~裁判員制度はいらないインコは裁判員制度の廃止を求めます~
猪野亨弁護士ウェブ連続講座
「マスコミが伝えない裁判員制度の真相」第7回
一番の暴走はなんといっても死刑です。死刑については、裁判員裁判が暴走しているというのは、ご承知でしょう。高裁でもって死刑判決が破棄され、最高裁でそれが維持されたということは、裁判員裁判が下した死刑判決が否定されたということなんですが。
死刑判決に関わった裁判員の感想がすごいです。
最高裁が死刑判決を下すための基準としてきた永山基準について、「永山基準というものを考慮しませんでした」と堂々と発言しています。それに対するマスコミ批判はありません。
なんという言葉で言っているかというと、「先例重視か、重視でないか」と。先例を重視するかどうか、確かに先例ですよ、それは。判例ですから。しかし、先例という言葉に置き換えちゃうことが一番怖い。
先例じゃないんですよ。基準なんです。この人が裁いたら死刑になり、この人が裁いたら無期懲役になる。バラバラで良いはずがないんですよね、特に、死刑判決に関しては。それを、先例重視ということに置き換えちゃうと、何でもありになっちゃいませんか。あくまでも、先例ではなく、基準だと。基準を無視して良いかどうかという表現にしないで、先例重視か重視でないかという言葉に置き換えてしまう。この危うさというものが、マスコミ報道の中で一番多用されていた訳です。
「先例重視に回帰するのか」みたいなね。
これは、死刑を考える上で、非常にミスリードというか、間違い、間違いというより、意図的なのかなと思います。
死刑判決が最高裁で否定されたとき、各社説が出ました。「市民参加の責任」から始まって、「死刑制度、国民的議論を活発に」、「市民感覚を活かすためには」とか、「公平と慎重さを求めた」とか。マスコミの論調は、2分したんです。死刑判決だから慎重なのは当たり前だという論調と、逆に、市民感覚を反映させる基準というものを示せとか、市民感覚をどうやって反映するんだという論調とに、2分したんです。どちらかというと、「市民感覚を活かすにはどうするんだ」というような論調が多かったように感じます。
でもね、皆さん。市民感覚を活かすってどうなりますか。結論として、「死刑にしろ」と言っているのと同じことなんです。だったら、堂々と、「死刑にしろ」と書けば良いと思うんですけど。
秋田で起きた自分の子と隣の子を殺してしまった女性の事件では、地裁、高裁とも無期懲役だったんですが、ここで『産経新聞』、また、『産経新聞』になりますけれど、社説がすごかった。「極刑を回避するのはおかしい」と。社説で「死刑にしろ」と書くのはすごいな、と思いましたよね。でも、それ自体は、堂々としていますよね。やっぱり(笑)。
それを、市民感覚を活かすためだ、みたいな言葉で誤魔化さないでよ、と思う訳です。このマスコミの報道の「活かせ」ということは、結局、「裁判員の判断を尊重しろ」、「死刑判決を維持しろ」というのと変わらない訳です。それを露骨に書けないから、「市民感覚だ」みたいなことを言うのは、『産経新聞』に比べても卑怯かな、と思います。
この問題は、はっきりしています。クジで当たる裁判員によって、死刑か死刑でないかが決まるなんて明らかにおかしな話なんです。自分が死刑制度反対だという人が集まったら死刑が回避されて、まあ、それ自体は良いとして。死刑だ、死刑だという人が集まっちゃったら死刑になるんですかということですけれども、今後、ますますそうなるでしょう。「普通の国民」は、嫌がって裁判員にならないということは、はっきりしていますから、そうすると、「俺が、俺が」みたいな人ばかりが出てくるのが怖い。「自分が裁くんだ」みたいな人ですよね。
死刑判決についても、マスコミ報道を見ていると、裁判員の意識は、はっきりと変わってきています。最初の頃の裁判員裁判で死刑判決が出されたときには、裁判員の意を汲んででしょうけれども、裁判長が控訴を勧めたということが報じられていました。「控訴することは良いと思う」みたいな。
それが、段々、死刑判決が増えて来始めると、裁判員の感想も変わってくるんですよ。「控訴しないでほしい」とか。どうして、そこまで自信が持てるんだろうと不思議です。
裁判員裁判の死刑判決を高裁が破棄し、最高裁も死刑は重すぎると判断したことに、元裁判員は、「最高裁は、書類審査だけで、私たちのように被害者の声も聞かないで極刑を破棄するなんておかしい。納得できない」と、怒りのコメントを出しています(会場、ため息)。
こういった人たちが関わっているんだということを踏まえなければいけないんですよ。もう、そういった人たちしか集まって来なくなってきた。そういった人たちによって、裁かれるんだということを。
やはり、これは公平な裁判という観点からも、非常に恐ろしいことだと思います。
インコ一言:法務官僚は、「市民が死刑判決を出している時に、法務大臣が死刑の執行を躊躇することは許されない」と言った。国家権力に踊らされ、利用される人たち。裁判員経験者の中には「死刑のことも知らずに死刑判決に関わらされ」などと言っている人もいるが、なに寝言を言っているのか。
投稿:2016年2月2日