04年)の座長も務めた。裁判員制度が間違いだったとなれば、「市中引き回しの上獄門打ち首」のA級戦犯。ほかの法曹委員も弁護士委員の四宮啓や前田裕司をはじめ多くが司法改悪の「凶状持ち」。
そこで作られる報告書なんてろくなもんじゃないってことは確実に予想できるけれど、とにかく検討会は13年6月に報告書を政府に提出しました。
そう。報告書は、審理が年単位の、とは明確には言わなかったが、審理が超長期間になる事件は裁判員裁判の対象から外そうとか、大規模災害が起きた地域の住民は裁判員候補者から外そうなどと提案していた。言うも愚か、期待も間抜けという話だけど、制度の本質的な問題点は徹底的に隠蔽して、子ども騙しの「見直し」提案を断行した。
これには推進派のマスコミも拍子抜けの感でしたわね。でも、それが今回の改正法案の骨格になってる。
そう、この検討会報告書について、インコのトピックスは、「法務省『検討会』取りまとめ報告書を読んで-全否定された日弁連の提案 弁護士川村理」(2013年6月25日)の投書を取り上げたり、「法務省検討会-検討してこれですか?」(2013年7月9日)などで厳しく批判したりしている。批判とはこういうものじゃなくちゃっていう見本。
さて、話を本論に戻します。清水議員の質問はこの検討会の報告書を素材に改正案を批判するものだった。問題は批判の基本的な視点だ。「証拠の全面開示などにまったく触れていない」「制度に関わる重大論点を外している」「参加したくない人8割超、辞退者6割超、ドタキャン率3割近いという状況については政府の認識や対応に問題がある」というのだ。
清水議員は、『東京新聞』「こちら特報部」の記事〈選任要請3/4応じず〉(インコのトピックス「『東京新聞』記事 選任要請3/4応じず」でも紹介)を引いて、国民の評価は厳しいとか、その評価も年々さらに厳しくなっているなどと迫ってみせた。でも結局は「国民の不安や疑問を直視してほしい」なんて表面をなぜるくらいで終わったね。
国民が制度に厳しい拒否反応を示しているとか、強く反発しているというような最も重要なポイントには全然触れない。何ひとつ切り結んでいない。それどころか「おおむねうまくいっているからと言って、問題がないことにはならない」などと言ったり、「自分たちも裁判員制度に賛成し真剣に議論していこうとしている」などと言ったりしている。パンチもへったくれもあったもんじゃない。
清水議員は、検討会の報告は証拠の全面開示などにまったく触れていないと非難していますが。
いやいや、触れないのは当たり前過ぎるくらい当たり前のことだよ。この制度は、忙しい国民を動員して、短時間にサクサクチャッチャと結論を出す迅速裁判方式なのです。証拠の全面開示なんて面倒くさくてえん罪が暴露しかねないやり方は、死んでもやるつもりがない。やらせるつもりもない。そのために裁判員制度を導入したって言ってもよい。被告人や被疑者の人権なんてはなから考えてなんかいないんだ。
清水議員は「制度に関わる重大論点を外している」と言う。いいことを言うのかなと気を持たせたが、外された「重大論点」が何なのか全然わからない。完全な拍子抜けです。
やりたくないと思う人や辞退する人が非常に多い。例を挙げて言わせて貰えば、憲法改正にノーと言う人より裁判員制度にノーと言う人の方がはるかに多いってことよ。この事実からこの党はどういう判断を導こうと言うのだろう。
制度をよりよいものにする真剣な議論をしようとしているのだと清水議員は言いました。
冗談じゃありません。誰がどこでそんな議論をしているの。まさかこの検討会がその場だというのではないでしよ。ものごとをあいまいに言ったり、何を言っているのかわからない話をするのはお互いやめましょうよ。
日にち変わって24日の衆院法務委に登場した畑野議員の質問の中心は、裁判員制度を国民が参加しやすいものにせよということだった。現状では国民が安心して参加できる環境が整備されているとはとても言い難いと。
この質問のベースにあるのは、現状の参加状態は深刻で対策を講じなければならない状態に陥っているという危機感ですね。
そう、どうやらそのことはわかっているらしい。しかし同時に、ここには何らかの対策を講じればその困難は克服できるのではという希望がある。だが、それははかない望みだ。選任手続き後の裁判員の職場保障の改善強化とか、保育や介護の強化程度のことで制度の崩壊的危機が克服されると本気で思っているのだろうか。
ほかに言うことが思いつかないから言っているだけなのかも。好きで別れ唄うはずもない、他に知らないから口ずさむ♪、です。
畑野議員は、つぎのように言っています。
改正案は、著しく長期にわたる事件を裁判員裁判から外すと言うが、「著しく長期」の判断基準は不明確だし、その判断をするのは裁判所であって国民自身ではない。
この考え方は結局国民参加の機会を奪うだけだ。裁判員制度の目的は社会的影響の大きな事件を国民自身に審判させることにあるとされているのだから、長期間を要する複雑なケースこそ社会的な影響が強く、裁判員が関わるべきケースになるはずだ。
超長期事件から国民を外してしまえば、その種の事件の審理や判決に裁判員の社会常識や市民感覚が反映されなくなる。それは人を裁くことを決意した国民の真摯な姿勢に誠実に応えるものではない。
ってね。
『しんぶん赤旗』は、さぁ皆さんこれが裁判員制度についての我が党の見解ですと紹介しているが、これらの質問に表われた共産党議員の見方が大問題だ。読者の皆さんはどう受け止められただろうか。読後感を率直に言わせて貰うと、どうにもこうにもお話にならない。破れた金魚すくいの網。すくいようがない、ってね。この政党の裁判員制度に対する見方は根本的にちょうつがいが外れている。
畑野議員の質問に至っては、それこそ驚き、桃の木、山椒の木。議員は司法への国民参加の機会を奪うなって言うけれど、奪うなって言ってるのは誰ですか。やりたくないやりたくないって言ってるのは人民。やれよやれよとけしかけ追い立てているのは国家権力じゃないですか。インコは「人民」とか「国家権力」なんて言葉は使いつけないけれど、皆さんは結構使うんでしょ。それとも皆さんももう使わなくなっちゃったのかな。
やりたくないと思ったり言ったりする国民は非国民ということになったりして。
あ~ぁそうか。ちょうつがいがはずれているとか、すくいようがないって言っている意味がようやくわかってきました。
超長期複雑事件こそ裁判員参加事件であるべきで、これを外せば裁判員の社会常識や市民感覚が判決に反映されなくなるというけれど、現在行われている3~4日程度の短期裁判でも裁判所に出かけて行く国民はもうしっかり偏った人たちになっていますよ。超長期事件になればその偏りはいっそう極端になる。そのことは目に見えていることじゃないですか。
それでもやりたい人はいるって畑野議員は言ったが、裁判所に半年も1年も通い続けられる人たちがどういう境遇や傾向の人たちかということをこの政党の中心にいる人たちは本当に考えているのでしょうか。お得意のブラックをはじめ、零細企業や非正規で働いている人たちはもちろんのこと、そうでなくても毎日の生活に追われている人たちは裁判員どころじゃないのですよ。
この政党は生活に苦労している人たちの味方の政党じゃないんですかね。
ほとんどのフツーの人たちから見放され、特異な人たちによってやっとこすっとこ支えられている裁判員裁判の世界は、フツーの「社会常識や市民感覚」が反映するところじゃない。この党の常識欠如は完全に重症だな。
制度の趣旨から言えば重厚長大裁判こそ国民参加にふさわしい、どうしてこれを外すのだという議員の追及は興味深いですね。
そう、政府法務省は、そんなこと言われなくてもわかっている、本当は重厚長大裁判をこそやらせたいのだけれどみんなやりたくないって言ってるんだから仕方がないじゃんという立場なんだよ。
国民みんなのやりたくないという思いがついに政府を「背に腹は代えられない」という敗北方針に追い込んだのですね。追い込まれた政府は身体全体に壊死状態が広がる前に壊死部分を切除してしまおうと言っている訳ね。
「人を裁くことを決意した国民の真摯な姿勢に国は応えるべき」という畑野議員の言は極めつきだね。この国の国民は自分の隣人を裁く「真摯な」決意をしたと言う。誰がそんなことを決意しているのか。
国会がほぼ全会一致で成立させたと言っても、清水議員が紹介したとおり、国民の圧倒的多数はいやでいやでたまらないでいる。そういう話はそれこそいやになるほど聞く。けれども、議員が言うような「真摯な」決意をした人なんてインコの周りには1人もいません。議員の周りにたくさんいるとしたらあなた方は変な人たちに囲まれ、感覚がおかしくなっているとインコは断言します。
2004年、共産党は、清水議員が言うとおり、裁判員法の成立にもろ手を挙げて賛成した。あなた方は、激辛の料理を作ることに賛成しながら、できあがった料理が甘くないとか辛いとか言って文句を付けているのさ。11年前に自身がとった態度をちゃんと反省するところから「見直し」をしないとどうにもなりません。
「国民の不安や疑問」を直視しなければならないのはまずこの党ですね。
それともだ。異論反論がどんなに多くてもこの制度を維持したいというのが共産党の本音なのかも知れない。良い覚悟だ。ただしそうならその理由はちゃんと言って貰おうじゃないか。
ハハン、両議員とも自由法曹団という法律家団体の名前を上げていた。これは自由法曹団の要人も知らなかった事実だから皆さんもおそらくご存じないだろうが、この制度が始まってから刑事裁判の無罪率は下がり、重罰化の傾向がどんどん進んでいるんですよ。
議員のみなさん、よく知っておいて下さい。この関係のトピックスとして、「裁判員裁判はえん罪を確実に増やす」(2014年6月17日)や「裁判員制度は死刑判決を激減させたという『スクープ』のウソ」(2014年8月10日)で詳しく論じています。自由法曹団の弁護士も登場して恥をかいています。
いろいろ紹介しながらつくづく思うけど、共産党の人たちって勉強が足らなさ過ぎるんじゃないかしら。インコは今日ふとそう思ってしまいました、マル。
裁判員制度について、インコさんに質問してくる方の中に『しんぶん赤旗』の読者もいるでしょうね。
おっしゃらない。おっしゃらない。逆です。その人たちの多くが「共産党は裁判員制度に反対しているはずだ」と言います。「実は共産党はこの制度の推進派なのです」と説明すると、たいていの方はインコのように目を丸くして驚きます。観察するところ、この政党の中枢と一般の党員や機関紙の読者の間には大きな溝があるように見えますね。
この政党が「国民の理解と支持」を気にするのなら、いえ、この言葉がお気に召さないのなら意識するのならと言い直しましょう。インコさんの助言に耳を傾けなさい。いま国民の圧倒的多数が裁判員制度に反対し、反発しています。女性の90%以上が裁判員になりたくないと言っています。共産党が裁判員制度廃止と言えば、あなた方の党に対する国民の理解と支持は強まります。そう、来年は参院選ですよ。
この政党が、制度実施1年前の2008年8月、時期尚早を理由に実施延期を正式に提言していたことをインコは忘れていません。つまり、あんまり定見がないんだね、あなたたちは。ふらふらしていると、女性だけでなく男性も含めて、国民の大半が裁判員制度に対するこの党の見解をきっかけに共産党への信頼を失っていくだろうね。御身大切にと申し上げておきましょうか。
投稿:2015年5月11日